対話とモノローグ

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速さと遅さ2

2017-11-15 | 楕円幻想
ケプラーの「遅さ」に着目した展開を確認した後、「速さ」に着目した展開を示そう。

ケプラーは離心円の弧HH´とII´が等しいとして、所要時間hh´とii´の比が、AHとAIの比に等しいことを導く。
山本義隆は次のように整理している。(弧のHTML表示はできないようである。⌒HH´は、弧の記号⌒が文字HH´の上にあるものとして読んでください。)
 
(引用はじめ)
図で、C(等化点)が白い円の中心、Bが黒い円(離心円)の中心でACの中点であることに注意して、
⌒hh´/⌒HH´= Ch / CH , ⌒ii´/⌒II´= Ci / CI ,
⌒HH´=⌒II´ ,Ch / Ci
∴ ⌒hh´: ⌒ii´= CI : CH AH : AI
他方、等化点Cを中心とする円hh´ii´上の円弧長の比はCを中心とする角度の比であり、したがって所要時間(⊿t)の比になる。ところがこの場合、弧HH´と弧II´の長さが等しいゆえ、所要時間のこの比は「遅さ」の比、つまり「速さ(v)」の逆数の比であり、それが真太陽からの距離に等しい、
1/vH:1/vI=⊿tH:⊿tI=⌒hh´: ⌒ii´= AH : AI
すなわち、遠日点と近日点では惑星の速さは太陽からの距離に反比例する。
(引用おわり)
「速さ」に着目した展開を示そう。
ここでは所要時間hh´とii´が等しいとして、離心円の弧HH´とII´の比が、1/ AH と1/ AI の比に等しいことを導く。図は次のようになる。これは「遅さ」の図と比べれば、白線h´H´CをCで屈折させることなく直進させ、等化円と離心円の交点をi´、I´としたものである。

⌒HH´/⌒hh´= CH /Ch , ⌒II´/⌒ii´= CI /Ci ,
⌒hh´=⌒ii´ ,Ch / Ci
∴ ⌒HH´: ⌒II´= CH : CI
時間を一定にしている(⌒hh´=⌒ii´)から、左辺は「速さ」の比を表している。右辺は、等化点から惑星までの距離を表している。式は「近日点と遠日点の速さは、等化点から惑星までの距離に比例している」ことを表している。
vH:vI CH : CI
Bは離心円の中心で、ACの中点である(離心距離の二等分)から、
CH AI CI AH だから、
vH:vI CH : CI AI : AH = 1/ AH : 1/ AI
すなわち、遠日点と近日点では惑星の速さは太陽からの距離に反比例する。

ケプラーは「遅さ」に着目して、
1/vH:1/vI AH : AI
を示した。
ここでは「速さ」に着目して、
vH:vI= 1/ AH : 1/ AI
を示した。
「遅さ」の方が「速さ」より遠まわりしているように思われるが、内容は同じである。
ケプラーの図や説明は「遅さ」を近日点と遠日点で比較している。それは、1/vIと1/vHの比較であって、vIと1/vHの比較ではない。

近日点における「速さ」、ケプラーの書き間違いだったのだろうか。それとも職人の誤植だったのだろうか。celeritatem(celeritas迅速、速さ)とtarditatem(tarditas緩慢、遅さ)。誤植の可能性は低いと思われる。ケプラーの頭のなかで一瞬だけ「速さ」と「遅さ」が重なったのである。
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