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「壺石文」 上 21 (旧)七月十日(つづき)

(庭のニオイバンマツリ)

紫の花は後に色を白に変える。だから紫と白の花が混在することになる。

午後、静岡の駿河古文書会に出席する。先週に続き、曹洞宗のお寺のお触れの控えである。用語が難しくて、昨日、息子に頼んで仏教語大辞典をネットで購入した。明日には届くと思う。

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「壺石文 上」の解読を続ける。

されど、こうゆくりなく頓にいかでを。あらかじめ、その用意し侍らんを、いくか(幾日)ばかりか、与件日をとりてよと、事良げに答(いら)えて、帰してけり。
※ ゆくりなく - 思いがけなく。突然に。
※ 頓に(とみに)- 急に。にわかに。
※ いかで - どうして。どういうわけで。どのようにして。
※ いくか(幾日)- いくにち。
※ 与件(よけん)- 所与。他から与えられること。


さて、家あるじも帰りてけれど、真心ならねど、かの密か(みそか)事を、在りし様に語るべう(べく)もあらず。さりとて、ようせずば、かの性(さが)なもの、また来て苛(さいな)みてん。とあればかゝりおうさぎるさにて、あな言い知らず宿世、拙(つたな)き身にて侍るかな、と心一つに歎き悲しみて、来るつあした(朝、明日)に夫(せ)に言いけらし。
※ ようせずば - 悪くすると。
※ かゝり - このようになり。(「かくあり」の意)
※ おうさきるさ(逢うさ来るさ)- 一方がよければ他方が悪いこと。うまくかみあわない様子。
※ あな言い知らず - ああ、何と言っていいか分からない。
※ 古今集に「そゑにとて とすればかかり かくすれば あな言ひ知らず あふさきるさに」
※ 宿世(すくせ)- 前世からの 因縁。宿縁。宿命。


今日は山畑に諸共(もろとも)に物して営みてん。君はまず、この子負いて行きて、待たせ給いてよ。我は昼の乾飯(かれいい)など、取り賄い持て、後よりものし侍らんを、など言い遣りぬ。

男、言いしがごと、かの山畑に行きて、待てども/\来ざりければ、いと怪しと思いて、あからさまに家に立ち帰りて見れど、人音もせざりければ、こゝかしこの隅々(くまぐま)呼びつゝ、垣間見れば、別納(べちのう)の方に、血にまみれて死に居たり。驚きてよく見れば、短き菜刀に巻き添えたる一片の文ありけり。
※ あからさま - 急に。にわかに。
※ 垣間見る(かいまみる)- 物影からこっそりと覗き見る。
※ 別納(べちのう)- 母屋 (おもや) から離れて建つ建物。
※ 菜刀(ながたな)- 菜切り包丁。


心にもあらで、物せし見咎(みとが)ごとのありし様を、つぶ/\と書(か)い置きてけり。いと/\儚(はかな)かりける事になん、と堅住大徳、泪(なみだ)ぐみ、鼻声にて語られき。


読書:「砂の街路図」佐々木譲 著
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