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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

グローバル経済の迷宮 製造業の空洞化② 日本だけ成長せず敗北

2018-02-23 11:21:14 | 経済・産業・中小企業対策など
グローバル経済の迷宮 製造業の空洞化② 日本だけ成長せず敗北

名古屋経済大名誉教授坂本雅子さんに聞く

海外投資、特に低賃金国への生産移転は、母国の産業空洞化と経済力低下を引き起こします。しかし2000年代以降、日本の政府、企業、研究者たちはこれを無視し、こぞって海外への生産移転を美化し続けました。
海外、特にアジアへの投資や生産移転は、「アジアの成長を日本に取り込む」もの、「東アジアに中枢部品を輸出してアジアの生産ネットワークを日本がけん引する」ものであり、日本企業はむろん、日本経済そのものを大きく成長させる道だというのです。
しかし現実に起きたのは、日本だけが成長に取り残されて敗北するという結果でした。

中国から輸入増
世界の国内総生産(GDP)での日本の地位は、1991年には3・5兆ドルで世界2位、米国の約6割ありました。しかし2015年には4・4兆ドルで、3位に落ち、米国の2割強に。2位に躍り出た中国の4割弱になりました。
輸出でも、1991年には3100億ドルで、米国、ドイツに続いて3位でしたが、2016年になると日本は約6400億ドルで4位。しかも米国(2位)、ドイツ(3位)の半分以下になってしまいました。ダントツ1位は中国で、輸出総額は約2兆ドル。15年間で日本の5分の1から3倍に激増したのです。
中国の輸出急成長をけん引したのが、輸出の約3割を占める電気機械です。電気機械は中国の輸出の中心になっただけでなく経済成長もけん引したのでした。
中国とは真逆に日本では、輸出の3分の1を占めていた電気機械は減少し、逆に輸入の15%程度を占めることも多くなりました。
パソコンや携帯電話などの現代の生活必需品のほとんどが、中国からの輸入品になったからです。日本企業は、これらの生産を台湾企業に委託しましたが、台湾企業は世界に供給する製品のほとんどを中国で生産しました。日本企業のアジアへの生産移転が輸入拡大に直結したのです。
結局、日本の貿易収支は、年間10兆円にも及んだ黒字が激減し、11年には赤字に転落してしまいました。




電子機器・部品の海外生産比率(%)
 2010年2014年
電子工業計5966
(1)徽子部品・デバイス4350
うち半導体(半導体素子/集積回路)3032
うち電子部品(受動・接続・変換部品等)6271
うちディスプレイデバイス169
(2)産業用電子機器6873
うち携帯電話5989
うちパソコン(サーバ、タブレット含む)7981
うち情報端末(ブリンタその他)9092
うち電子応用装置6059
(3)民生用電子機器7388
うち薄型テレビ7597
うち撮像機器(デジタルカメラ等)6875
(2)+(3)電子機器7073
※JEITA『電子情報産業の世界生産見通し』2011年版、同2015年版から坂本さん作成

部品輸出も低落
日本は1990年代、アジアに中枢部品を輸出し、東アジア域内での生産分業、工程間分業の中核になりました。しかしこのアジア向け中間財輸出も、2000年代以降、東南アジア諸国連合(ASEAN)、中国、韓国、台湾に次々と追い抜かれ、日本は最下位になったのです(グラフ)。
「アジアの生産ネットワークを日本がけん引する」などという論は、今となっては悪い冗談になりました。
日本の電機産業の海外生産比率は、経済産業省の報告書では、情報通信機械で30%前後、電気機械で十数%。意外に低い数値です。
これは日本企業の海外工場での生産しか計算せず、委託生産を除外しているからです。委託生産とは、生産を他社に丸投げし、ブランド名だけ自社の名前を付けるやり方です。委託生産を含めると、海外生産比率は電子工業全体で66%、携帯電話で89%、薄型テレビで97%(14年)という恐るべき数値です(表)。国内生産はもはや壊滅状態とさえ言えます。
生産の海外移転は、前回述べたGDPの後退だけでなく、移転先のアジア各国の成長に寄与した結果、貿易面での敗北と赤字化も生み、日本経済を不可逆的に後退させ、揺るがし始めているのです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年2月21日付掲載


東アジアの各国が電気機械の製品の輸出を伸ばしているが、日本だけ低迷。
とりわけ、パソコン、携帯電話、薄型テレビなどの海外生産が進み、逆輸入に押されている。

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