単独飛行

ひとり空をゆくように

あの日のコーヒー牛乳

2017年07月14日 | 男と女
 先日母が亡くなって、いろいろ昔のことを思い出した。

 私が小学生の頃、夏休みに母の実家に帰省していたときのこと。
 夕食を食べたあとテレビを見ていると、伯父が「ちょっとドライブ行かんか」と、自分の息子二人と私たち姉妹に声をかけた。

 当時、私の父は転勤族で、マイカーというものを持っていなかったこともあり、日が暮れてからドライブするなんて驚いた。
 といっても田舎で、外の景色と言っても真っ暗ななかに民家の明かりがポツンポツンと見えるくらい。しばらく走ってドライブインに着くと、それぞれジュースを飲んだ。私はコーヒー牛乳。

 帰りのクルマの中も、静かだった。伯父と息子たち(私より少し年上)が、「夜はなんかスピードが速く感じるなあ」などとポツリポツリ話しているだけ。私と妹は黙って外を眺めていた。
 窓からの風が心地よい。夏の田んぼの匂い。四十年以上前は今みたいな猛暑ではなく、夏でも夜は夜らしく涼しかったように思う。

 女の子の感覚では、ドライブというと、にぎやかにしゃべりながら、どこかの景色を楽しむもの。
 真っ暗な何も見えない闇の中を疾走するものだとは思ってもみなかった。
 男の人ってこういうことをするんだなあ。なんで何も見えないのにドライブするんだろう。

 もちろん、帰省していた私達へのサービスだったと思うけれど、女どもがペチャクチャしゃべっている家族団らんを、ほんの一瞬だけ離れて走りたい気持ちもあったのかなと、大人になった今、そんなことも邪推してみる。
 
 叔父は婿養子だった。日中戦争に従軍しており、寡黙な読書家でクルマの運転が大好きだった。
 それから少しして・・・私が高校生の頃この世を去ってしまった。早すぎる死だった。

 あの夜のドライブは、コーヒー牛乳の味とともに忘れられない夏の思い出になっている。


 (天風“あまかぜ” 赤とんぼのエンジン 東京瓦斯電気工業製造)
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