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「壺石文」 下 6 (旧)十二月廿七日(つづき)

(庭のサルスベリの白花)

サルスベリは白花の方が珍しいらしい。

今朝、次兄が帰った。高齢で、長距離を車で往復してきたことに、感心する。

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「壺石文 下」の解読を続ける。

夜、湯浴みんとて、相知れりける海士の苫屋に罷(まか)ねりけるに、この家、莨(たばこ)売る家なりければ、あらば物せんと乞いけるを、如何にか有けんやなど、家刀自しぶしぶにぞ、答(いら)えける。

湯浴みして、すなわち帰りなんとするに、若人(わこうど)四人(よたり)団居(まどい)して酒呑む。面付き容体、こゝの島人とは見えず。年の暮るゝをも知らぬ顔にて、高やかに笑いのゝしりつゝ、おのがじし(それぞれに)心をやりて語らう。声音(こわね)を聞けば、松前わたりの舟長どもなめり。髭がちにあぐみ(あぐら)居て、大なる金碗(かなまり)に注ぎ/\て、直呑みにぞ、飲むなる。
※ 面付き容体(つらつきようたい)- 顔つきと体つき。
※ 舟長(ふなおさ)- 船頭。
※ 直呑み(ひたのみ)- ひたすら呑むこと。


刻み莨を沢山(さわやま)に取(と)う出て、これ、この四人より翁に進(まい)らすにこそと言うなれ。ゆくりかに嬉しきものから、心知らねば否む。強いてと言えば、故あらんかしと思いなりて、頂きに捧げて、山室に帰りて、埋火(うずみび)に添い臥して、煙(けぶり)吹きけるに、味わいこよのう覚ゆ。
※ ゆくりかに - 思いがけなく。

この日頃は米も無く銭も無かりければ、この烟草も絶え果てゝ、二日と言うになりぬれば、いみじう覚えて、
※ いみじう - すごく。大変。立派な。

   立て侘びて 世を恨みてし 塩釜の
        けぶりくゆらす 今日の嬉しさ

※ 立て侘びる(たてわびる)- (「立て」は動詞に付いて、その意味を強める)落ちぶれてみすぼらしいさまになる。

あるじの優婆塞、紙帳と云うものを調じて、貸せたれば、こを打ち被きて、小さき箱に埋火入れて、夜毎に添い寝するに、いと暖かけく覚えて、二無き調度と、秘め置きて持たりけるを、朝(あした)に起きて床の辺に畳み置きたるを、童べども、ゆくりなく入り来て、何事ならん、かたみに腹立ちて、争(すま)うほどに、踏みにじり引き裂きけるを見て、あるじいみじう腹立ちて、追い出しければ、
※ 紙帳(しちょう)- 紙をはり合わせて作った蚊帳 (かや) 。防寒具にも用いた。
※ 被く(かずく)- かぶる。
※ 二無き(になき)- 二つとない。この上ない。
※ ゆくりなく - 思いがけなく。突然に。
※ かたみに(互に)- 互いに。
※ 腹立つ(はらだつ)- けんかする。


   添い臥(ぶ)しの 妻としなれば 単衣(ひとえ)なる
        紙の衾
(ふすま)も 惜しとこそ思え
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