“からだ”について考えます

私は名も無き一整体師です。日々の実践の中で気づいたこと、大切だと思うことを書いていきます。参考になれば幸いです。

からだの歪みが内臓に負担をかける?

2017年04月29日 | 内臓の働き

 その人は30歳代半ばで、やや痩せている男性です。来店されるなり、内臓の検査データなどをお見せになりからだの不調について説明されはじめました。まだまだお若いのにたくさん不調を抱えておりました。
 「内臓が不調になったので、からだが歪んだのか? あるいは、からだが歪んだ状態が長く続いたので内臓が病変したのか?」
 皆さんは、どちらのケースが多いと思われますか。“操体法”という整体法の産みの親である橋本敬三氏(故人、医師)は「からだの歪みが原因で病変している場合の方が断然多い」という主旨のことを語っております。私は医者ではないので、そのことの真偽について私見を述べることはありませんが、整体師という立場では「からだの歪みを修整することで内臓の働きが戻り、病気が良くなってくれれば嬉しい」と考えています。そしてこの度来店された方に対して、そのように対応させていただきました。

右半身に問題あり‥‥右半身が下がっている
 右の顎関節の開きが悪く、胆嚢の機能が悪く、胃・腸に問題があり、子供の頃からアトピー性皮膚炎で現在も治らず、いびき、無呼吸症候群‥‥、ざっとこんな症状をお持ちで、その他にはコレステロール、動脈硬化の傾向があるとのことでした。子供の頃から一生懸命サッカーをやっており、激しく動いて血流が盛んになっているときは症状が緩和していたことから、普段の血流にも問題があるのではないかと考えておられました。
 からだを見ますと、確かに大きく歪んでいました。上半身が左下の方に、頭から見て左巻きに捻れていて右顎、右鎖骨、右胸が骨盤の左側にむけて強く引っ張られている状態でした。右顎関節の問題は、この捻れによる影響が大きかったです。下顎骨の右側(右のエラ)が下に引っ張れているので、口を閉じるのに余計に力が要ります。ですから右側の咬筋が左側より力を入れて使うように必然的になってしまいますが、その結果右側の咬筋が噛みしめ状態となり顎の開きが悪くなってしまいます。

 また、胸郭が左巻きに捻れていることによって横隔膜の動きは当然悪くなり、腹式呼吸が不十分な状態になっています。さらに、同じ理由で胸郭内の右側、つまり右肺や肝臓も常に圧迫されていることから働きが低下していることが予想されます。胆嚢は肝臓系の機能の一部ですので、ここは厳密に対処しないといけない、と考えました。

 この方に限らず、胸郭の右側が圧迫されて不調を訴える方に対しては、細部にわたって調べ、対応しなければならないと考えています。なぜなら、そこには肝臓があるからです。少し話は難しくなりますが、肝臓は静脈系の臓器です。静脈系ということは自分の力で血液を流すことは苦手であり、心臓のポンプ力も及ばないので、周りの助けによって血液を巡らせなければなりません。
 ふくらはぎが浮腫みやすく“第2の心臓”などと呼ばれることがあるのは、心臓から離れているので心臓のポンプ力は及ばないため、歩くことによって筋肉を動かし、筋肉が収縮と弛緩を繰り返す力(ミルキングアクション=乳搾り)を利用して血液を循環させなければならないからです。静脈やリンパは動脈のように搏動しませんので、その周りの筋肉運動の力を頼りに血液やリンパ液を心臓に向けて進ませる仕組みになっています。
 食べた食物は胃や十二指腸など消化器系によって分解され、小腸で栄養成分として吸収されて血液の中に入ります。その後、その栄養豊かな血液は門脈(門静脈)と呼ばれる静脈を通って肝臓へ送られます。そして肝臓で解毒・分解・合成されてからだに必要な物資として生まれ変わります。血液の中にある余分な糖分はグリコーゲンとして蓄えられ、アミノ酸はタンパク質に合成され、有害物質は解毒され無害化されます。このように肝臓で処理された血液が心臓に戻り、肺でガス交換された後、動脈血となって全身に送られる仕組みになっています。ですから肝臓の働きが悪くなりますと、新陳代謝に必要な物質が欠乏してしまうことになります。その状態が続きますと、やがて私たちはからだを正常に維持することができなくなってしまうのです。

 さて肝臓は静脈系ですから、周りの力を借りて血液を循環させています。門脈を通って肝臓に入った血液は、肝臓の中の細かい道(毛細血管)に枝分かれします。それは、川が小川に分かれ、小川がさらに細かいチョロチョロの流れに分かれ、水の流れがとてもゆっくりになるのと同じです。とても細いところをゆっくり流れる水は岸辺の草や水中の石や微生物の作用を受けて浄化されます。浄化された水は再び合流して小川となり、やがて本流に合流しますが、その時には川の水はすっかりきれいになっています。肝臓における処理もこれと同様だということです。
 ところで、細い川の流れが滞るとどうなりますでしょうか。水はゆっくりでも流れていれば“浄化”に働きますが、水溜まりのように流れがなくなってしまいますとやがて“腐敗”し悪臭を発生するようになってしまいます。ですから肝臓内の血液は流れが停滞してしまってはいけません。うっ血状態になってしまっては病気になってしまう可能性が高まります。

 肝臓は横隔膜のすぐ下の右側に位置しています。ですから腹式呼吸による横隔膜の運動は肝臓内の血流に影響力があると考えることができます。腹式呼吸では、息を吸ったときに横隔膜が収縮して胸が拡がり腹部が圧迫されます(お腹が前にでる)。つまりこの時肝臓は横隔膜と他の臓器に挟まれて圧迫をうけます。次に呼気(息を吐く)の時は横隔膜が弛緩して腹部がゆるんで拡がります。それまで圧迫を受けていた肝臓は解放された状態になります。呼吸運動に合わせて行われる圧迫と解放の繰り返しはミルキングアクションです。ふくらはぎの血液が少しずつ心臓に向かった進むように、肝臓内の毛細血管にある血液も少しずつ前進します。ですから肝臓にとって横隔膜の運動はとても大切ですし、肝臓が位置している胸郭(肋骨)の状態も大切だと整体的には考えることができます。
 胸郭が捻れていて肋骨が常に肝臓を圧迫しているような状態は、肝臓の力を弱めてしまうと考えられますが、この方の上半身の捻れは正にそのような状態であったと言えます。

腹直筋と外腹斜筋と内腹斜筋
 私たちが会話で普通に話している「腹筋」には、正確には四つの筋肉があります。腹筋の発達した人のイメージは「お腹の筋肉が割れている」なのかもしれませんが、その筋肉が腹直筋です。その他に、筋線維がお腹を斜に走る外腹斜筋、内腹斜筋、そして横に走る腹横筋があります。さらに施術的観点では、腹直筋は中心から3つのラインに分けて考えます。

 そして、右半身の肋骨下部から上腹部にかけて、つまり肝臓に直接関係する運動を整えようとするとき、右側の外腹斜筋と腹直筋の一番外側のラインの状態は一番気になるところです。
 右半身の外腹斜筋がこわばった状態ですと、胸郭を(頭部から見て)左巻きに捻り下げますので、肝臓は肋骨によって圧迫された状態になってしまいます。あるいは左半身の内腹斜筋がこわばった状態でも同じような状況です。
 胸郭(肋骨)は歪んだ状態ですので、肋骨を足場に運動している横隔膜の動きも当然悪くなってしまいます。
 腹直筋の外側ラインがこわばった状態ですと、息を吸う時、胸郭を上げることができなくなってしまいます。つまり息をたくさん吸い込むことができません。これは腹式呼吸が中途半端な状態になっているということですが、肝臓に対するミルキングアクションが不十分になってしまいますので、肝臓内の血流が停滞気味になってしまう可能性が考えられます。

 外腹斜筋、腹直筋以外の問題で肝臓や胃を圧迫していたり、ミルキングアクションが不十分になっていることも当然あります。
 しかしながら肝臓(や胆嚢)機能のことを優先して考えた時には、この右半身の肋骨下部と上腹部の筋肉の状態は細心の注意を払って観察し、厳密に整えなければならないと私は考えています。

 ところで、この男性は右半身の外腹斜筋と腹直筋、左半身の内腹斜筋に根強い問題がありました。そしてその原因を追究していきますと、両足の指に根本的な問題点が見つかりました。おそらく子供のころから打ち込んでいたサッカーによる影響だと思います。
 現在、海外にお住まいなので次の来店がいつになるかわかりません。日々自分でできるセルフケアをアドバイスしましたが、「上手くやってくれてればいいけど‥‥」と思っています。

整体的な観点でも
 もう長くお付き合いしている方々には、「胃の調子が悪くて」とか「むくみが強いので腎臓かしら」など内科的症状や、時には「歯が痛くなって」という症状で、私のところに来られる人もいらっしゃいます。
 私は整体師ですので、筋骨格系を中心にからだを整えるのが仕事です。薬のことは全く分かりませんし、血液検査の数値を言われてもほとんどわかりません。ですが、実際、からだだけを見て整えていきますと胃腸の痛みや不調、歯痛他、いろいろな症状が自ずと消えていくことがあります。

 ですから「長年、医師の治療を受けているが症状の改善が思わしくない」と感じられていらっしゃるようでしたら、一度ご来店いただければと思います。整体的な観点では「どう捉えるのか?」ということを知っていただくだけでも意味があるかもしれません。

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