Kinugasa の日々放談(時事・生活)

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祈冥福・またひとつ失う

2016-10-19 22:01:22 | 時事、身辺雑記
ベルギー王立音楽院・正面



訃報が、今日は空を超えてきた。美しく優雅なピアニストとして一世を画したことがある婦人だ。

私が単身赴任先のチューリッヒからブリュッセルに移り、今度は家族で暮らすようになって、日本からやってきた子供たちがピアノのレッスンを続けたいというのに応じてメンターを探していた時、仕事でも世話になったドイツの生化学の教授だった方から紹介を受けた。

王立音楽院のソレートさんという教授とスペインから招へいされていたデル・プイヨ教授との双方から一番弟子とされていたエミリエンヌという先生だった。

そのエミリエンヌ先生がなくなった。年下だった夫のジョゼが、とても85才には見えない美しさで眠りについたと書いてきた。

やさしくて忍耐強い先生に、娘たちはすっかり気に入ってレッスンも進み、おかげで子供たちのコンクールや、演奏会ではいつも良い成績を取ることができた。

職業眼はとても厳しく、二人の娘たちが中学二年になって進学先を決めるとき、上の子は音楽院を受けてみなさい、下の子は、普通高校から大学への進路を進めます、とはっきりおっしゃった。

下の子は耳が良すぎて、姉娘が一度弾いた曲を隣の待合室で覚えてしまって、譜読みをしない、このままだと譜読みができなくなるし、指使いの練習ができなくなる。お姉さんのいないところで新曲をもらったらどうするの、音楽を続けるのにむいていない、とはっきりおっしゃった。


【音楽院の前のレジェンス通り・突き当りにパレ・ド・ジュスティス・最高裁が見える】


今その音楽院で今、上の娘はピアノを教えている。そして今年はその長男(私にとっては孫)がピアノ科に合格した。

この子は昨年、ルーバン・カソリック大学に合格したが、二年生への進級試験に合格したので、単位を取るのに余裕があればほかの大学を受けることができる。

日本では大学入試は、高校の学業結果について大学の先生が試験をするが、ベルギーでは大学の試験は大学の教授が問題を出す。そのため、一年入学はゆるやかだが、二年進学が難しい。二年進学が、日本の入試に相当するように思える。

だから、二年生になって初めてその大学の学生となる。専攻も明らかとなる。二年生になれなかったものは、その大学中退を名乗ることはできない。学歴としては高卒のままとなる。だから一年生はすごく勉強する。

そんな中で、二年生から二つの大学に通える、というのは、親も本人もうれしくて自慢したくなる。

その報告も、エミリエンヌ先生にはもう届けることができない。あなたの生徒とその子とが音楽院にいるのですよ。どうか、みまもってやってください。

私たちのベルギー生活は、子供たちのピアノの先生探しから始まったようなものだった。
音楽院は。いつも私たちの身近にあった。

それが、エミリエンヌ先生の訃報とともに影が薄れそうになる。

だが、レンガや石の建物はこうした小さな短い生徒たちの生涯をいくつも刻みながらこれからもたくさんの俊秀を生み出してゆくことだろう。

(写真はいずれもGoogle map のstreet view から拝借)


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4 コメント

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Unknown (すみとも)
2016-10-20 10:54:36
こんにちは^^ 
 空を越えての 訃報でしたか。
 お嬢様方の 師事なさった 往年のピアニスト 85才で美しいまま逝かれたのですね。  ご主人様からの訃報のお手紙「とても85才には見えない美しさで眠りについた」と・・・・なんて、ステキなご夫婦関係が偲ばれますね。

 その、エミリエンヌ先生に お孫さんのベルギー王立音楽院ご入学を報告出来ないのは 残念ですね。

でも、  お孫さん 素晴らしいですね! おめでとうございます。 好きな道を切り開いて行かれる お孫さん頼もしいですね^^
 夏が終わったら 訃報が多くなり今日も主人は 友人のお葬儀に出ております。 次々と・・・で 寂しいものですね。
二股大学生? (kinugasa01)
2016-10-20 18:02:18
★ すみともさん、

永久に天使だと思っていた方が亡くなったなんて。この先生も、娘も、音楽院フランス語ですが、親子で同じはまずいと、娘は自分の子供には音楽院オランダ語セクションを受験させました。

オランダ語セクションのほうが有名な先生が多く、試験も難かしいので、喜びもひとしおです。

それにしても、ルーバン大の工学部と、音大と、二股履修など、日本では考えられませんね。

すみともさんも、秋になると訃報ですか。

美しく、きれいに、穏やかに亡くなったと人に言われるように、日常、心がけたいと思っています。

kinugasa01
素晴らしい娘さんと、お孫さんですね (くちかずこ)
2016-10-27 21:14:40
でも、次女さんの耳の良さも、くちこ的には捨てがたかったなあ。。。
耳のリズム感も天性に近いですからね。
努力だけでは補えないものがあるかと。
訃報は残念ですが、それでも、良い師に巡り合えたということですよね。
くちこのピアノの先生もでした。
日本の音大の第一期生と聞いています。
明日は、久しぶりにピアノコンサートに行ってきます。
音感と音楽 (kinugasa01)
2016-10-28 00:17:31
★ くちこさん

良い先生におつきになったのですね。音感が良くて音やリズムを正確に覚えてしまうことを、『耳コピ』というそうですが、私はしりませんでした。

音楽の道に進まなかった下の娘の子(孫娘)が、やっぱり絶対音感を持っていて、『通学で駅の改札にsuica をかざすと『ピィッ』となる音は『レ#』 、高田の馬場で発車の時になるのはト長調の鉄腕アトムの曲、などと親子であて合いっこをしているようです。

でも、親子ともども、絶対音感はあればよいけど音楽をやる上では『すぐれた相対音感』を持っていることの方がより重要だ、という結論に達したようです。

亡くなったエミリエンヌは音を聞きあてるよりも、音をどのように創るか、が大切だとお考えだったのでしょう。

くちこさんもすごい先生に師事されたのですね。コンサートのご批評、またお聞かせください。

今日は、頼んでおいたブラームスのIntermezzi, グールドのCDがとどきました。

寒くなりました。お体お大切に。


kinugasa01

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