気まぐれ翻訳帖

ネットでみつけた興味深い文章を翻訳、紹介します。内容はメディア、ジャーナリズム、政治、経済、ユーモアエッセイなど。

利害関係者を次々と雇用する米テレビ局

2016年10月29日 | メディア、ジャーナリズム

前回に引き続き、CNNその他の米テレビ局の報道をめぐる文章です。

CNNは、保守寄りのフォックス・ニュースから視聴者を奪還しようと共和党の元選挙幹部を次々と採用しています。
つまり、最初から共和党支持者であったり、保守的な思想の持ち主であることが予想できる人物を、です。

しかし、問題はCNNだけにかぎりません。他のテレビ局も政治家の元選挙幹部、企業のロビイストなど、利害関係を有する人物を次々と雇い入れています。視聴者には、そういう特定の党や企業と利害関係を有することを知らせずに、です。

つまり、今回も、アメリカのメディアの憂うべき現状を報告するもの。


原文のタイトルは、
CNN's Revolving Door of Political Hackery
(CNNが元選挙幹部を次々と採用)

例によって、非営利のオンライン・メディア『Truthout』(トゥルースアウト誌)から採りました。
書き手は Michael Corcoran(マイケル・コーコラン)氏。

原文はこちら↓
http://www.truth-out.org/news/item/36898-cnn-s-revolving-door-of-political-hackery



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CNN's Revolving Door of Political Hackery
CNNが元選挙幹部を次々と採用

2016年 7月20日 水曜日
マイケル・コーコラン / 『トゥルースアウト』誌 / ニュース分析


6月の終わり、CNNがコーリー・ルワンドウスキ氏を雇ったことについて、広く憤懣の声が聞かれた。同氏はドナルド・トランプ氏の選挙参謀の地位をほんの4日前に失ったばかりだった。
同氏は問題のある人物である。それは、単に同氏が偏見と恐怖をあおる選挙運動を陣頭指揮していたことに由来するだけではない。今年の3月には、ある記者との身体的接触にからんで軽度の暴行罪で訴えられていた(後に不起訴となったが)。
また、CNNにおける同氏の役どころは、たとえ無価値ではないにせよ、明らかに限られている。なぜなら、報道によると、同氏は守秘義務契約書にサインしており、トランプ氏に批判的な発言をすることや選挙運動中のトランプ氏のふるまいについてうんぬんすることは禁じられているからだ。

CNNの社員たちは憤激したと伝えられている。しかし、結局、1週間も経たないうちに、新顔のルワンドウスキ氏は、あるテレビ番組に登場し、自分の立場を利用して、トランプ氏の披露した偏狭な見解の一つをあれこれと言いつくろって擁護した。
トランプ氏について批判的な言葉を一切言えないコメンテーターをどうしてCNNが雇う気になったのか、読者はふしぎに思われるかもしれない。しかし、それは、CNNを右寄りにするというCNNワールドワイド社長のジェフ・ズーカー氏の意向に沿ったものだ。
この件に関しては、フォックス・ニュースでさえ倫理的に「上位の立場」を採った。すなわち、同社は、CNNと今回の雇用の決定を少なくとも2回、口をきわめて非難した。

けれども、ルワンドウスキ氏の雇い入れは異例というわけではない。むしろ、CNNおよびその他のケーブル・ニュース各局にとっては、平々凡々の出来事である。
米国の選挙を報じるにあたっては、CNNおよびそのライバル各局とも、コメンテーター役を政治家の元「傭兵」たちに大きく依存している。テレビ局はまた、現役の企業ロビイストたちもよく雇い入れる。彼らの潜在的な利害相反は問題視されず、それに関する情報はめったに告知されない。

われわれが今直面しているのは、選挙運動、メディア、企業ロビイストを渡り歩く「政治傭兵」たちの「回転ドア人事」である。2016年の選挙運動の最終段階に突入しつつある今、この回転ドア人事のドアはすさまじい勢いで回っている。とりわけ、共和党の関係者がCNNに入る動きはめざましい。
このように、政治関係者や企業ロビイスト等への依存度の高さが、選挙報道に実質的中身が往々にしてひどく欠ける理由の一つになっている。

この「政治傭兵」たちの「回転ドア人事」は、主流派メディアの信頼性をいっそう傷つけることによって、一般市民の利益に反するものとなる。主流派メディアはすでに数々の体制的な偏向のせいで有用性を減じつつあるのにだ。
大統領選挙運動の期間中に報道機関がこのような採用をおこなうおかげで、報道は短期的な競馬予想に等しいものに変じ、政策が一般市民に(もちろん環境にも)どのような影響をおよぼすかに関する議論がほとんど無視される事態をさらに助長している。
また、コメンテーターたちは友人や以前の上司たちのサクラとしてふるまうことができる。さらに悪質なことには、同様のことを機敏なロビイストは目下の雇用主のために実行できる。しかも、通常その辺の事情を明らかにせずに、である。

この事態は、その上、メディアにおけるこれまでの多様性の大幅な欠如をいよいよ悪化させる働きをしている。ワシントン政界の住人だけに議論を制限し、組合活動家や市民運動家はもちろん、学者でさえも議論から排除しているからだ。ルワンドウスキ氏の雇用は、この点でも、異例のことではさらさらなかった。


[ルワンドウスキ氏雇用に対する反発]

ルワンドウスキ氏の雇用は、当然のことながら、多くの人々にとって悩ましい問題であった。同氏の暴行罪の嫌疑-----トランプ氏は精力的に同氏を擁護したが-----とは別に、ルワンドウスキ氏は、ここ半世紀の間アメリカで例がなかった、もっともあからさまに偏狭な選挙運動を指揮した人物である。「大統領選挙におけるトランプ氏の奇体な取り組み方を熱烈に擁護する人間」とニューヨーク・タイムズ紙は評した。それも、「共和党の多くの議員が、発言をソフトにし、もっと従来通りの手法を採用するよう強く要請している」にもかかわらず、である。

契約上、当該の候補者を批判できず、その候補者の下で働いていた期間の出来事を話題にすることもできない、憤懣を内にかかえた元トランプ陣営の人間を雇うことに、CNNはいったいどんな価値を見出しているのだろうか。
ルワンドウスキ氏は実質的にトランプ氏の代弁者にすぎないであろう、ちょうど同氏がトランプ氏の下で働いていた時そうであったように。ただ、今では、同じことをするのにCNNから棒給をいただくわけである(一方では、トランプ氏から解雇手当を受け取るであろう)。「メディアの歴史上、これほどの利益相反は聞いたことがない」とトーク・ショー『ヤング・タークス』を主催するジェンク・ユーガー氏は語った。

左派陣営からの反感はもちろんのことながら、ルワンドウスキ氏は、観念上のもう一方の極、右派陣営からもきらわれている。
「トランプ氏は同志や献金者、さらには自分の子供たちからの懸念の高まりに直面している。ルワンドウスキ氏はこれまで国政レベルの選挙にかかわった経験がなく、はたしてクリントン候補との闘いをうまく切り盛りできるのか、という懸念だ」。こうニューヨーク・タイムズ紙は6月20日に報じた。共和党全国委員長のラインス・プリーバス氏も同じ懸念を共有し、トランプ氏に次のように語った。「党全国委員会とルワンドウスキ氏との関係は険悪になりつつあった。何らかの変化は歓迎だ」。

ルワンドウスキ氏の解雇がワシントン政界の住人に支持されたことと、その後のCNNによる同氏の採用がかなり批判的な反響を惹起したことは、おそらく偶然の一致ではない。
USAトゥデイ紙は、ある記事で、この雇用を「身の毛がよだつ」と評した。また、スレート誌では、ルワンドウスキ氏のことを「評論家兼ゴロツキ」と形容している。上で述べたように、フォックス・ニュースでも2人のキャスターがCNNの雇用を非難した。すなわち、ハワード・クルツ氏はそれを「遺憾なこと」と表現し、メーギン・ケリー女史はルワンドウスキ氏を「複数の記者を威嚇」し、女性について「きわめておぞましい」発言をした人物と述べた。
『ヤング・タークス』の主催者ジェンク・ユーガー氏とフォックス・ニュースのキャスター2人の意見が一致するなどめったにないことである。CNNは今回そういう稀有な事態を成就させたのだ。


[クビになった共和党関係者と熱烈なトランプ支持者を求めて]

ルワンドウスキ氏の雇用は破廉恥なこととはいえ、それは前代未聞の出来事というわけでは皆目ない。CNNは右方向に進路を定める中で、最近クビになったばかりの共和党の選挙幹部、あるいは、特定の保守派候補に入れあげている人間などをめざましいペースで採用していた。

たとえば、アマンダ・カーペンター女史だ。
女史は2015年の7月にテッド・クルーズ氏の広報責任者としての職を辞し、それから約2ヶ月後にコメンテーターとしてCNNに採用された。女史の仕事とは、実質上、選挙運動期間中にクルーズ氏を擁護することだった。彼女はまさしくあらゆる機会においてクルーズ氏を持ち上げ、また、候補者討論会の後では、きまって同氏に対する批判を別の話題にそらした。

カーペンター女史のとめどないクルーズ氏擁護は、しかし、色褪せる運命だった。
7月6日、ルワンドウスキ氏をめぐる騒動からほんの2週間ほどしか経っていないのに、CNNはスコッティ・ネル・ヒューズ女史を番組に招き、新たな火種を作った。同女史のあからさまなトランプ氏擁護は、どんな言い訳も通用しないはずのふるまいにもおかまいなしで、あまりにも漫画じみており、著名なバラエティー・ショー『サタデー・ナイト・ライブ』で女史をからかう一場が制作されるしまつ。トランプ氏の選挙スタッフとして正式に働いた経験は女史にはないが、そうであっても少しもおかしくない。言わば「ワン・トリック・ポニー」(一つの芸当しかできない子馬)としてテレビ番組にしょっちゅう登場し、あらゆる機会をとらえてトランプ氏を弁護する。キャスターのウォルフ・ブリッツァー氏に対して、共和党全国大会での暴動騒ぎを「必ずしも悪いことではない」とさえ述べるほどだった。

自分をからかう『サタデー・ナイト・ライブ』の一場によって「ばつの悪そうなトランプ擁護者」の烙印を押されてしまったことも何のその、それ以降もずっと女史はその烙印通りのふるまいをやめなかった。
7月3日には、ゲストとして臨席し、トランプ氏がツイッターで反ユダヤ的なマークを使用したことを弁護した。そのトランプ氏擁護の試みはあまりに理を欠いているので、意見を聞いた側のキャスターであるブリアナ・ケイラー女史はいら立って、侮蔑の表情を抑えきれなかった。

この時のもようは幅広く嘲笑の的になった。ワシントン・ポスト紙のエリック・ウェンプル氏は「見るにしのびない」と述べた。
さて、CNNは、これらのみっともないやり取りをどう後始末したのか-----なんと翌日、彼女を正式に採用したのである! ウェンプル氏の軽口を借りれば、「CNNの経営幹部は何が何でもキャスターをいたぶるつもりだ」。ヒューズ女史自身は、正式な採用についてツイッターに「今日は自分にとってトンデモなくビッグな発表が!」と記した(現在は削除されている)。
しかし、この人事の決定をめぐっては、不可思議の感はいっそう深まるばかりである。


[フォックス・ニュースに勝とうとするCNN]

CNNはどうしてまた保守派の元選挙幹部をこれほど熱心に採用しようとするのだろうか-----なかんずく、トランプ氏の好戦的な擁護者を。その手のコメンテーターが不足しているとはとても思えないのに。上に挙げたつい最近の採用者のほかに、CNNはすでに熱烈なトランプ支持者を雇い入れている。カイリー・マッケナニー女史やジェフリー・ロード氏だ。

マッケナニー女史はテレビ番組の中でトランプ氏をずっと称えてきた。CNNコムに掲載する文章でも同様だ。一方、ロード氏は最近、トランプ氏が大統領になった場合の美点をつづった書籍を上梓したばかり。トランプ氏の擁護に関しては、マッケナニー女史よりもはるかに過激だ。ロード氏の同僚の一人はワシントン・ポスト紙の取材に対してこう答えている。彼の仕事は「日々、トランプ氏の恭順な下僕として仕えること」だ、と。トランプ氏はクー・クラックス・クラン(KKK)およびその元幹部のデビッド・デューク氏から距離を置くことを拒否したが、ロード氏はその点も擁護した。その結果、一騒動が持ち上がり、ニューヨーク・タイムズ紙が記事に取り上げるまでになった。オンライン・ニュース・メディアの『デイリー・ビースト』は、「選挙報道で自分をもっと大きくあつかうようトランプ氏がCNNに求めた」とロード氏がおおっぴらに語るのを伝えている。

それでもなおCNNはトランプ支持派を雇おうとしている。しかし、CNNが目指す方向についてのズーカー氏の公の発言を考慮すれば、事情はより鮮明になるであろう。同氏は5月初めにウォール・ストリート・ジャーナル紙に次のように語った。「CNNがリベラルに傾きすぎているというのはもっともな批判だ」。だから「中道保守の人士をさらにいっそう増やした」、と。

CNNがリベラル寄りだとズーカー氏が本当に信じているかどうかは別として-----実際は怪しいものだが-----、同氏がCNNを保守寄りにしようとすることについては、はっきりした営利上の動機がある。「CNNは保守的なフォックス・ニュースの視聴者をのどから手が出るほど欲しがっている」と、ワシントン・ポスト紙は報じた。フォックスの視聴者が他の人々よりもはるかに世の中の事情に通じていないことは種々の調査で明らかになっているが、しかし、高齢化の進む彼らがフォックスにしがみついている事実は疑いようがない。もう何年もの間、フォックスはCNNやMSNBCとの視聴率合戦でたびたび勝利を収めてきた。そして、一方、米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターの2014年の調査によると、CNNの視聴者の中では、保守派の存在が「幾分影が薄い」。

こうした事情が、ルワンドウスキ氏、ヒューズ女史、カーペンター女史、その他多くの保守派コメンテーターをCNNが雇い入れる理由の一部を説明してくれる。
CNNが会社を挙げて右寄りに舵を切ろうとしていることは、同社が主催した候補者討論会にもうかがえる。米メディア監視団体の『FAIR』の指摘によれば、共和党候補者への質問役として、CNNはムーブメント・コンサーバティブ(訳注: 妥協を忌避する保守派の草の根活動家)の一人であるヒュー・ヒューイット氏を右派陣営から招いた。斬新なやり口である。ところが、民主党候補者の討論会の予定が組まれた時は、「断固たるリベラル派」の存在は「あからさまに空白であった」。

もう一つ斬新な点は、CNNがフォックスの視聴者を取り込むべく右に傾く中で、同社が頼りとしているのがめっぽうな数のトランプ支持者だということである。これはフォックス視聴者の取り込みの上で、巧妙なやり方と言えるかもしれない。フォックスはまぎれもなく保守系のテレビ局である。しかし、トランプ氏とはいろいろな摩擦を起こしてきた。その原因のうちで特に知られているのは、トランプ氏がキャスターであるメーギン・ケリー女史の生理を示唆する発言をしたこと、および、フォックス主催の討論会への参加を見合わせたこと、である。フォックスの視聴者が長年の固定ファンであることを考えれば、保守的なトランプ支持者にCNNがねらいを定めるのは、フォックスとの差別化を図る上で、賢明な戦略と言えるであろう。「CNNはフォックスよりも私を好意的にあつかってくれる」。トランプ氏は、あるフォックスの取材に対し、こう答えている。

本サイトはCNNにこの件に関してコメントを求めたが、期限内には返事をもらえなかった。


[MSNBC自身の回転ドア人事]

CNNはルワンドウスキ氏雇用の件ですさまじく叩かれたが、MSNBC自身が同氏の雇用をまじめに検討していたことはあまり話題にならない。MSNBCは、ルワンドウスキ氏がトランプ陣営を離れてから直接同氏と話し合ってさえいる。であるから、CNNの雇用手法がいかにおぞましいものであろうと、他のテレビ局を無罪放免とするわけにはいかない。確かにフォックス・ニュースは長年共和党の御用機関と化していた。しかし、MSNBCにしたところで、このような回転ドア人事に無縁であったわけではない。

CNNはルワンドウスキ氏を雇うのに3日ばかり待ったが、MSNBCはそれと同じぐらいの短い期間で、テッド・クルーズ氏の元幹部を雇った。すなわち、クルーズ氏が広報責任者であるリック・タイラー氏の解雇を発表して4日後にMSNBCは同氏を正式雇用したのである。タイラー氏がクルーズ氏から解雇された理由は、マルコ・ルビオ議員をめぐる誤った噂の流布を手助けしたとされ、それが元で騒ぎが持ち上がったからである。こういう経緯がありながら、MSNBCはタイラー氏を雇うのにぐずぐずしなかった。同氏はその後、自分の出演時間を、トランプ氏を批判することとルビオ議員に立候補を取りやめるよう勧めることに費やした。

タイラー氏は、「政治傭兵」の回転ドアを通じてMSNBCに職を得た最初の人物ではない(おそらく最後の人物でもないであろう)。
タイラー氏の前には、たとえば、カレン・フィニー女史がいた。女史は、ヒラリー・クリントンが大統領夫人であった時、その報道担当官であったし、ほかにもワシントン政界においてさまざまな役割をはたした。そうして、このような忠実な民主党員でありクリントン臣下として長年奉公した後、今度は長期に渡ってMSNBCのコメンテーターとなり、ついには自分の名を冠した番組を(短時日ではあれ)まかされるまでになった。MSNBCにおけるその5年の経歴の間、女史は絶えずクリントン夫妻を擁護した。彼女はかつてクリントンに仕えていたし、近いうちに再びまた仕えるであろう(現在、ヒラリー陣営の選挙対策幹部である)。こうした人物が、クリントンの名がニュースで言及される際に、客観的な意見を述べる識者としてどうして信頼することができよう。

今、本稿を執筆している時点で、フィニー女史のかつての番組『カレン・フィニーと掻き乱せ』のホーム・ページには、クリントン氏の著作からの抜粋が麗々しくかかげられ、女史が共和党の非難に対し同氏を擁護する動画が貼りつけられている。もちろん、フィニー女史が、共和党によるほとんど無根拠のクリントン批判のいくつかをとがめるのは、多くの場合、至当なことだ。けれども、保守派が女史の利益相反に目をつけるのも、これまた驚くべきことではあるまい。保守派陣営は、少なくとも30名の人士がオバマ政権からMSNBCあるいはMSNBCからオバマ政権へと移動したとすかさず指摘した。このような動きはジャーナリズムに注意を払う人間なら誰しも危惧をおぼえるに違いない。それは、当該の回転ドア人事が保守派をCNNに送り込むか、民主党支持者をMSNBCに加えるかの違いにはかかわらない。

フィニー女史は、MSNBCに雇われてから以降、トーク・ショーの司会者として共和党を批判し、次には、ヒラリー・クリントンの選挙幹部としてサンダース陣営を攻撃してきた。さて、今から1年後、彼女がMSNBCに返り咲いたとしたらどうであろうか。リベラル派は、彼女がヒラリーを(大統領であろうとなかろうと)、-----もしくはサンダース氏を-----、公正に報道することができるかどうか、どうして信じられるだろう。


[教訓は学ばれたが忘れられた-----ロビイスト・メディア利益共同体は死なず]

クリントン擁護派と言えば、ハワード・ディーン氏もそうで、同氏もまたMSNBCに昨年あたりから頻繁に登場している。出演の際はいつも「クリントン支持者」と紹介されている。まっとうな情報開示である。しかし、問題は、ディーン氏が同時に法律事務所のデントンズから報酬を得ている保険関係のロビイストであるという点だ。こちらの情報はめったに明かされない。ゆゆしいことに、ディーン氏がテレビ番組でヒラリーに代わって国民皆保険制度を批判する時も、この情報は告知されなかった(ちなみに、同氏はほんの数年前まではこの制度の支持者であった)。

このような雇用様式はMSNBCにとって目新しいものではない。
2009年には、ニューズウィーク誌の元記者であるリチャード・ウォルフ氏がコメンテーターやゲスト司会者として同局の番組にたびたび出演し、さまざまな問題について意見を披露した。ここでも問題は、同氏がPR企業のパブリック・ストラテジーズ社で働いていたことだ。同社の顧客には、ロッキード・マーティン社や米国商工会議所などが名を連ねている。おぞましいことに、同社はそのホーム・ページでウォルフ氏を紹介するにあたり、同氏とMSNBCとの親密な関係をほこらかに謳っている。MSNBCは、幾人かのジャーナリストや市民活動家が論難するまで、この利益相反の事情を明らかにしていなかった。その点を突いたジャーナリストの一人はグレン・グリーンウォルド氏である。同氏は、MSNBCは実質上「毎晩1時間を企業ロビイストに譲り渡している」と述べ、また、「報酬と引き換えに企業の傭兵となっている人々」を公正なコメンテーターとして紹介していると厳しく非難した。

MSNBCはウォルフ氏をコメンテーターとして起用し続けたものの、結局みずからの落ち度を認め、パブリック・ストラテジーズ社と同氏の関係を告知するようになった。ウォルフ氏は2012年に『MSNBCコム』の常勤編集者になったが、同氏のツイッターから判断すれば、現在はその地位を離れているようだ。
一方、ハワード・ディーン氏とMSNBCは、依然としてその不埒な協力関係を維持している。まるでウォルフ氏の件がなかったかのようだ。
このような関係はむろんディーン氏とMSNBCだけにかぎらない。上でもふれた『FAIR』が2013年に発表した報告書でも、テレビ局や政党の間に深く浸透している。『FAIR』が挙げる、ロビイストとして働きながら(この事実を告知せずに)コメンテーターとしてもテレビに出演している人物は、たとえば、NBCのマイク・マーフィー氏、CNNのステファニー・カッター氏、同じくCNNのデビッド・アクセルロッド氏(以前はMSNBC)、2015年まではMSNBCで働いていたロバート・ギブズ氏(現在はマクドナルド社)、などなど、である。

本サイトはMSNBCに対してもこの件に関してコメントを求めたが、期限内に返事をもらえなかった。

ロビイストをめぐるこの問題は、もう何年もの間、目に余るものとなっている。
2010年にネーション誌は『ロビイスト・メディア利益共同体』と題する調査の結果を明らかにした。それによると、3年に満たない期間で「少なくとも75名の登録ロビイスト、PR企業代表者、企業幹部など(彼らは当該の企業や業界団体からその対外的イメージの構築をまかされ、財政的、政治的利益の増進を図ることで報酬を得ている)が、自分たちに報酬を払う企業とのつながりを明かすことなく、MSNBC、フォックス・ニュース、CNN、CNBC、フォックス・ビジネス・ネットワーク、等々に出演していた」。

ネーション誌のこの調査は、かかる共犯関係が実質上あらゆるテレビ局に見出されることを明らかにした。すなわち、回転ドア人事は単に「政治傭兵」たちとメディアの間だけでなく、企業ロビイストとメディアの間にも行われているのである。


[回転ドア人事のドアが回り続ける理由]

この回転ドアという比喩は通常、政治家がしばしば公職を辞して企業ロビイストに転じる現象について使われる。これは昔からずっと問題であった。しかし、現在、メディアがこの回転ドアのまた別の出口となったことは、問題をさらに複雑にする。米国民は企業ロビイストや政治家のふるまいを判断する上で、各メディアを頼りにすることができると考えられている。ところが、今や、これら3つの世界は、ジョージ・オーウェルの『動物農場』における豚たちと同様、ある意味で見分けがつかないようになってしまった。

こうした次第で、回転ドア人事のドアは静止することがない。その結果、放送メディア(いまだに米国民の大多数がこれらからニュースを得ている)は、個人的、政治的あるいは当該企業のもくろみを胸に秘めた、特権的な人物たちの「安息の地」となっている。これは、メディアの大半がごく少数の巨大多国籍企業によって支配されたことから生じた、派生的な現象である。そして、社会的公正と民主主義の擁護者にとって、メディアの変革がいかに大きな優先課題であるかを如実に物語っている。


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[補足など]

■企業ロビイストの問題と言えば、このブログの以前の回でも、テレビの好戦派コメンテーターが軍需関連企業によって財政的に後押しされているという文章を訳出しました。こちらもぜひ参照してください。

主戦派のコメンテーターを財政的に支える軍需産業
blog.goo.ne.jp/kimahon/e/d7293b6e6bf27ba4df795a95684f01e7


コメンテーターが軍需関連企業からお金をもらって、テレビを通じ、国民に戦争を勧めているのです。
すなわち、
「一般国民に向けて合法的大量殺人が売り込まれている-----巨大軍需企業から莫大な富を得ている一群のサクラたちによって」。
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