I've always “pined” for a “Pine” Bunting.

2011-11-08 23:15:57 | 鳥(Birds)


シラガホオジロ(Emberiza leucocephalos leucocephalos) Pine Bunting


ピピットで賑わっていた海岸沿いの草地から、坂を上る。日当たりのよい斜面に生えたススキの中には2羽のムジセッカが潜んでいて、地鳴きを響かせている。シイ・タブの茂る暗い森を通る坂道を、腿をだるーくしながらえっちらおっちら登っていくと、次の草地に着いた。
こちらは先ほどの草地に比べて草丈が高く、私の膝上ほどまでの長さがある。少しずつしか姿を見せてくれないけれど、この草地や周辺の藪の中にはもの凄い数の鳥が入っていることはすぐに分かった。嬉しいことに、島に来る前に聞いていた「閑散として静かな秋の離島」のイメージとはかけ離れた状況だったのだ。

ここにきて、春に来た時とは鳥の見方が明らかに違うことに気がついた。春ならば草が刈られているため疲労した鳥が地上に降りている姿が丸見えだったのだけれど、草丈の高い秋にはそうはいかない。なぜならほとんどの鳥が、姿の見えなくなえる草むらの中に潜んでいたのだ。
ここでは、草地から周辺の木に飛び移り、その枝から藪へ下りるまでのほんの数秒間で鳥の姿を見なければならない。さらに、見えない鳥を識別するには地鳴きについて少し勉強する必要がある。かといって、図鑑の鳴き声のカタカナ表記を丸暗記したところで参考にしかならないというのが悩ましいところ。そこで私は、聴いた鳴き声を自分なりの「聞きなし」と解説でフィールドノートに書いておくことが多い。図鑑に書いてあるものと違って、自分で書いたものなら後から見ても音の感じを比較的思い出しやすいと思うからだ。

この時に見た鳥で地鳴きを忘れたくないものの1つは、コヨシキリ。こいつの地鳴きはムジセッカの地鳴きと少し似ているけれど、ムジセッカよりも粘りの無く短い音を発する。
一方ムジセッカはウグイスみたいなカスレっ気が無くて、とても響きの良い、耳障りのよろしい地鳴きをしていた。
周りが藪だらけで日当たりの良くない畑を歩いている時などには、これらの地鳴きがそこかしこから、時には混ざりながら聞こえるから、そのうち頭が麻痺してくるのは時間の問題だった。
理解はしていても場数を踏んでいないとこうなる、という失敗の最たる例は、カラフトムジセッカが目の前に出た時のことだ。こいつは顔もカラムジ、背面もオリーブ褐色、下尾筒も黄色味が強くて、どこからどう見てもカラムジだった。しかしそれは後からY君と写真を確認した時に思ったこと。カラフトムジセッカなら春にも見ているし、地鳴きも聞いているから、まさか見過ごすなんて思っていなかった。
言い訳をさせてもらうなら、この個体を見た時には、本当にムジセッカみたいな声がこのカラムジの方から聞こえたのだ。知っているカラムジの声ならもっとえぐるような音なのに、そんなイメージは受けなかった。
もしかしたらカラムジのすぐ後ろで本当にムジセッカが鳴いていたのかもしれないし、このカラムジが鳴き方のバリエーションの1つとしてムジセッカ様の鳴き方を持ち合わせていたのかもしれない。
とにかく地鳴きのイメージが先行して、ムジセッカか、とあまり観察しなかったのは良くなかった。
この地鳴き迷宮からふと空を見上げると、チゴハヤブサが鎌のような美しい飛翔形で私達の上空を旋回していった。

多くの鳥がほんの一瞬しか姿を見せてくれない秋の離島では、手持ちの一眼レフに中望遠レンズという装備は最も威力を発揮するものだなと感じた。観察可能な時間が数秒しかなくても、「とりあえず撮ってあとでじっくり検証」という手段が使えるかどうかではだいぶ違う。
私はこのような装備は持ち合わせていないため、写真を撮る好機は比較的少なかった。
そんな私にもゆっくり姿を見せてくれたのは、シラガホオジロだった。
草地周辺に、明らかに15羽以上はいるシラガホオジロ達は「プチプチプチ....」とかなり特徴的な声で鳴きながら、群れで飛ぶ。そのうち草地脇の木に舞い降りると、膨らんでリラックスし始めた。
シラガホオジロの雄雌ともに目を引いたのは腰から下尾筒にかけての綺麗な赤茶色で、シロハラホオジロの同部分に通ずるものがある。けれどシラガホオジロはこの羽縁に柔らかな白の縁取りがあることでキアオジのそれのようにふんわりとした美しさが醸し出されている。
この記事の題名にもあるように、シラガホオジロは秋の離島では絶対におさえておきたい鳥だったから、心から嬉しかった1種だった。











【2011/10/08/山形 Tobishima Island,Japan/Oct.2011】


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