神戸の空の下で。~街角の歴史発見~

足かけ8年、150万PV突破。「近畿の史跡めぐり」のサブタイトルも、範囲が広がったために少し変更しました。

明石・中崎公会堂。

2008年08月23日 | □兵庫県 -播磨(姫路以外)

中崎公会堂

(なかざきこうかいどう)
兵庫県明石市相生町1-9-16




海に程近い風光明媚な場所に立つ中崎公会堂。



 東経135度の子午線が通る街・明石を象徴するようにそびえ立つ明石市立天文科学館。この最寄り駅である山陽電車・人丸前駅から南へ10分ほど歩いたところに、寺院とも見まごう瓦葺きと唐破風の建物が建っています。明石市の都市景観重要建築物にも指定されているこの建物は、中崎公会堂。明治時代に建てられた、明石市を代表する名建築の一つです。




地元の伝統産業品である明石瓦を3万枚葺いたといわれる立派な屋根の公会堂。


 明治維新後、政府はそれまでの行政制度の改革を積極的に進め、1888(明治21)年には大日本帝国憲法下の地方制度として、府県制市制町村制を制定しました。明石でも翌1889(明治22)年に明石城下町大明石村当津村王子村大蔵谷村を合併し、明石郡明石町が誕生しました。新たな自治体が形成され、その中心となる施設の必要性が高まったことから、淡路島を望む白砂青松の美しい中崎海岸に全国にひけをとらない立派な公会堂を建てようという機運が盛り上がります。

 それを受け、明石郡明石町を中心に周辺の11ヶ村が共同で公会堂の建設計画を立案。各地の施設を綿密に視察したのち、奈良市公会堂をモデルとして、奈良県古社寺修理技師などを務めた明石郡伊川谷村(現神戸市西区伊川谷)出身の建築家・加護谷祐太郎氏の設計・建築によって、1911(明治44)年7月に明石郡公会堂が完成しました。西洋風建築が流行していた当時としては珍しく、奈良・鎌倉時代の建築様式を採り入れた荘厳な和風建築の公会堂でした。



 
公会堂の左手に立つ石碑(左)と、風格あるエントランス(右)。


 1911(明治44)年8月13日の中崎公会堂の杮落としには、日本を代表する文豪・夏目漱石氏が招かれて記念講演を行いました。有名な作家先生を一目見ようと、夏真っ盛りの暑い時期にもかかわらず、1,000人を超す聴衆が大広間(収容人数200名)を埋め尽くしたそうです。当時はまだ二十歳過ぎの若者だった、明治を代表する随筆家・内田百氏も、憧れの作家の講演を聞くために岡山から駆けつけています。

 以来、多くの有名作家たちの講演をはじめ、数多くの催しが行われて地元の人々に愛されてきた中崎公会堂も、長年の風雪や潮風による塩害のために老朽化が進み、1983(昭和58)年に大規模な改修工事が施されました。創建当時の雰囲気を損なわないよう、十分な配慮のもとに復元された中崎公会堂は、阪神・淡路大震災も無事にくぐり抜け、今も人々が集う街の拠点として愛され続けています。



 
200名を収容できる大広間(左)。右は、地元の「明石ペンクラブ」が立てた歌碑です。



アクセス
・山陽電車「人丸前駅」下車、南へ徒歩10分
 中崎公会堂地図 Copyright (C) 2000-2006 ZENRIN DataCom CO.,LTD. All Rights Reserved.

利用料
大広間(200名収容)
 ※9時~21時使用 : 4,500円(時間帯によって料金は異なります)
和室(2部屋) ※剣道や空手、日舞、茶華道教室に使用可
 ※9時~21時使用 : 1,700円(時間帯によって料金は異なります) 

開館時間
・9時~21時(定休日:毎週月曜日、12月29日~1月3日)
 ※祝日が月曜日と重なるときは開館。

公式サイト
  中崎公会堂 (明石市ホームページ内)




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2 コメント

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明石市はもっとPRするべき (子午線)
2010-11-05 15:38:53
良く、書いてくれました。松山市が漱石をPRする事で、随分観光客が多いと思います。日本人は、那智目漱石が大好きなんです。明治以降の作家の人気投票を行えば、文句なく第一位でしょう、が明石中崎公会堂には、そんあ標識がないのです。これは、惜しい、漱石全集にも、その時の講演「道楽と職業」がのっています。ちなみに、その側にある忠魂碑は、日進、日露戦争の時の忠魂碑で、第2次大戦後ものこされています。「書 元帥東郷平八郎」です。
 
どうもありがとうございます! (きみー)
2010-11-05 17:44:46
私も訪れるまでは、中崎公会堂に夏目漱石のような有名な方が講演しに来ていたとは知りませんでした。
公会堂の周辺にもそのような表示もなかったですし、おっしゃる通りもったいない!
源氏物語の舞台となったお寺もありますし、「文学のまち」のようなかたちでアピールできたらいいですよね。
これからも、こんな隠れたスポットに光を当てていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします!

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