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「四国八十八ヶ所感情巡礼」を読む

(車谷長吉著「四国八十八ヶ所感情巡礼」)

直木賞作家、車谷長吉著の「四国八十八ヶ所感情巡礼」を読んだ。氏は、2008年2月に「うちの嫁はん」と四国巡礼に出た。年齢は自分より一つ上で、直木賞作家が書いたらお遍路はどうなるのか、興味津々で読み進めた。

氏は私小説作家で、自分が書くことで周りの知り合いたちに多大なる迷惑を与える、いわば私小説作家の宿命のようなものを犯してきた。作品を書くことで多くの人をはからずも傷つけてきた。その罪滅ぼし、懺悔の意味で四国巡礼に出たという。一日に20km足らずの歩きで、75日掛かって結願まで至った。

読み進むうちに、至る所で野糞をしながら歩く、前編ふんぷんたる臭いの溢れた、何とも珍妙な巡礼記であった。実は氏は強迫神経症で薬を飲んでいて、この薬は便秘になるので、合わせて下剤を飲んでいるからコントロールできないのだという。歩き始めた初っ端で、間に合わなくて下着を汚してしまったから、それ以後、ところ構わずパンツを下すことになってしまった。

山中だけであるなら、自分も山行時に「雉打ち」に行くことはない訳ではない。自然の中で用を足すのは何とも気分がよい。しかしさすがにお遍路では一度も「雉打ち」に行くことはなかった。氏の場合は、山道だけではなくて、田畑の中や町の中でも出るものは仕方がないと落し物をしていく。野良犬よりも悪い最低のマナーである。しかも、それを克明に記録しているから、だんだん本から臭い立つようで、腹が立ってきた。腹立ちまぎれにその全回数を数えてみた。75日でその回数63回であった。もちろんお寺のトイレなど正規の場所での排便は除いてある。

自分の年齢にも近いこともあって、昭和45年の三島由紀夫の割腹自殺など、青年期に大きなインパクトを受けている(氏は後に三島由紀夫賞という文学賞を受けている)あたりなど、自分に共通するものもあって興味を持ったが、何しろ63回に圧倒されてしまった。

作家のことだからどこまでが事実で、どこからが創作なのかわからないけれども、名の知れた作家とはいえ、一流の出版社がよく出版したと思われる作品であった。自分は図書館で借りたから文句は無いが、1200円出して「うんこをした」と63回出てくる作品を読ませられる読者こそ、大いに迷惑だと思う。

作家は独りよがりで、自分は柵に上げて、時間に縛られて先を急ぐ歩き遍路は極楽にいけないとか、車を利用して楽をして回るお遍路は地獄へ落ちるとか、金儲け主義の坊主も地獄に落ちるなどと、人を批判する舌鋒は鋭い。特に徳島県はゴミだらけだと、知事以下行政を槍玉に挙げ、世界遺産にしたいなどとはおこがましいとも言ってのける。(ちなみに自分は徳島県に特にゴミが多いとは感じなかった)それなら、63回の落し物はいったいどうなのだと反論したくなるが、もし聞いたならば、自分のものは肥料になって循環するから問題ないと答えが返ってくるに違いない。

珍しく他の人には読むことを進められない本である。

中で、20番鶴林寺の納経所に美形の女性がいたことなど、自分と同じ審美眼もあるようだが。(まんだら28P)
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