引頭佐知(いんどうさち)の料理ブログ

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吸物が、命を洗ってくれました。

2016年08月28日 | 出汁教室エピソード

<だしを取って料理をする教室NO.3>

飛び入り小学生を見送ったあとのエピソードです。

 

出張教室では毎回、

だしを取る前に昆布と削りかつおを

見たり触ったり、味見をしていただきます。

・昆布は親指大に切ったもの。

・削りかつおは、山盛り容器に入れて。

その側には、今日「一番だし」をとる、

はさみを入れていない天然の昆布

(当時は羅臼昆布)と

袋入りの削りかつおも

並べておきます。

.

午後の部にご参加いただいたのは、

60代の約10人の女性のみなさん。

ご挨拶のあと、

1人の女性が、調理台のだし素材を指さし、

「あら~~~?本物の昆布とかつお!!!」。

「そうです」

 

「始まる前に申し訳ありません。

今日は「だしを取る教室」、というので参加しましたけど、

本物の、この昆布なんかで取るんですか?

私は、ずっとここの教室に通っていますが、

今までの先生は、。おだしとスープは、

いつもインスタントです」

「天然の昆布と削りかつおで、だし取りします」

「めんつゆはつかいますか?」

「つかいません(笑)」

 

「わっ、すみません!!

主人、携帯で呼んでいいでしょうか?

ずっと、だしを取るのを見たがってまして、

今日、もしかして、だしを本当に取るんだったら

自分も行きたいって、

さっき言ってたもんですから」

「どうぞ、どうぞ(笑)」

 

建物の外から話し声が聴こえます。

「おとうさん、だし取りしますって!

昆布とかつおよ。

どうぞって!

来るでしょ?

来るよね! 」

それを聞いた方々、

それじゃ、うちも、うちも、と携帯をかけ、

結局、3人のご主人が飛び入り。

(お昼の小学生といい、

なんだか飛び入りの多い日です)

.

前述のご主人が自転車で息急き切って

来られました。

60代後半とお見受けしました。

 「だしの取り方、こんな家の近くで見れるなんて。

思いもしませんでした。夢のようです」

「そんなにご覧になりたかったんですか」

「ええ、ま、あのぅ、

・・・・・・・・・・・・・・

みなさんの前でこんなことお話するのは、

女房には酷ですけど、話させてください。

また、このことを話しても女房は怒ったり

する人じゃないので、大丈夫です。

わたしは神戸で生まれまして、

子供のころ、

母は毎日、昆布とかつおのだしを取って

料理してくれてました。

歳でしょうか、歳なんでしょうね。

最近、その母の味を恋しく思うようになりました。

ああ、いまの季節はあれがおいしかった、

これがおいしかったって。

とくに懐かしいのが、

子供のころ飲んだ、

すまし汁や味噌汁や煮物なんです。

これ、だしが必要ですよね。

もう、母はいませんし、

味の記憶をたどって、

自分でだしを取って母の味を再現してみたいと思っても、

まずは、だしの取り方がわかりません。

身近にある料理の本を見ても詳しく書いたのもないし、

第一、字で説明されても、

男の私には加減がわからないですよ。

 

テレビでは1回見ました。

でもテレビは、私のように、料理のことが

全くわからない者の都合なんか考えてません。

手慣れたやり方で、一方的にしゃべって、

さっさと進めるので、なんにもわからなくて・・・・・」。

で、

なぜこんなに、だしに固執するかというと、

わたしは長い間、妻と子供達を仙台に残したまま

単身赴任で全国を廻ってました。

会社の寮の食事や、外食の味気ない食事にずっと

我慢をしてきたんです。

わたしの楽しみは、ただひとつ。

退社したら落ち着いて妻の家庭料理を楽しみたい、

というものでした。

しかし、いざ退職し、妻の食事に箸をつけたとき、

違和感を感じました。

あのおいしかった新婚時代の味ではなかったんです。

私の舌がおかしいのか、疑ったりもしましたが

数日経って、思い切って妻に尋ねました。

 

「汁物も、煮物もなにもかも同じへんな味が

するけど、どうしてなんだ?」

そうしたら

「お父さんがいない間、便利なものができてね、

『めんつゆ』ってものでなんでもつくれるの」

その『めんつゆ』をなめてみて驚きました。

わたしの舌は受け付けませんでした。

「こんなもの使わないで、昔のように

だしでごはんをつくって欲しい、と言いましたら

『有名なお料理の先生が、NHKの番組で

これがおいしいって言ってるから、おいしいの』

と、譲りません。

残り少ない人生です。

年をとってなにが楽しみって、食事でしょう?

ならば、わたしがだしをとろう、

料理もつくってみようか、

となった次第です。

 

みなさんは、そのご主人の話に耳を傾け、

同感とばかりに、うんうん、と、うなずいていました。

 

こんな風に話し合える、フリーな形の教室こそ、

わたしが好きなパターン。

「わかりました。

今日は、だしとお吸物、おからの煮物に集中しましょう」

 

いつものように、昆布と削りかつおを味見していただきます。

 

「この昆布は羅臼昆布です。

昆布はどんな味でしたか?」

「ちょっと、しょっぱいけど甘くておいしいです」

「羅臼は、コクがあって旨味が強いんです。

削りかつおは、いかがですか?」

(昆布は羅臼漁業組合から取り寄せた羅臼昆布。

削りかつおは築地の鰹節店の、花かつお)

「かつおは、お歳暮でいただく、

小さなパック入りとは味が全然ちがいます」

「風味というか、香りがちがうはずです」

 

「では、その昆布と削りかつおでだしを取ります。

10分間で取ります。

10分間で沸騰するように火を調節して取ります。

他のことなんにもしないでお鍋の中を見ててください。

10分もお鍋の中見てるっていうの、

退屈かもしれませんけど、

こんな経験は、きっと一度しかないと思いますので、

見ててください。

こんなに堅い乾物の昆布が、

たった10分の間に色も形も変化して、

「だし」になっていくの、

見るの面白いですから」

 

分刻みで鍋の中で生き物のように、

つややかに大きく戻っていく昆布。

みなさん、小学生の顔で観察しています。

 

ボウルから、もわもわ湯気の立った、

取り立ての一番だし。

昆布と削りかつおの旨みの香りがただよいます。

「これは旨味の香りですよ。

旨みの成分ですが、

昆布はグルタミン酸、

削りかつおはイノシン酸といいます。

旨み成分は、もっといろいろ含まれてますが、

グルタミン酸、イノシン酸

これは覚えておきましょう。

この2つの旨みは、1足す1ではなく、

この2つの旨みがあわさると「相乗効果」で

おいしさが7~8倍にもなるのです。

また、

水につける(水だし)のとき、

火にかけたとき、

温度によっても、旨みの出方がちがいます。

あとで、飲んでみましょうね」。

 

ボウルに顔を寄せ、

手で香りをかき寄せながら

みなさん、目をつむり、鼻くんくん。

「いい香り~~!」

たとえ、だしとの出会いが初めてであっても、

喜んでくださいます。

 

さて、その取り立てのだしを試飲します。

①何も加えず、お椀に1/3位飲んでいただきます。

昆布と削りかつおの持つ、滋味な味と香り、

かすかな自然の塩分を確認します。

.

②次は、塩と薄口しょうゆを入れて試飲。

だしの味の輪郭がくっきりしてきます。

「なにも入れなくても、これだけでも、充分」

そんな感動が味わえます。

 

③最後に、とろろ昆布と三つ葉、

吸い口に柚子のお吸物に仕立てます。

家庭的な、なんでもないお吸物。

わたしの育った西の方ではポピュラーなお椀です。

だしと、塩と薄口しょうゆ、たねとつま、吸い口

このハーモニーがお椀の味なのです。

(三つ葉は、香り野菜なので、吸い口を兼ねた便利な野菜です。

むつかしくかんがえず、三つ葉、焼き麩だけでもどうぞ

.

前述のご主人は、

よそったばかりのお椀を両手でつつみ、

口元に寄せ、目をつむり、湯気が運ぶ香りを味わい、

少しずつ少しずつ飲み進まれました。

飲み干されたとき、

 

「あーー、なんておいしいんだろう。

のどを、すぅーーっと通って、

すぅーーっと胃に降りていくね・・・・・」

そして、あらためて

慈しむように、お椀を大きな両手でつつみ、

お椀をみつめて

 

「このお吸物、

わたしの命、洗ってくれました・・・・・・・」。

 

おからの煮物をよろこんでいただけたことは、

言うまでもありません。

 

天然のだしを待っていた方がいた、

また、ひとつ、こつんと手応えを感じたのでした。

 

(2005年のだしをとって料理する教室より)

 

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飛び入り小学生「おからの煮物」に挑戦!

2016年08月18日 | 出汁教室エピソード

<だしをとって料理する教室>

 

さて、

午前の部が終り、一息入れようと

ティー・ブレイク中のこと。

 

「いい匂いがするけど、なにしてるんですか」

背後から声。

ふりむくと、

女の子数人が会場の窓からのぞいています。

「お料理してたのよ」

と窓に近寄ると、

窓枠まで背の足りない小さな子を合わせて

約10人の女の子たちでした。

会場の近所のY小学校の生徒で、

運動会が午前中で修了し、帰宅途中とのこと。

 

「わー、お料理したーい」

「入っていいですか」

「どーーぞ」と応えると、

「わーーい」と駆け足で入り口に向かいます。

入り口に並列に並び、声を揃えて、

元気よく「こんにちはァ」と挨拶し、入室。

リーダー格の体格のよい子が、1人、1人を

紹介してくれます。

1年生2人。2年生2人、4年生2人、5年生2人、

6年生2人の計10人。

紹介された子は、1人、1人、ぺこっぺこっと

頭を下げて、にっこりしたり、照れたり。

「お料理おしえてください!」

目が輝いています。

 

子供たちが飛び入りしてくるとは・・・。

ま、材料には余裕があるし、

「よっし、OK!、じゃ、やろうか!」と、わたし。

「やろう!、やろう!」

「なに、つくるんですか?」

「ごはんは、午前中つくったのがあるから、

おからの煮物、

豚のフライ(豚肉の梅香揚げ)、

とろろ昆布のお吸物ね」。

「おからの煮物って知らない」

「給食でも食べたことない?」

「ないですー」「ないよね」

「そう?へんだな、

お豆腐よりも栄養があるし、

食物繊維もあるしね。

おからの煮物ね、

女の子はしょっちゅう食べてると

美人になるのよ。

家では食べない?」

「おからの煮物って聞いたことないです」

 

「おからの煮物、わかんないけど、

わたし、つくってみたいです」と4年生の子。

「そう!じゃ、おからと一緒に煮る材料を

みんなで切って材料が揃ったら、

あとは、1人でつくる?」

「はい、やります」

 

リーダー格の子(以下リーダーの子)が

「これからやることをわたしに説明してください。

わたしがみんなにやらせますから」

レシピを見せて、プロセスを伝えたら、

見事に能力に応じて下級生に指示してくれました。

低学年の子には、飽きないように、

かんたんな仕事を次々与え、

失敗したら、落ち着いてさりげなく

手を出して助けるという姿勢に、感動。

他の子達も素直に従って調理しており、

小学生だって、なんでもできる!

すごいな、

こんなに素敵な子達が日本にはいるんだ、

と嬉しくなりました。

 

おからの煮物の作り方の手順は、

①鍋に、だし、砂糖、薄口しょうゆ、塩を合わせ煮立てる。

②下拵えした干し椎茸、にんじん、ごぼう、むき海老を、

香りがしてくるまで炒める。

③鍋を熱して油を入れ、おからを入れて炒める。

④③の鍋に、②を戻しいれて、①の煮汁を加え、

煮汁がほとんどなるまで煮る。

子供たちなので、ここで出来上がりにしておきました。

 

4年生の子は、仲間に話しかけられても一切乗らず、

ひたすら真剣にお鍋と格闘。

わたしが、

「はい、フライパンに火を点けて」

「はいッ」

「はい、ここでおからを入れて!」

「はいッ」

「木べらを大きくつかって混ぜてね」

「え?」

「お鍋の底の方から、

おからをひっくり返すように混ぜるの」

「はいッ」

と、猛特訓?(笑)。

できあがったとき、

彼女は、ちいさな声で

「できた・・・」と、にっこり。

「疲れた?」

ちいさな声で「楽しかった」と、

また、にっこり。

 

3品できあがり、配膳し、

いただきますのあと、

「おから初めて!」と言いながら食べはじめました。

最初の1~2口目は、味をたしかめていましたが、

3口目くらいから「おいしい」「おいしい」と言いはじめ、

残さず食べました。

 

食事中、リーダーの子が

「おから初めてだけど、おいしいです。

さっきから考えてたんですが、

この味は、きっとお父さんが好きな味だと思います。

お父さんに食べさせてあげたいので、

お鍋に残ったの、

少しだけ貰っていってもいいですか?

こういうの、うちのおかあさんには、

絶対つくれないから」

「絶対つくれないって、どうして?」

「おかあさん、フィリピン人なんです。

だから炒め物のパイナップル料理が多くて・・・。

お父さんの好きな、

おばあちゃんちで出てくるような、

お醤油をつかった、こういう味のは

絶対つくれないです。

持って帰ったら喜ぶと思います」

「今日のあなたの動きを見ていると、

お料理してるってこと、よくわかるんだけど、

ときどきつくってるの?」

「はい、おかあさんも働いてるし、

日本人のなかで働くのは大変だって、

土・日は、ぐったり疲れてるので、つくります。

あ、つくるといっても、スパゲッティくらいです。

妹や弟がスパゲッティ食べたいって言うんで。

もうひとつお願いがあるんですけど、

今日の、つくり方書いたのも、

持って帰れますか?」

 

結局、全員がおからの煮物を「お父さんに」

お土産にすることになりました。

お鍋を囲み、ビニール袋に詰めながら

「お父さん、喜ぶよね」

「つくったって言ったらびっくりするよね」

「これでビール飲むよ、ぜったい」

「ぜったいだよね」

ほんとうに楽しそうに袋によそう子供たち。

わたしが

「みんな、お父さん好きなのねーー」と言うと、

「好き~~!」

「大好き~~!」

 

帰るとき、全員がまた入り口に並列に並び、

「なんか、不思議、夢みたい!」

「お料理つくりたい」

「また会いたいな」

4年生の子は、ずっとわたしの顔をみつめていました。

その顔が、

ちょっぴり大人びてみえました。

 

レシピ片手に、いつまでも振りかえっては

手を振る子供たち。

おからの煮物、

おとうさんに喜んでもらえたでしょうか。

中高生になっても

「お父さん大好き!」って言うのかな。

 

 

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思いがけない、うれしい再会。

2016年08月18日 | 出汁教室エピソード

<だしを取って料理する教室>

今回は、2005年10月、

仙台市泉区でのエピソードです。

 

この日の講習は、午前午後2部制の教室で

出席者は、午前中は20~30代のシングルの方や

おかあさん。

午後は60代の方とのことでした。

というわけで講習内容は、

おだしは、前日、駅前の朝市で求めた

羅臼昆布とかつお節で「1番だし」をとり、

・吸い物は、「焼き麩と三つ葉」

・煮物は、家庭料理の定番のおかず

「おからの煮物」に。

若い方のために揚げ物もつくるかな、と

「豚肉の梅しそ巻きフライ」の3品。

 

さて、そろそろはじめましょう!

と声を掛けたとき、

バタバタ、バタッと恰幅の良い元気な方が、

丸々とした赤ちゃんを抱っこして入ってこられ、

「センセー、ごぶさたしてます!」

赤ちゃんを私の方にグイっと揺らして

「センセー、おかげさまでできましたー!」

失礼ながら、どなたかわからない。

ポカンとしていると、

 

「2年前ゴールデン・ウイークの

中山区の教室でお会いしたコクタですよ、

あのときセンセイに「子供がほしい」と言ったら

それより顔色が悪すぎる、

どんな食事してるの?

まずは体調を整えたら?って心配してくださって

だしを取れば健康になるし、

子供のことはそれからでしょって言って

くださったじゃないですか。

あの翌日、

先生の指定された駅前の「朝市」のお店で

昆布とかつお節を買って、

センセイの本も買って

ほんとに翌日から毎日毎日、

だしでごはんつくったんですよ。

ほんとに毎日。

そしたら、私、どんどん体調がよくなって

念願の子供ができたんです!!!」

 

興奮して機関銃のように話すコクタさん。

わたしは記憶のフイルムを加速度を

つけて巻き戻し、

まじまじと見つめたら、ちょっぴり面影が

ありました。

痩せて朝黒い顔だったコクタさん。

いまは顔に赤みがさし、身体も一回り

大きくなり、どこからみてもドシッと安定

感のある頼もしいおかあさん。。

 わからないはずです。

「いやー、ほんとだ、コクタさんだわ、

2年前とは、別人だわー、

健康的でわからなかったーー。

劇団員だったわよね」

「あのころ、ほんと体調悪くてフラフラでした。

ロクなもの食べてなくて・・・。

で、あの中山のときのだしとかお料理が

おいしくて、だしをとる食生活に目覚めたんです。

劇団もやめて、子育て中心の普通の生活してます。

 

離乳食もだしをベースにすればかんたんって

言われてたんで、この子もだしで育ててます。

みてください、すごいでしょ!元気そのもの、

何の問題もなく病気知らずです。

 

今回、センセーの教室があるって、

佐藤俊樹(アド・ジャスト=イベント

企画制作会社)さんから聞いて、

ただ、もう、この子を見せたくて、

今日は来ました」。

 

思いがけない再会。

そして、うれしい報告

午前の部から舞い上がってしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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だしが必要とされている!

2016年08月15日 | 出汁教室エピソード

.

「だしを取って料理する教室」


バブルの頃から長く続いた、手抜きで

つくれるカンタン料理ブーム。

「このままだと、家庭料理が伝わらなくなる」と、

2003年に、基本の家庭料理を丁寧に

つくるというコンセプトの「料理上手になる!」

(NHK出版)という本をつくりました。

 

その折、仙台本社の河北新報さんが

教室を取材してくださり、広告代理店

ライト・エージェンシー仙台支社さんから

仙台で「料理教室をしませんか」と

お声がけいただきました。

東北は仙台~松島へ、1人旅をしただけの

未知の地方。ぜひぜひ、とお受けしましたが

ひとつ条件があり、教室のタイトルは

「だしをとって料理する」と、

させていただきました。

 

昆布と削りかつおでとる「一番だし」。

天然の昆布の旨みは、グルタミン酸、

削りかつおは、イノシン酸

この2つの旨みが合わさったとき、

旨味の相乗効果で旨味が7~8倍になり

満足感の高い「だし」がとれるのです。

いつものお料理が7~8倍おいしくなれば、

家族の反応もちがいます。

こんなにおいしくなるのなら、と

料理に興味がわき、

暮らしのなかに食の比重が高くなり

暮らし方や身体にヘルシーな

変化がおとずれます。

 

<薄味になり減塩効果が得られる>

だしとり教室で、だしを飲まれた方は、

「おだしだけで、満足。

なにもいらないですね」と

感想を述べられますが、

実際、調理するとき、

余分の調味料を使いたくなくなります。

新鮮な青菜のおひたしなど、

ちょっぴり、お醤油を加える程度で

充分満足できます。

結果、

青菜の味、香り、色もたのしめます。

 

和食ならではの、食べることだけではない

諸々の広がり。

だしで、感じるようになります。

 

.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

わたしは、どんな教室にうかがっても、

強制されない限り、

いわゆる高い壇には登らず、

生徒さんと同じフロアに立ち、調理をします。

高いところに上がったのでは、わたしからの

一方通行ですし、生徒さんの貴重な声が

耳に入りませんから。

 

心に残る、教室エピソードNO.1

2005年、仙台から10数分の、

東北本線岩沼での教室でのこと。

生徒さんは、12~3人くらいの中高年女性と、

50歳前後のサラリーマン風の男性お1人。

女性のみなさんは、

毎月、そこの教室が主催している料理教室に

参加している方達で、リーダー格の方によると

「だしを取って料理する」

というのが初めてなので

申し込まれたとのことでした。

.

献立は、

きゅうりの生姜酢、

若竹煮

筍の炊き込みごはん、

筍の絹皮の吸物。

*絹皮ーー筍の上部のやわらかい部分。

.

だし取りをしているときは、みなさん静かでしたが、

調理がはじまると、

女性のみなさん、

わたしの調味料の量にご不満で、

調味料を加えるたびに、

「あらら、そんなもん?」

「あらららら、そんなちょっとの醤油?」

「あーー、だめだーー、とうさんも息子も箸つけね」

「あーー、これじゃ食わね、な」

「センセイ、醤油足りねんでねが。

薄ぐてだめだ。醤油さドバっと入れろ」

もう、文句タラタラ。

筍ごはんに蓋をして炊き始めたとき、

「こら、うまぐね」と、

1人の女性は、呆れ顔で退室されました。

.

さて、配膳後ちょっぴり座が白け、

「いただきます」の声は頼りなげ。

さて、いざ、食べはじめたら、

「・・・・・・うめィ、な」

「うん、なんでこんなに色が薄いのにうめィんだ」

「だしでうめィんだな」と。

全員の方からおいしい、と言っていただけました。

食べ終るころは、

「センセイ、今度いつ来る?

次は、漬物もって来っから」と、和気あいあい。

「また食べたい」と喜んでいただけました。

.

終了後、前述の男性が残ってらして、

「今日は本当にありがとうございました」と

改めて挨拶をされ、

「いえいえ、お疲れさまでした」と

顔を合わせたら、

その方の眼に涙が浮かんでいます。

 

「ちょっとお礼を言いたくて、残りました。

わたしは、今50を過ぎたばかりの00と申します。

若くして妻を亡くし、寂しさを紛らわすために、

乱暴な食生活をしまして、わたしの身体は、

40過ぎから高血圧をはじめ、いろんな成人病の

デパートなんです。

外食は、塩分が多いので、

いい加減な料理ですが、なるべく自炊してます。

医者からは、「塩を減らせ、醤油を減らせ」と

いつも言われています。

でも、塩と醤油を減らしたら、ちっともうまくなくて、

食事の楽しみがまったくありません。

仕事もありますし、

料理のことだけを考えているわけにもいかず、

何かかいい方法はないか、

何かあるんじゃないか、

とさがし続けていました。

 

検診のたびに、医者は

「もっと塩と醤油を減らせ」

としか言ってくれません。

先日は、

「まだ減らしてないじゃないか、

このままいくと死ぬぞ、死んでも知らないぞ」

と言われました・・・・・・。

なにか、糸口はないものか、

どんなことでもやるからと、

必至になって医者に相談しても、

同じことしか言ってくれません。

「塩と醤油を減らせ」

こればっかりです。

病院の栄養士もそうでした。

 

ほんとうに、もう、精神的にも行き詰まってしまって、

情けないことを言うようですが、

最近は家に帰っても1人ぼっちという実感が強くなり、

さびしくて、不安で、

もう、毎日に希望がもてなくなってました。

.

そんなとき、センセイの広告をみつけたんです。

タイトルの<だしを取って料理をする>。

だしは、インスタントのを使ってますが、

昆布とかつおで取る<だし>なんて

考えたこともなかったんです。

タイトルをじーーっと見ながら、

そういえば、

料理には「だし」を使うものだったな、

おふくろが煮干しで取ってたな、と思い出し、

教室に出席すれば、

なにか、ヒントがもらえるかもしれないと、

今日は参加しました。

.

あんなに少しの醤油で炊いた筍ごはん、

初めて食べました。

筍の煮物も、吸物もぜんぜん物足りなくなかったです。

ほんとにおいしかったです。

インスタントのだしとは全然ちがってました。

食べながら、ほんとに嬉しくなりました。

答えがみつかりました。

ありがとうございました」

顔をくしゃくしゃにして、涙が落ちそうな眼で、

にっこり笑って退室されました。

.

見送るわたしも、

後姿のその方の青いストライプのシャツが

よろけて太く見えました。

そしてそのとき、

だしは、ほんとうに必要とされている、と

確信したのでした。

.

続きます。

 ー2008年6月22日のブログより=。

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心に残るだし取り教室の思い出。NO.2飛び入り小学生篇

2012年03月16日 | 出汁教室エピソード

Img_1523

拙著「引頭佐知さんのだしとり教室」114ページより。

小学5年生の「だしとり」の感想文です。

.

2010年10月、近所の私立和光小学校で、だしとり教室を

催し、とっただしで、さぬきうどんのうどんつゆをつくりました。

5年生38人が6班に分かれて、だしとりをしましたが、

わたしのデモをたった1回見たただけで、全班ちゃん

とできました。大人よりも勘がいい。

だし取り、こどもたちにさせてみませんか。

.

だしを取って料理する教室NO.2

今回は、仙台市泉区での心に残るエピソードです。

.

10月末頃、午前と午後の2部制の教室でのこと。

参加される方の多くが年配の方と聞いてましたので、

煮物は、おからの煮物(卯の花炒り)に決めました。

おからの煮物は、だしをたっぷり使いますからね。

年配の方なら、きっと喜んでいただけるはず、と。

そして、おからを選んだもうひとつの理由は、

おからが産業廃棄物というおかしな事実。

とんでもないことです。

すぐれた栄養価はもちろんのこと、

おいしさをわかっていただきたかったからです。

.

飛び入り小学生、だし取り料理教室

さて、

午前の部が終り、ティー・ブレイク中のこと。

「いい匂いがするけど、なにしてるんですか」

.

背後から声。

ふりむくと、

窓の外から5~6人の女の子がのぞいています。

「お料理教室してたの」と、窓に近寄ると、

窓枠まで背の足りない小さな子を合わせて

約10人の女の子たちがいました。

会場の近所のY小学校の生徒で、

今日は運動会。

午前中で修了し、帰宅途中とのこと。

.

「お料理したーい」

「入っていいですか」

「どーーぞ」と応えると、

「わーーい」と駆け足で入り口に向かいます。

入り口に入ると並列に並び、声を揃えて、

元気よく「こんにちはァ」と挨拶し、入室。

リーダー格の体格のよい子が、1人、1人の

学年と名前を紹介してくれます。

「この子ね、チビだけど6年生」

「4年生と同じぐらいなんだ」

「この子ね、1年生。お父さんの転勤で先月ニューヨークから

来て、来月は福岡に行くの。福岡行きたくないのよね?」

「うん、仙台がいい。もう知らないところ、行きたくない」

1年生2人、2年生2人、4年生2人、5年生2人、

6年生2人の計10人。

紹介された子達は、1人、1人、ぺこっと頭を下げて、

にっこりしたり、照れたり。

みんな、口々に「お料理おしえてください」と言って、

目が輝いています。

.

わざわざ年配の方向きに、と、

おからの煮物を選んだのに、

子供たちが飛び入りしてくるとは。

ま、材料には余裕があるし、

「よっし、OK!、じゃ、お料理しようか!」と、わたし。

「やろう!、やろう!」

「なに、つくるんですか?」

「ごはんは、さっき炊いたのがあるから、

おからの煮物、豚のフライ(豚肉の梅香揚げ)、

とろろ昆布のお吸物ね」。

「おからって?」

「おからの煮物、給食で食べたことない?」

「ないですーー」「ないよね」

「そう?へんだな、

これがおから。

お豆腐をつくるときのしぼりかすなんだけど、

お豆腐よりも栄養があるし、食物繊維もあるしね。

女の子はしょっちゅう食べてると美しくなるのよ。

家では食べない?」

「おからの煮物って聞いたことないです」

.

「わかんないけど、わたし、つくってみたいです」

と、4年生の子。

「よーし!

おからと一緒に煮る材料をみんなで切ってね。

材料が揃ったら、あとは、炒めて煮るんだけど、

1人でつくる?」

「はい、やります」

「炒めて、煮ればできるからね」

「はい!」」

.

リーダー格の子(以下リーダーの子)が

「これからやることをわたしに説明してください。

わたしがみんなにやらせますから」

レシピを見せて、プロセスを伝えたら、

見事に、能力に応じて、下級生に指示してくれました。

とくに、低学年の子が飽きないように、

常にかんたんな仕事を与え、

失敗したら、落ち着いて、さりげなく手を出して

助けるという姿勢に、感動。

4年生の子といい、リーダーの子といい、

こんなにすてきな子達が日本にいるんだ、

と嬉しくなりました。

.

おからの煮物

おからの煮物の作り方の手順は、

①煮だしと調味料を小鍋に合わせてひと煮たちしておく。

②下ごしらえした干し椎茸、にんじん、むきえび、ごぼうを

ざっと炒めて、香りが出てきたらバットに移す。

②同じ鍋に、サラダ油を入れて熱し、おからを加え、

全体に油がまわって、しっとりするまで炒める。

④鍋に、②を戻しいれて、①の煮汁を加え、

約20~30分、煮汁がほとんどなるまで煮る。

子供たちなので、ここで出来上がりにしておきました。

.

4年生の子は、仲間に話しかけられても一切乗らず、

ひたすらお鍋と格闘。

わたしが、

「はい、フライパンに火を点けて」

「はいッ」

「はい、ここでおからを入れて炒めるの」

「はいッ」

「木べらを大きくつかって炒めるのよ」

「え?」

「底の方から、おからを起こすように混ぜるの」

「はいッ」

と、猛特訓?(笑)。

できあがったとき、

彼女は、ちいさな声で「できた・・・」と、にっこり。

「疲れた?」

ちいさな声で「楽しかった」と、また、にっこり。

.

「お皿きめてください!」

料理ができあがりそうになると、リーダー格の子から声が。

3品できあがり、盛り付けも配膳も子供達。

いただきます、のあと、

「おから初めて!」と言いながら食べはじめました。

最初の1~2口目までは、味を確かめるという感じでしたが、

3口目くらいから「おいしい」「おいしい」と言いはじめ、

残さず食べました。

.

食事中、リーダーの子が

「おから初めてだけど、おいしいです。

さっきから考えてたんですが、

この味は、きっとお父さんが好きな味だと思います。

今日は日曜日だからお父さんいるんです、

お父さんに食べさせてあげたいので、

お鍋に残ったの、少しだけ貰ってもいいですか?

なんでかって、こういうの、

うちのおかあさんには、絶対つくれないから」

「絶対つくれない、ってどうして?」

「おかあさん、フィリピン人なんです。

だからパイナップル料理が多くて・・・・・・。

お父さんの好きな、おばあちゃんちで出てくるような、

こういう味のは、絶対つくれないです。

持って帰ったら、お父さん喜ぶと思います」

「あなたの動きを見ていると、お料理してるってこと

わかるんだけど、ときどきつくってるの?」

「はい、おかあさんも働いてるし、

土・日は、ぐったり疲れてるので、代りにつくります。

あ、つくるといっても、スパゲッティくらいです。

妹や弟がスパゲッティ食べたいって言うんで。

今日の、つくり方書いたの持って帰れますか?

.

結局、全員がおからの煮物をお父さんにお土産に

することになりました。

お鍋を囲み、

「お父さん、喜ぶよね」

「つくったって言ったら、びっくりするよね」

「これでビール飲むよ、ぜったい」

「ぜったいだよね」

ほんとうに楽しそうに容器によそう子供たち。

わたしが「みんな、お父さん好きなのねーー」と言うと、

「好き~~!」

「大好き~~!」

「お母さんより好き~~!」

.

帰るとき、全員がまた入り口に並列に並び、

「なんか、不思議、夢みたい!」

「お料理つくりたい、また会いたいな」

「今度いつ来るの?」

4年生の子は、ずっとわたしの顔をみつめていました。

その顔が、

ちょっぴり大人びてみえました。

.

レシピ片手に、いつまでも振りかえっては手を振る

子供たち。

たったの2時間でしたが、忘れられない濃密な時間を

過ごしました。

おからの煮物、

おとうさんに喜んでもらえたでしょうか。

中高生になっても「お父さん大好き!」って言うのかな。

.

わたしにとっても夢のような、すてきなハプニングでした。

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