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「壺石文」 中 19 (旧)八月廿三日(つづき)

(散歩道のハナショウブ)

梅雨の晴れ間にしては雨が降らない。日差しはあるが、外へでると風がひんやりしている。

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「壺石文 中」の解読を続ける。

三時ばかりが程、闇路(やみじ)の憂き世に沈みきて、今ぞ明らけく晴れたる空の、光に当たりて、岩陰の泉に手洗い口濯(そそ)ぎつゝ、見渡す四方の景色こよなし。中鋪の役所は仮に設けて、この山の頂きに鎮まりいます神の御社の、御厨だちたり。こゝに立ち寄りて湯浴みし、物喰いなどすれば、心緩(ゆる)びて手足(たゆ)
※ 三時(みとき)- 約6時間。
※ 明らけく(あけらけく)- あかるく澄んでいる。清らかだ。曇りがない。
※ 御厨(みくりや)- 神社の境内にあって、神饌を調理する建物。
※ だつ - そのような様子を帯びる。
※ 弛し(たゆし)- 疲れて力がない。だるい。


仮寝して、とばかり微睡(まどろ)みぬるに、驚かされて、案内(あない)の男(おのこ)に唆(そそのか)されて、峯を下りて、とある家に立ち寄れば、白銀(しろがね)採るか黒き石を唐臼にて搗(つ)くめり。
※ とばかり - ちょっとの間。しばらくの間。
※ 驚く(れい)- 目覚める。
※ か黒し(かぐろし)- 黒い。黒々としている。
※ 唐臼(からうす)- 臼を地面に埋め、杵を付けた長い柄の一端を足で踏んで、杵を上下させてつく仕掛けのもの。


水に揺り板という物して選り調うるもあり。浮きひじ立つものを桶に盛り置きて、瓢もて筧に注ぎ任すもありて、様々(さまざま)見も習わぬ珍らかなる、様々(ようよう)の見物なりけり。
※ 揺り板(ゆりいた)- 採金の道具。板状の道具で、揺らして選別する。
※ ひず(秀ず)- 他よりまさる。ひいでる。
※ 見も習わぬ(みもならわぬ)- 見たこともない。


夕日の降ちに競いて、下なる吹屋に入りてみれば、広き家の中なる堅底に火処(ほどころ)数多設けたり。ふいごと云う物を(とよ)ませて、こゝかしこにて吹き居たり。案内(あない)のまゝに近く寄りて見れば、黒き砂、時の間に湧きかえりて銀となる。いと(くす)き技(わざ)なりけり。黄昏(たそがれ)に水抜きに立ち帰りて宿る。
※ 降ち(くだち)- 日が傾くこと。また、そのころ。
※ 吹屋(ふきや)- 金属を精錬・鋳造する職業や職人、およびその細工場。
※ 響ます(とよます)- 鳴り響かせる。
※ 時の間(ときのま)- ほんの少しのあいだ。つかのま。
※ 奇し(くすし)- 神秘的だ。不思議だ。霊妙な力がある。
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