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ビゼー『交響曲第1番』の名盤

2009年11月10日 16時21分18秒 | 私の「名曲名盤選」




 5月2日付の当ブログに「名盤選の終焉~」と題して詳しく趣旨を書きましたが、断続的に、1994年11月・洋泉社発行の私の著書『コレクターの快楽――クラシック愛蔵盤ファイル』第3章「名盤選」から、1曲ずつ掲載しています。原則として、当時の名盤選を読み返してみるという趣旨ですので、手は加えずに、文末に付記を書きます。本日分は「第26回」です。


◎ビゼー:交響曲第一番

 ビゼーが十七歳の時、パリ音楽院の学生時代に書かれた習作。作曲後八十年を経て発見され、初演された若き日のビゼーの傑作だが、先人の影響が色濃く残っており、若々しい、ビゼーらしい骨格のくっきりした躍動感と、習作的な古典的造型とが同居した特異な曲だ。
 そうしたこの曲の二面性を十全に表現した演奏として、まず挙げられるのはサラステ/スコティッシュ室内管盤だ。くっきりとしたラインの造型的な美しさの中に、躍動感あふれるのびやかさが実現されている。この澄んだ奥行きのある響きは魅力だ。サラステの、若々しくシャープな感性がなし得た演奏。
 小沢征爾/フランス国立管盤は、躍動感よりも、しなやかな流動感に重きを置いた演奏。ゆったりと長めに設定されたフレージングを生かす、控え目なフォルテで貫かれた第一楽章を聴いただけでも、この曲における次項のミュンシュ風アプローチから離れて、新たな像をこの曲で築き上げようとする小沢の意気込みがわかる。最後まで流麗で淀みのない世界から踏み出すことなく聴き通せる美しさが聴きもの。これは意外としたたかな個性的演奏だ。
 この曲のフランス国内初演を若き日に手掛けたミュンシュ/フランス国立放送管盤は、積極性のある前向きな演奏で、弾力的な魅力にあふれている。その分だけ、均衡感への配慮が犠牲になっているとも言えるが、この熱気は貴重だ。少々騒々しいが、この曲を青春の音楽として聴くならば、こうした演奏がスタンダードと長い間言われてきた、代表的な演奏だ。
 ビーチャム/フランス国立放送管盤は、この曲の古典的性格のイメージを決定づけた往年の名演。堂々としたシンフォニックな演奏だが、重々しくなりすぎないところに、ビーチャムの趣味の良さが出ており、バランスのとれた演奏となっている。

《ブログへの掲載にあたっての追記》
 こんなことを言っては叱られてしまうでしょうけれど、久しぶり、15年ぶりに自分の原稿を読んで、教わるところが多々あって、とても刺激になりました。私自身が、今ではこの原稿を書いていた40代半ばからかなりの距離を置いてしまいました。この原稿を書いていたころのような気持ちで「青春の音楽」を語ることは、もうできなくなっていると思い知り、少々寂しくもあり、懐かしくもあり、嬉しくもある旧稿に出会った……といった心境ですが、編集者としての視点で私自身の旧稿を読んでみても、この曲のベストを的確に語っているとは思いました。
 実は、この名盤選の原稿を書いてから、これまでの15年間、この曲の新録音に出会っていないような気がしています。何か、別のすばらしい演奏をご存知の方がおられましたら、ぜひ、コメントをお寄せください。



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コメント
 
 
 
Unknown (Unknown)
2012-11-03 18:25:43
ご著書の「コレクターの快楽」を買おうとしてアマゾンを見たら高価な値段が付けられていたので諦めました。
代わりに、と言っては何ですが、このサイトを愛読させて戴きます。
この曲は、シューベルトの交響曲と同じくらいに好きで、以前、レコードで聴いていたジャン・マルティノン盤が好きです。
しかし、失くしてしまったので、今はビーチャム盤を聴いていますが、春風駘蕩のような感じがして、少し物足りないところがあります。
ミュンシュ/フランスNRPOが元気のよい演奏をしているとのこと。
この曲で、ミュンシュ盤の推薦は初めて知りました。
今度、聴いてみたいと思っています。
有り難う御座いました。
 
 
 
はじめまして ()
2016-04-05 15:08:26
小澤氏のを聴いていますが、素敵ですね。

以前、雑誌で2楽章はリディア調が正しいとかいうのを読んだことがありますが素人なのでよく分かりません。 (^^;
 
 
 
「コレクターの快楽」初版発売時からの愛読者です (hachiro)
2016-04-14 01:11:24
ロンバールとストラスブール・フィルの演奏を特に好んでいますが、おそらくはご執筆時には既に存在していて、意識的に省かれておられた可能性があります。失われたフランスの音を最後まで持ち続けていたオーケストラによる良い演奏でした。その後ビシュコフ&パリ管も登場しましたが、声変わりしてしまったフランスのオケの音に、聞き進むにつれて興味が反比例。フィリップスの好録音もビゼーには似合っていませんでした。
 
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