地酒 玉川ブログ The Tamagawa sake blog

京都府京丹後市久美浜町の日本酒蔵元
木下酒造の日頃

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2011年11月の記事一覧

『飲みごろ』〜ハーパー杜氏はかく語りけり〜

飲みごろの話


ちょうど1年前の今ごろ、「私事ながらびっくりしていることがある。
なんと今年は20回目の酒造り」という記事を書きました。
今回も私事ながら感慨深いことがありまして、もう少しで、私が日本酒を
飲み始めてから25年になります。

昔を振り返ると、日本酒のバラエティの豊かさに感銘を受け、楽しくて
たまらなかった思い出ばかりです。たまに飲みすぎた日の翌朝以外は。
日本酒の奥の深さ、幅広さのおかげで、25年間一瞬たりとも飽きることなく、
次から次へと新しい発見の連続でした。

多種多様な酒のタイプ。地域の風土を反映する味わい。温度が変わると味も
変わる、不思議で心躍る現象。料理を引き立てるとともに、合わせる料理に
よってがらりと雰囲気が変わる特性。時間軸で変化していく熟成酒の魅力。
日本酒のポテンシャルは無限です。

この酒はこの飲み方で旨くなる! この酒をこの料理に合わせると、
どんだけ旨い! この酒、この温度で絶妙! そんな感動的な発見を何度も
何度も経験し、日本酒の楽しみ方はエンドレスに広がっていきました。

平成3年に酒造りが仕事になって以降は、お世話になったそれぞれの蔵で
数多くの商品を味わったことで、蔵人の視点からの発見も加わりました。
この料理にはこいつ、あんなタイプが好きな人にはあいつ、疲れたときには
あれ、といった感じで、自分なりのラインナップで遊んでいます。

試飲会などで訊かれて、答えに困る質問は――「どれが一番お好きですか?」 
なぜなら、気に入りの酒はさまざまな要因で変化するから。
「一番」は、季節や天気、合わせる料理、その日の体調や気分などで決まる、
流動的なものだからです。


ただし、もう少し長い時間のスパンで「今の一番」を決める要因があります。
それは「飲みごろ」です。

ひと口に日本酒といっても、種類も個性もさまざまですから、一番美味しく
飲めるタイミングはものによって違ってきます。酒蔵で働く幸せの一つは、
「今が飲みごろ」の酒がまちがいなくわかること。味のバランスが絶妙に
とれてきた、その瞬間に飲む酒は堪らなく旨い。


では、ここでそろそろ宣伝に入らせていただきます。

玉川の商品は種類が豊富で、私はそれぞれに好きです。
が、今、《私的に》旨い、旨い飲みごろゾーンに入っている酒をひとつ、
ご紹介します。

その商品は、「雄町」という酒米で造った純米吟譲です。

雄町は古い歴史をもつ品種で、昔から私にとって、飲むのも造るのも
大好きな酒米です。現在出荷している雄町の純米吟譲は21BY(醸造年度)
に仕込んだもので、2年間の熟成を経ています。時間に磨かれてカドがとれ、
優しい旨味がじわじわと増してきました。

この酒の飲みごろはしばらく続くと思いますが、今の落ち着いた味わいは
食事をしながら飲むのに理想的です。

搾ってから2年近く過ぎて迎える「旬」とは気の長い話ですが、「飲みごろ」の
日本酒は人を最高に幸せにしてくれるもの。
時間をかけるだけの価値は十分にあります。