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江戸繁昌記初篇 50 富沢坊の旧着市 2

(掛川城と逆川/昨日撮影)

「江戸繁昌記初篇」の解読を続ける。

三升格子比翼は知らず。何れの妹が遺愛の物。梅幸茶色の鴛鴦被は(煬帝製、鴛鴦被)、旧(もと)未亡人某の寢衣(ねまき)に係る。楊花(女大夫)錦綺褥宮人花様裳夏姫衵服花の余香を帯び、范叔弊衣霜葉(くだ)かんと欲す。
※ 三升格子(みますごうし)- 太い三筋縞と細い三筋縞とを交互に繰り返した格子模様。文化・文政期に流行した歌舞伎模様の一つ。
※ 比翼(ひよく)- 和服の襲物(かさねもの)の仕立て方の一種。表に見える部分(袖口、襟、裾回し)だけを重ね着に見えるように、別布で上着につけて仕立てる方法。人形仕立ともいう。
※ 裳(も)- 古代、腰から下にまとった衣服の総称。
※ 阿(あ)- 人を呼ぶのに親しみを表して冠する語。
※ 遺愛(いあい)- 死んだ人が、生前に愛用していたもの。
※ 梅幸茶(ばいこうちゃ)- 茶みを含んだ淡い萌黄色。歌舞伎の大立者であった初代尾上菊五郎(梅幸)の好みの色として命名された色名。
※ 鴛鴦被(えんおうひ)- 一対になった被(かけぶとん)。
※ 錦綺(きんき)- にしきとあやぎぬ。あやにしき。
※ 褥(じょく)- 柔らかい敷物。しとね。ふとん。
※ 宮人(きゅうじん)- 宮中に仕える人。多くは女官をさす。
※ 花様裳(はなようも)-「すそもよう」とロゴあり。
※ 夏姫(かき)- 中国春秋時代、西施と並び称される美女。淫乱な悪女といわれる。
※ 衵服(じつふく)- 女性の着物の下に着る薄い着物・襦袢のようなもの。
※ 范叔(はんしゅく)- 中国春秋時代の晋の政治家。
※ 敝衣(へいい)- 破れてぼろぼろになった衣服。
※ 霜葉(そうよう)- 霜で紅や黄に変色した葉。


(ずきん)幅の差々(やや)大なるは、或は應(まさ)に鎌倉府公遺服なる。(頼朝、短身大頭と聞く)外套(はおり)、殊に長きは、必ずこれ塩冶判官が旧着。(薬師寺氏嘲り、判官曰う、当世風長半掛)一點墨を抹する子張、数痕土に涴(けがれ)伍長の袴、緋褌紅を脱し、加るに湘妃が涙痕を以って、黒衣已に玄々、更に先人の手沢を存す。松魚上る時袷衣潮を捲き、千人会(とみくじ)の日衣帯塵の如し。
※ 塩冶判官(えんやはんがん)-「仮名手本忠臣蔵」で、浅野内匠頭の役柄。
※ 抹する(まっする)- こすりつける 。また、塗りつける。
※ 子張(しちょう)-孔子の弟子の一人。「過」と評価された。(過ぎたるはなお及ばざるがごとし)
※ 紳(しん)- 昔、中国で、高位高官の人が礼装に用いた幅の広い帯。
※ 伍長(ごちょう)- 五人を一組みとしたものの長。下士官の最下位。
※ 緋褌(ひこん)- あかふんどし。
※ 湘妃(しょうき)- 湘江の川の神は「湘妃」「湘君」といい、娥皇と女英の二人の女神からなる。娥皇と女英は舜帝の妃であったが、舜が没すると悲しんで川に身を投じ、以後川の神となった。斑竹の表面にある斑紋は、娥皇と女英の涙が落ちた跡が残って斑になったという言い伝えがあり、湘江竹、湘竹、涙竹などの別名がある。
※ 玄々(げんげん)- 奥深いさま。
※ 手沢(しゅたく)- 手あかで出たつや。
※ 松魚(しょうぎょ)- 鰹(かつお)の別名。
※ 袷衣(あわせぎぬ)- 袷(あわせ)のこと。
※ 衣帯(いたい)- 衣と帯。
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