東アジア歴史文化研究会

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福島香織『米中の危険なゲームが始まった』(ビジネス社)

2017-06-15 | 中国事情・中国情勢
中国の権力状況を、この一冊が見事に描き出した
明るい未来のシナリオは不在。習近平政権の余命は尽きかけてきた
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あまたある中国関連書物のなかで、群を抜く面白さ、そして卓越した分析力。この本を読まずして現代中国は語れない。それほどに中国の現在の権力状況が手に取るようにわかる内容である。

副題が「赤い帝国 中国崩壊の方程式」とあって、しかしながら中国が大国として生き延びるシナリオのひとつが、トランプという何をしでかすかわからない米国大統領によって、もし、『米中蜜月』がもたらされるとすれば、それこそ日本にとっては恐怖のシナリオになるだろう、という。

表紙のデザインもまた卓抜である。『ゲーム』というタイトルが示唆するように、これを列強のパワーゲームとたとえ、麻雀の卓を囲む四人はトランプ、習近平、プーチン、そして安倍晋三。トランプはにんまり、プーチンは横目、なぜなら習近平が見せつけるカードが『金正恩』牌だからだ。安倍首相が脂汗をかく構図となっていて、この漫画は日本で活躍し、米国へ亡命した辣椒がみごとに描いた。

さて習近平の権力の在りようだが、実態は日本のメディアが分析することとは、まったく異なっている。

既に『朋友』とされた王岐山は、習近平との共闘関係から大きく距離を置いているため「仲良しクラブ」は事実上、空中分解しているという。曾慶紅はいうまでもなく江沢民の懐刀、国家副主席だった。

習近平に裏切られた曾慶紅が、静かに、そして陰湿に、だが着実に党内の根回しに動いている。裏切られた怨念が次の復讐への執念を生むわけだ。

そもそも曾慶紅が党内および長老を根回しをして習近平を総書記に押し上げたのに、いまや恩人を敵視し、曾や江沢民人脈を汚職追放と称して、次々と失脚させたことを忘恩の行為ととらえているわけである。しかし、特別驚くに値しない。それが中国の伝統ではないか。

曾慶紅の復讐戦は任志強事件、郭文貴事件、そして令完成事件に飛び火し、防御策を講じる習近平は江沢民派の金庫番だった肖健華を香港から拉致拘束した。そういえば、胡錦濤も江沢民も、ときどき公衆の面前に姿を現し、政治的パフォーマンスを演じているという動静が伝わってくる。習への牽制と露骨な嫌がらせである。

▲習近平は「ひとりぼっち」。友人も同士も去った

評者(宮崎)は、本書を通読したあと、なぜか連想したのは小林秀雄の石原慎太郎への助言だった。

古い話かもしれないが、な昭和四十三年(1968)、石原が参議院全国区から立候補して政治家になるというと「君の周囲に君のために死ねる人は何人いるかね? 君のために死ぬ人間がたくさんいれば、君は政治家として成功するだろう」と予言的な言葉だった。

三島由紀夫にはともに死ぬ同士があまたいた。しかし石原にはおらず、晩節を汚すことになった。

習近平には、かれのために死ぬ同士が不在である。第十九回大会を無事に乗り切るには、強引な指導力で派閥を糾合する必要があるが、すでに習には、その求心力がない。暴力装置を党内に持たず、したがって習には強い味方がおらず、友達も同士もいない。裸の王様でしかなく、独りぼっちである。王琥寧も栗戦書も劉鶴も、習から距離を置き始めている。

さらには太子党の、強い兄貴分だった劉源が去り、軍部は習の茶坊主たちの異様出世状況を見て、不満が爆発している。これを抑える政治力は、すでに習近平にはない。

すると今後の中国はいったいどうなるのか。

福島さんは、いくつかの蓋然性を提示しているが、なかにはフルシチョフ的失脚。あるいは全党融和を図らざるを得なくなり、李源潮、王洋、胡春華、孫政才ら共青団を大量に政治局常務委員に登用せざるを得なくなると見立てる。あるいは党の核心なる幻像を自ら誤見しているとするなら、戦争に打って出るしか残るシナリオはないと指摘する。

フットワークの強さと中国内の情報網を通じて得たフレッシュな情報とに裏打ちされて福島さんの力作、群書圧倒のパワーを醸し出している。
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