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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

熊本地震1年 復興への課題③ 「みなし仮設」避難者―ストレスで健康状態悪化

2017-06-01 14:06:19 | 震災・災害・復興・地震&災害対策など
熊本地震1年 復興への課題③ 「みなし仮設」避難者―ストレスで健康状態悪化

熊本地震で自宅が全壊するなどの被害を受けた被災者に対し、自治体が民間住宅を借り上げ「無償提供」する「民間賃貸住宅借上げ制度」(みなし仮設)。日本共産党熊本地震被害国会調査団が聞き取りした一般社団法人「よか隊ネット熊本」の避難者訪問活動から、みなし仮設が抱えている課題などが明らかになりました。


江崎太郎さん


高林秀明教授

住み替えできず
同ネットの江崎太郎事務局長は、みなし仮設が長屋形式の応急仮設住宅と異なり、「県内外の広範囲に避難者が点在し、コミュニテイー構築が難しく、個人情報の保護が壁となって支援や情報から孤立しやすい」と指摘します。
同ネットは行政の委託を受け、孤独死や自殺、社会的孤立を防ぐため、熊本県益城(ましき)町で被災した、みなし避難の1440世帯(2017年3月時点)を対象に「見守り支援」訪問を続けています。若い夫妻と2男でみなしに入居した世帯の訪問では、階下住民から「うるさい」と床を突き上げられ、長男は地震の恐怖を思い出すトラブルにあっているとの相談がありました。
転居を希望しますが、家主都合のほか病気が発症してからしか、仮設の住み替えは認められにくい状況です。仮設住宅設置の根拠法である災害救助法の運用は、柔軟な適用が建前ながら、予防の観点を欠いた対応です。
半壊以上で、みなしを含む仮設住宅に入居していない在宅避難は熊本市で4万世帯。「数が多すぎて、把握は行政もさじを投げざるをえない状況ではないか」と江崎さんは話します。益城町では、いまだに車中泊を続ける在宅避難者の事例も報告されているとして「情報がないまま支援制度は次々期限切れになって、使える制度がないという事態もありえます」とのべました。
訪問スタッフの確保が難しく、訪問活動には限界もある中、「今後は、みなしの人たちが気軽に集まって交流できる場をイベント形式で提供することによって、孤立しないつながりづくりができれば」と語りました。
熊本学園大学の高林秀明教授は、地震直後の過酷な避難所生活や、物件を選べる状況ではなく、とりあえず入居したみなしでの困難、ストレスを抱えた長期生活がもたらす健康状態の悪化を挙げます。
訪問した中には、若い女性で脳出血を起こして入院し、子育てできず夫が大変な状況に陥っている世帯もありました。障害、病気の人や要介護の人のいずれかがいる世帯は、面談できたうちの4割を超えました。
「当初2月までだった医療費免除の措置が9月末まで延長になりましたが、これだけ健康状態が悪い中、せめて仮設住宅の解消までは継続するべきです。切られた時の避難者のダメージは、精神的にも経済的にも大きい」

住民自治発展を
他方、震災を経験し、住民自治をどう発展させるかが教訓に問われていると高林教授は強調します。「私の住む小学校区は人ロ1万3千人ですが、避難所に収容できるのは3千人程度。避難所に行けない大半をどうするか、行政も手が回らず、発想もない」。避難者どうしが自治で避難所を運営していたこの小学校区では、支援物資をリヤカーにのせ、情報や物資を届けて地域を回ったといいます。
「自治体、行政、議会には本来、住民自治の事務局として自治を育てていく役目がある」と語る高林教授。「行政に住民の困りごとを敏感にくみ取る姿勢が弱い中、住民も要求を上げるためには団結していかなければ。住民が主人公として市民活動や運動を伸ばしていく機会だと思います」と話しています。(おわり)(この連載は岡素晴が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月28日付掲載


仮設住宅が不足した場合、公営住宅や民間賃貸を借り上げて「みなし仮設」するってことは有効な施策ですが、逆にコミュニティが断たれるって問題もあるんですね。
コメント
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