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「壺石文」 下 2 (旧)十二月四日、五日、六日、七日、八日、九日~

(散歩道のヤナギハナガサ)

「壺石文 下」の解読を続ける。

十二月の四日、十八成(ククナリ)の山寺、陽山寺に詣でて、主の和尚と共に物語りす。(聞老志に云う、陽山寺、十八成浜に在り。号大金山と号す)

夜、雪降りて、寒さ耐え難かりければ、折々寝覚めして、法師ばらと物語りしつゝ、(くりや)に、炉の片方(かたえ)あぐみ居て、時移るまで煙吹く。辛うじて鳥(鶏)鳴きて、よう/\に白みゆく。
※ 厨(くりや)- 調理場。料理をする場所。
※ あぐみ(足組み)- 足を組んで座ること。あぐら。


   きぬぎぬ(後朝)の かかりし昔 引き替えて
        嬉しくもあるか 老いの東雲
(しののめ)

小渕の浦に月頃旅居しけるに、かのわたりには庭つ鳥というもの飼わざりければ、今こゝにて声聞くは珍かなる心地す。
※ 月頃(つきごろ)- この数か月間。数か月来。
※ 庭つ鳥(にわつとり)- にわとり。


五日、ひねもす雪降る。留められて止まり居て、絵描い遊(すさ)ぶに、筆の束、氷りて耐え難し。よう/\暮れゆくに、

   今行くか 夜は越えじと 古寺の
        籬
(まがき)の山の 雪の夕ぐれ

六日、降りに降る。

七日、夕つ方、いさゝか晴れぬれば、こゝを立ちて、新山と云う所の刹(寺)を、某が家に罷りて、宿る。こは教え子、義孝が親の家にて、義孝もこゝに物したるほどなればなりけり。
※ 新山(にいやま)- 現、石巻市新山浜。十八成から牡鹿半島の峠を越えた東側の浜。

八日、今日もなお降る。夕日の降ちにやゝ晴れぬれば、後ろの山端の雪を踏み分けて登り/\て見下ろせば、山懐の海づらに、むね/\しからぬ小家がちにて、二十(はたち)ばかりよろぼい立てり。金華山は東にあたりて、波の上近かりといえど、こゝよりは見えず。
※ むね/\し(宗宗し)- しっかりしている。堂々としている。

九日、風激しく、寒さこよなかりけれど、晴れぬれば、義孝と共にここを発ちて、元越し岨路を伝い、峰に登り、谷に下り、山より山に山巡りして、陽山寺に至りて憩う。道のほど十里ばかりならんかし。雪ぐつにかんじきと云うものを履きて、竹杖を力草にて、たどり越しかど、ともすれば、倒れぬべう(べく)覚えて危うかりき。道すがら、松の雪折れ、山彦に響きて面白かりき。夕つ方、小渕に帰るに、山風いと激しくて、ほと/\吹きも倒されぬべく覚ゆ。
※ 力草(ちからぐさ)-(「力種」とも書く)頼りになるもの。力と頼むもの。
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