サーカスが好きだ。舞台もそうだが、楽屋裏の真剣な喧騒が好きだ。日常もまたサーカスでありその楽屋裏もまことに興味深い。

「風希、お誕生日おめでとう・・・」涙を必死にこらえながら竹富島の船着場で母 昌美を見送った6歳からずっと、風希と母をつなぐものは、毎年誕生日に送られてくる手紙だけだった。竹富島で祖父 とふたりで暮らす風希。やがて、父の...
観客もまた「うつぐみ」であるかのように
日本最南端の町。沖縄から南西に450km。八重島諸島にある竹富島が舞台となっている。僕ももう、十七年ほど前のことになるが、このあたりに1週間ほど滞在したことがあった。なにをするともなく、日が暮れなずんだころ、砂浜に出て、海をみやる。ニライカナイ、海の彼方の常世の国。本土ではあじわったことのない、胸がしめつけられるような、懐かしくもある、凪ぎ風に感傷したりもした。

この物語の核心は、「うつぐみ」という島の共同観念である。「みんなで助け合い、協力する」という相互扶助の理念の竹富島特有の言い回しである。この映画では、幼くして父をなくし、また母とも離れることになった主人公風希に対し、島民がみんなで、「うつぐみ」することになる。そして、「20歳になったら説明する」との誕生日ごとの母の手紙は、実は、不治の病で死期を悟り、東京の病院で娘のために、娘のもう自分では立ち会えない未来に対し、母親から差し出された手紙を、毎年、毎年、そのときに書かれたかのように娘に届けていくという、島民こぞっての「嘘」によって成立している。
現実の竹富島をとってみても人口わずか340人、170戸が存在するだけである。シーサーを屋根にいただいた家々を、朝はどの家からも人が出て、竹箒できれいに前の道を掃き清めていく。年に一度の種子取祭。島民は総出で、神を感じる。神司を通じて、島のあちこちにある御嶽(ウタキ)で、神に報告をして、心を慰撫する。

この島民の「嘘」という「共犯幻想」は、ただただ風希という一人の少女のための純粋な想いから成立している。真実を知り、島に戻り、虚脱する風希に対し、島民たちは黙って訪れ、ささやかな供え物をして、黙って去っていく。「嘘」によって、みなで、少女の哀しみを、分け合っているのである。思い出しただけでも、目頭が熱くなる・・・。
熊澤尚人監督の代表作といっていい。
自主映画出身のこの監督は、ポニーキャニオン勤めを経て、Vシネマでチャンスを得て、この作品にたどり着いた。
主演の蒼井優はミュージカル「アニー」の1万人オーディションで白羽の矢が立てられ、「リリィ・シュシュのすべて」「害虫」「花とアリス」などを経て、この作品にたどり着いた。
とても、いい時期の、この監督と若手女優のセッションとなった。

ひとつ感心したディティール。毎年、母に逢えなくて、祖父との生活に飽きて、思春期という年頃もあり、無意識に反発する風希だが、この時期は、人よりも長めのスカート丈で制服姿であったのに、幾分、膝丈に短くなっていった。話し方も、苛立つように、少し乱暴に。
細部のなんと言うこともないことなのだが、観客には、少女の時の経過に、思いを抱かされることになる。
ガジュマルの樹の下で、いつも大切な母の手紙を一人で繰り返し読みながら、カメラマンであった父が残したカメラでキジムナー(精霊)を察知しようかというように風景をファインダーに収める風希。その20年の成長を、観客もまた「うつぐみ」の一人のように、見守りたくなるような風希。
この小さな作品が確認したかったものはまた、僕たちが一番、遥かに希求し続けている、「見守ること」「小さく関与すること」「黙っていること」「一緒に哀しみを引き受けること」、つまり当たり前のことなのだが、この世界でもっとも困難になった立ち振る舞いだということではないのか、と思えるのだ。
33 トラックバック
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「ニライカナイからの手紙」 ★★★
(2005年日本)
監督:熊澤尚人
脚本:熊澤尚人
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⇒ ニライ
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- <ニライカナイからの手紙> (楽蜻庵別館)
- 2005年 日本 113分
監督 熊澤尚人
脚本 熊澤尚人
撮影 藤井昌之
音楽 中西長谷雄
出演 安里風希:蒼井優
安里尚栄:平良進
内盛海司:金井勇太
レイナ:かわい瞳
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2005年 日
監督: 熊澤尚人
出演: 蒼井優 / 平良進 / 南果歩 / 金井勇太 / かわい瞳 / 比嘉愛未 / 斎藤歩 / 前田吟
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ホントすごいですよ蒼井ちゃん{/ee_3/}
なん...
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そんなストックの中から、昨晩観た映画がコレ。
熊澤尚人監督の「ニライカナイからの手紙
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- DVD「ニライカナイからの手紙」 (日々のつぶやき)
- 監督:熊澤尚人
出演:蒼井優、平良進、南果歩
「風希が七歳の時に東京に行ってしまったお母さん。それから一度も沖縄に戻ってくることはなく、毎年誕生日には手紙が届く。何か事情があるんだとは解っていても一度でもいいから会いたいと願う風希は写真の勉強をしに、
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純粋にいいです。
じ〜〜んときます。
泣けます。
島に行きたくなります。
- ニライカナイからの手紙 (つれづれおきらく)
- 蒼井優。
予想どおりの結末、だけどなんかジーンとしてしまいました。
やっぱりそれは蒼井優だからなんでしょう。
この人はやっぱり言葉では説明できない不思議な魅力がありますね。
「優しくてとってもいい子なんだけど不器用で実はけっこう芯の強い頑張り屋さん」という...
- 【DVD】ニライカナイからの手紙 (新!やさぐれ日記)
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■感想
"思いやり"に満ちた映画
■満足度
★★★★★☆☆ なかなか
■あらすじ
沖縄の竹富郵便局長・尚栄(平良進)の娘・昌美(南果歩)は幼い子供を残して東京で働いている。1年に1回、東京から届く母の手紙を楽しみにしている風希(...
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また、こちらにも立ち寄らせていただきます。
どこを向いても、正義を振りかざしての自己主張ばかりですからね。
疲れてしまいます。
とても暖かい話でよかったですね。沖縄の小さい島だからこそ、嘘を突き通すことが出来たのでしょう。
「うつぐみ」という言葉、素敵ですね!!
ニライカナイいいですよねぇ。
蒼井優ちゃんが好きですし繰り返しみたくなる映画のひとつです。
ああ、「うつぐみ」という言葉、いい言葉ですね。
>最強味さん
蒼井優は、たぶんすべての作品(チョイ役も含めて)観ましたけど、ユニークです。最近、つまんないCM出ているので(蒼井キャラの無遠慮な消費)、心配で、しょうがないですよ(笑)
以前から行ってみたいと思っていたのですが、『ニライカナイ』を見て、竹富島に行きました。
風希がそこにいるようでした。
また、いつかゆっくり滞在したいと思いました。
小さい島ですけどね。
独特の雰囲気が、まだ残っているんでしょうねぇ。
ストーリーにピッタリだなぁ、って思いました。
母に、そして島のみんなに見守られながら
だんだん成長していく様子が、とても良くて
見ていて良い気持ちなれました。
竹富島の風景も、ほんとに綺麗で、いつか行って見たいなぁ、って思いました。
TBどうもありがとうございましたm(_ _)m
こちらからもさせていただきました♪
人生は暇つぶしことtakesi626です。
久しぶりにこの映画を観たくなるような感想ですね。素晴らしいです。
僕はこの映画を観て竹富に行こうと思い、現にもう3回行ってます。今では竹富島だけでなく石垣島などに地元の友達ができるほどです。
竹富島含め八重山は本当に良い所なのでぜひ行ってみてください。
僕も、蒼井優が大好きですが、この映画の彼女は、とても、印象深かったです。はまり役。
お願いですから、つまらないCMで、彼女を1パターンに当てはめないで下さい(笑)
映画がきっかけになって、いいことですね。
僕も、ながらく、訪れていませんが、あんまり俗化されていないことを願っています。都会人の勝手ですけどね(笑)
随分前ですが、TBありがとうございました。
ブログを読ませて頂いて、「なんでこの映画を見てすごく切なくて、温かい気持ちになってりしたのかな」というもやもやの核心に触れることが出来た気がします。
うつぐみ・・・なるほどなあ・・・。
また素敵なレビュー楽しみにしています。
蒼井優は好きです.
この映画では,監督と南果歩と蒼井優による「風希」の造形に感動しました.この少女の実在感が,観客を引き込めた最大のポイントだと思います.
もう一つのポイントは皆さんご指摘の竹富島そのものですね.
風希の嘆きを癒す島人の列が,印象的でした.
ちょっと、沖縄本島でもなりたたないお話ですね。
蒼井優はそれまでも評価されていましたが、この映画で本当に自立したなあ、と思いました。
TBありがとうございました。
この映画を観て、竹富島に行きたくなりました。
美しいですね〜。
そして、みなさん書かれている通り蒼井優もすごくよかったと思います。
心が洗われる映画でした。
でも、近くの小浜島も含めて、このところ、ゴミの漂着が多いようですね。島には、焼却施設がないですから、その処理にほとほと困っているようです。
あたりまえのモラル問題なんですけどねぇ。
TB有難うございました。
悲しいお話ですが、心暖まる良い映画でした。
それに蒼井優さんがとても可愛らしかったですね。
竹富島にも行ってみたくなりました
それと、kimion20002000さんのブログをブックマークさせてもらっても良いでしょうか?
おじさんブログでよければ(笑)いつでもブックマークください。
「うつぐみ」、私は正直な所、息苦しさを感じてしまいましたが、島で生きる方々にとっては大切な理念なのでしょうね。
沖縄の美しい風景だけを描いた薄っぺらな作品とは違い、民衆性を少しだけ感じる事が出来たような気がします。
もし、都市の中で、「うつぐみ」的な扶助の精神を持ちうるとしたら・・・と、よく考えることがあります。
「うつぐみ」とても温かいですね。
ずっとつき通す嘘が辛く思う時もあったと思うのですが、風希のために・・グッとこみ上げてきます。
ああいう島であったからこそ、成立する、共同観念でしょうね。
コメント&TBありがとうございました。
この映画を観てからやや経っていますが
こめんとのおかげで思い出し、
思いだすだけで切なくなりました。
いい話でした。
確かにこの話、伝達手段は”手紙”以外では成り立ちませんね(^^;
手紙、書きたくなった私は単純かも
しれません(*^^*)
僕もしばらく自筆の手紙を書いていませんね。
年賀状や、はがきでさえも。
いかんなあ、と思います〈笑)