喜久家プロジェクト

日本一細長い半島、四国最西端「佐田岬半島」。 国内外からのボランティアとともに郷づくり「喜久家(きくや)プロジェクト」。

観光振興で「稼ぐ力」をつけよというが…

2017-06-04 | 地域づくり
おもしろい記事を見つけた。

 山下祐介(首都大学東京准教授 社会学)の記事だ。


「観光振興をすればどこでも地方は救われる、そういうことがいえるのだろうか。

 観光コンテンツづくりは儲からない

たしかに観光客が一人でも増えれば、そのぶん地方に落ちるお金が増え、経済は少しばかり潤う。


 しかし、たとえば次のような具体的なケースを考えたとき、
観光振興で稼ぐことがあらゆる地域で率先して取り組むべきものなのかは疑問だ。

 ある地域でお母さんたちのグループが埋もれていた郷土料理に付加価値を付け、
絶品のメニューを開発したとしよう。
それが地域で評判になり、全国放送で紹介された。
それを見て、次の休暇の家族旅行先に悩んでいた東京のサラリーマンA氏が、行き先をそこに決めたとする。



 たしかにA氏の家族がそこに旅行し、その料理を味わったことで、家族4人、1食750円として計3000円がその地域に落ちた。
 お母さんたちはお客さんが来てくれたことを喜び、お客さんも思った以上の料理とおもてなしに感激、
「来年もまた来る」と次の販路が開拓されて人々の交流が始まったとすれば、たしかにここに悪いものは見当たらない。
 だが、筆者にはどうも次のことが引っかかる。

 このお母さんたちの稼ぎ3000円に対し、A氏一家が東京からこの地に来るまでの交通費、
その日の宿泊代、さらにはその間の、例えば朝、新幹線に乗るときに駅で購入した飲み物代や弁当代、
帰りの駅の土産物屋で購入した土産の品々の代金などを考えると、
このお母さんたちの努力がきっかけとなってA氏らはこれらのお金を落としたのにもかかわらず、
お母さんたちに入った金額は微々たるものだ。



 報道したメディアも一見、観光客を善意でつないだように見えるが、それはそれでスポンサーから制作費をもらっている。
むしろこのお母さんたちのおかげで番組ができたとさえいえる。
要するに言いたいことはこういうことだ。

 観光開発はたしかに経済を潤す。

 だがそこで生じた利益の多くは、必ずしもコンテンツを開発した人や地方にではなく、
観光の基盤をなす、交通会社や旅行会社、要するに観光インフラ事業者に落ちる仕組みになっている。

 そしてそうした観光インフラ事業者の多くは東京をはじめ大都市に本拠を置く。
観光振興の儲けのほとんどはそうした業者に落ちる仕組みだ。

 観光コンテンツづくりは基本的には儲からない。
儲かってもたいていの地方においてはそんなに大きな金にはならない。
 むしろ頑張って生まれた利益は、そのほとんどを中央に持っていかれてしまう。」



 
 実は、ふるさとで観光を交えた取組をしたいと考えている。
その理由は「儲け」だけではないのだ。
 それよりもふるさとで暮らす私たちが、訪れてくれた人たちとの交流によって、
楽しさや喜びを感じることができたら、幸せだなと思っている。

 それは、10年間続いている喜久家プロジェクトで十分感じていることなのだ。


                  岬人(はなんちゅう)

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