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「古文書に親しむ(経験者)」講座、第二回課題 その2

(庭にもう一本あったバラ)

先日、庭の唯一のバラとしてピンクのバラを取り上げたが、もう一本赤いバラが生垣に隠れて咲いていた。これは我が庭で三十年絶えずに、ひっそりと花を咲かせ続けている。

午前中、掛川の孫3人来る。昼はうどんを茹で、冷やしうどんにして食べる。

昨日の続き、課題の二通目の文書(後半)である。

右品々御貸附金、私義連々身上不如意に相成り、
追々拝借仕り罷り在り候処、去る巳年、組久次郎、
欠落いたし、行衛相知れず候に付、村役人ども一同、跡取り調べ
候処、久次郎儀、多分の御貸附、拝借仕り罷り在り、驚き入り
候えども、申上ぐべき様も御座なく候間、品々相談の上、取り計い候
処、全て致し方これ無き分、金百弐拾両余、私拝借引き
請け、これまで元金弐割済の分、並び利金とも滞りなく上納
仕り候。然る処、私義、近年病人多く、その外、よんどころなき
臨時の物入りなどにて、甚だ困窮仕り、取り続き覚束なく、難儀
至極に存じ奉り候所に付、誠に以って恐れ入り候御儀には御座候えども、
書面御貸附拝借残金、弐百拾三両永弐拾七文四分
壱厘八毛、五ヶ年の積りにては、何分上納仕るべき
手段御座なく、誠に難渋仕り候間、格別の御憐愍
を以って、右残金弐百拾三両の儀、当申年より十ヶ年に
御割合い、御上納仰せ付けられ下し置かれ候わば、この上なく有難き
仕合せ存じ奉り候。左候えば、年々元利とも少しも滞りなく御上納
仕り、私身上取続きの儀も出来仕り候間、何分御慈悲
の程、偏えに願い奉り候、以上
 文化九年         駿州志太郡道悦嶋村
   申七月              藤蔵
 島田御役所

※ 連々(れんれん)- しだいしだいに。
※ 身上(しんしょう)- 家の経済状態。暮らし向き。
※ 欠落(かけおち)- 領民が無断で住所から姿を消して行方不明の状態になること。


三つ目の課題は甲州の清水港出役名主による御用留め控え帳である。これは冊子文書で、出役名主を仰せ付けられてから、発生した様々な文書を写し取り、経過の記録を加えたもので、この講座では何回かに分けて読んで行きたいと思っている。今回はその最初の部分である。

  元治二年
御用留め控え帳
  丑正月吉日 駿州清水港出役名主
         下田原村
          長沢市兵衛

   差上げ申す一札の事
私ども儀、当子、江戸御廻米籾、御積み立てに付、
駿州三場所出役名主仰せ付けられ、万端正路
取り計らい、郡中為筋、実意心掛け、かつ積立方
捗取(はかど)り候様、入念に相勤むべき旨、仰せ渡され、承知
畏まり奉り候。依って御証文差上げ申す処。件(くだん)の如し。
  元治元(1865)子十一月
     清水湊
              下田原村 名主 市兵衛
     岩渕兼蒲原
              楠甫村  名主    久左衛門
              羽鹿島村 長(百)姓 惣兵衛
              角打村  長(百)姓 平兵衛
     軍方  
              清水 下曽根村 三左衛門
              岩渕 在家塚村 彦左衛門
              蒲原 川上村  常左衛門
※ 駿州三場所(駿州三場所)- 甲州の御廻米の中継地。岩渕、蒲原、清水の三場所。
※ 出役名主(しゅつえきなぬし)- 幕府の年貢米を江戸・大坂に送るための役人。
※ 正路(しょうろ)- 正道。正直。
※ 為筋(ためすじ)- 利益になる事柄。


    請け取り奉る金子の事
 一 金七両也
右は当子御物成り、江戸御廻米御用に付、駿州
清水湊出役名主仰せ付けられ候に付、日掛り諸入用の内、
御前借として、書面の金子、御渡しなられ、請け取り奉り
候処、よって件の如し。
                 下田原村
 元治二(1866)丑正月十三日    名主 市兵衛
   市川御役所
前書の通り、相違御座なく候に付、奥印仕り候、以上。
                   郡中惣代
                    落居村 文蔵

※ 物成(ものなり)- 江戸時代の田畑の年貢。ちなみに「小物成」は雑税。
※ 奥印(おくいん)- 江戸時代、文書や帳簿の奥書に捺した印。
※ 郡中惣代(ぐんちゅうそうだい)- 江戸時代の天領における村役人の代表。
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コメント
 
 
 
資料についておたずね。 (小二田誠二)
2020-08-24 10:55:54
突然コメントで失礼します。
実は、この前後で扱われている資料と同じような甲州廻米関連の文書を入手し、私的な勉強会で読もうと思って検索して行き当たりました。

この文書はどこかで公開されていますか?
あるいは、ご自身の御所蔵でしょうか。

リンクなどで引用させて頂きたくもあるのですが、孫引きも気がひけますし、可能なら全体を拝見したくもあり、ぶしつけながらコメント致しました。

御教示頂けましたら幸いです。
 
 
 
Unknown (きのさん)
2020-08-24 23:35:07
この古文書は「元治二年丑正月吉日、御用留扣帳、駿州清水港出役名主、下田原村 市兵衛」という表題のもので、知人の古本屋さんからコピーを頂いたものです。どこかに公開されているかどうかは分りません。

B5で88ページに及ぶ古文書で、甲州の御廻米が富士川を下り、岩淵で陸揚げ、蒲原で小舟に乗せ、清水湊で船積みされて、江戸蔵前まで運ばれる様子が、御用留をたどることで分かり、たいへん興味深い古文書です。

「古文書に親しむ(経験者)」コースでは、前半は読み終え、今年、後半、清水湊から江戸までを読み終える予定にしております。

目的の詳細がうかがえれば、コピーのコピーでよければ、提供できるかと思います。
 
 
 
御礼 (小二田誠二)
2020-09-22 23:14:50
ご回答ありがとうございます。
しばらく気にしていたのですが、ついチェックを怠っていました。
申し訳ありません。


直接メールで連絡を取り合うことが出来るとありがたいのですが、ここに書くのもためらわれますね。
方法を考えます。

 
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