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「壺石文」 下 33 (旧)四月八日、九日、十日

(玄関の網戸の前で、開くのを待つムサシ、15歳)

午後、掛川の古文書講座に出席する。夕方、名古屋のかなくんが来る。小学三年生の夏休みである。

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「壺石文 下」の解読を続ける。

八日、この村は高き嶽(茶臼岳)の麓なり。この嶽の頂きに高湯山権現という神を斎(いつき)祀れりとぞ云う。今日は山開きとて、競い詣づる人、いと/\多かり。皆、白き荒妙の行衣というものを着て、二、三十人、或るは、五、六十人ずつ群れ/\て、朝霧深き山路を、よう/\に登り/\て、やゝ夕づく頃、すがい/\(次々に)下り来るさま、いと乱がわし
※ 荒妙(あらたえ)- 麻織物のこと。
※ 乱がわし(ろうがわし)- 騒がしい。騒々しい。


九日、かの行衣姿の人々も、よう/\に上がれ罷りぬれば、夕かけては人気(ひとげ)も静まりて、のどやかに湯浴みす。こゝかしこを佇み見巡りて、
※ 上がれ罷る(あがれまかる)- 終って帰る。
※ 佇む(ただずむ)- そのあたりをうろつく。


   岩ヶ根を たぎち流れて 時となく
        湯の花かおる 那須の山里

※ たぎつ(滾つ)- 水が激しく流れる。

流れ来る谷川の源に登りて見れば、やゝ広き河原なり。山の岸根、こゝかしこに煙(けぶり)の立ち昇るは、温泉なめり。奥まりて、少し高き岨(そば)に、荒垣結い渡したるは、殺生石なりとぞ。皆、鈍色だてる岩の、かけ散りたる、幾つも幾つもあり。まことのは、今は砂に埋もれて見えずとぞ、里人言うなる。
※ 殺生石(せっしょうせき)- 那須湯本温泉付近にある溶岩。付近一帯には亜硫酸ガスなどの有毒な火山ガスが噴出しており、鳥獣が近づけばその命を失うという。
※ 鈍色(にびいろ)- 濃い灰色のこと。


十日夜、玉林堂というは主(あるじ)。群花というは白川人。白河人なれど、つらの皮は黒し。玉の林と言えども、花形の疵がちにて、おこめきたる面もちなり。この二人の男(おのこ)、軍談という事を好みて物すと聞きければ、乞いて語らす。つれづれ慰む心地して、いと興あり。赤穂記という物を語りけるを聞けるついでに、大石の良雄を詠める。
※ おこめく(痴めく)- 愚かなようすをする。ばかげている。ふざける。

   空おぼれ 遊び戯(たわ)けて 山科の
        聡
(さと)き心を 隠す賢さ
※ 空おぼれ(そらおぼれ)- とぼけたさまをよそおうこと。そらとぼけ。

山崎合戦を聞きけるに、明智の光秀を、

   小栗栖の 小篠(おざさ)が露と 消えし身の
        仇名のみこそ 世に残りけれ

※ 小栗栖(おぐるす)- 京都市伏見区の地名。明智光秀が竹槍で刺殺された所。
※ 仇名(あだな)- 根拠のない、悪いうわさ。ぬれぎぬ。
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