東シベリアの北柳

2011-11-14 07:27:52 | 鳥(Birds)


キタヤナギムシクイ(Phylloscopus trochilus yakutensis) Willow Warbler


西日の差す頃。
畑を巡って日没を迎えることで意見が一致した私達は、今回の鳥の状況を口々に絶賛しながら移動していた。
ふと私が「この道に入ってみよう」と言い出し、春にシマノジコをどっさり見たあたりの畑道に足を踏み入れた。すると間もなく、畑群の中にポツリと立つ木の樹幹辺りに1羽、西日を浴びて黄色く輝くムシクイがいた。
このムシクイ、背面は薄いオリーブ色に灰色を乗せたような色をしていて、下面は少し汚れた白地に薄いライムイエローをのばしたような色味を呈している(後から分かったことだけれど、この色が翼下面の一部にも及ぶ)。この下面が、西日を浴びて肉眼で見ても存在がすぐ分かるほどに光っていたのだ。
顔は、眉斑などの輪郭がハッキリしないためか全体的にぼやけている、というか柔らかい印象だった。

まず初めに、Y君が言葉を発した。「これ、日本のムシクイじゃないですよ!」
しばらくするとそのムシクイは私達の頭上を飛んで後方の藪に舞い降り、「フィウィ ↑」と尻上がりの柔らかい声で数回地鳴きをした。
それから間もなくして、畑道の真ん中で私達の議論が始まった。
「いやこれモリムシクイでしょ!むっちゃ黄色い。」「いやいや、腹と喉とのコントラストが無かったでしょ。黄色すぎなのは西日マジックだって!」「でもそれにしても黄色い。」「うわ、っていうか翼帯無かった。翼帯無くて黄緑系な時点で数えるほどしか選択肢が無いよ。チフチャフのfulvescens は?」「体形違うし下面黄色くない。・・・それよりなんだこれ、すごいのっぺりしてる。」「primary projectionと三列の比は―」「―、でもjizzはキタヤナギ―」
とまぁ大体こんな感じだ。
後からああだこうだと自信を持って言えるのは種同定が確信に到っているからの話だけれど、選択肢にはあったとはいえこの鳥を見て1秒で答えが出なかったのはまだまだ勉強と経験不足といったところか。

個人的には、最後までひっかかったのは脚の色。キタヤナギの脚の色は黒褐色というイメージが強かった。
これは、日本の図鑑によるイメージなのだが、実際に見た個体は西日が当たっていたせいもあるのか、それほど暗色には見えなかった。
一方COLLINS BIRD GUIDEのキタヤナギムシクイ(亜種はP.t.trochilus)を見ると、脚の色はかなり淡色に描かれていて、説明にも「普通は淡色」とある(チフチャフと同じくらい暗色になる変異も発生するともあるが)。しかしこれについてはそもそも亜種が違うからかもしれない。

このキタヤナギムシクイ、全身をじっくり現したのはこの1シーンだけだったようで、次の日にかけては潜った藪からなかなか出てこなかったみたいだ。
実は、写真のあるキタヤナギムシクイの記録は今回が山形県初記録らしい。


そういえば昼から何度も目にはしていたけれど、この畑の周りには特にキマユムシクイが多かった。というかキマユムシクイしか居なかった。
キレが良くてよく通る声で何度も鳴きながら2羽で追いかけ合うような行動をしたり、かと思えば2本の翼帯が肉眼でも見えるほどしばらく動かず固まっていたり。
柿の果樹園を見て、ルリビタイジョウビタキを逃した春の悔しさをぶり返している時にも、「チウイ!」と元気の良い声がした。



【2011/10/08/山形 Tobishima Island,Japan/Oct.2011】


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