対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

複合のカッシーラーモデル

2009-03-22 | ノート

 カッシーラーは抽象過程を説明するさいに、簡潔な記号を使っている。 aα1β1 , aα2β2 , aα3β3 …と axy である。これに着目して、複合論の記号表示と対応させてみようと思う。

 まず、カッシーラーの記号を確認しておこう。

概念が事物的存在からいわば解放されるに応じて、他方では、それのもつ固有の関数的能作が浮び上ってくる。固定的諸性質が、可能的諸規定の全系列を一度に見渡すことのできる一般的規則で補完されるのであり、この変換、論理学的「存在」の新しい形式へのこの置き換えが、抽象本来の積極的な能作をなしているのだ。われわれは、ひとつの系列 aα1β1 , aα2β2 , aα3β3 …からその共通〈成分〉aへと直接に移行するのではなく、個別の項 α の全体がある可変的表現xで、項 β の全体がある可変的表現yで与えられていると考えるのである。こうしてわれわれは、全体系をaxy というひとつの表現にまとめあげ、その表現に連続的変化を施すことによって、系列項の具体的全体を導くことができ、このようにして、その総体の構築と論理的分節化とが充分な根拠をもって表わされるのである。(カッシーラー/山本義隆訳『実体概念と函数概念』)

 複合論では、「論理的なもの」に自己表出と指示表出という構造を想定している。A =a+bi やA' =c+di である。ここでa とc が自己表出で、b とd が指示表出である。自己表出と指示表出を2つの文字(a とcやb とd )で表示している。ひとつの文字だけを使うことによって、見通しをよくしてみよう。

  aα1β1 , aα2β2 , aα3β3やaxyの a を「論理的なもの」とする。そして、α を自己表出、β を指示表出とし、数字を添えることによって、「論理的なもの」を区別する。

 すなわち、A =a+bi を α1β1、A' =c+di を α2β2とする(a は省略する)。

 ここから、弁証法の共時的な構造は、次のように変わる。

c ← bi + a → di
    ↑   ↓    
bi ← c + di → a

   ↓

α2 ←β1α1 → β2
   ↑ ↓    
β1 ←α2β2 → α1

 混成モメントは α1β2と α2β1 ある。これが xy に対応する。論理学的「存在」の新しい形式への置換である。x は自己表出、y は指示表出である。

 カッシーラーの記号表示との違いを強調しておこう。カッシーラーでは、x は個別の項 α だけに限定され、その内部における可変表現である。同じように y は、β に限定されその内部の可変表現である。これに対して、複合論では、x は α だけでなく β にも関連している可変表現である。y も同じように、β と α の両方に関連した可変表現である。

 選択・混成・統一の過程(弁証法の通時的な構造)は、いいかえれば、2つの論理学的「存在」から、〈論理学的「存在」の新しい形式〉への置き換えは、次のように表現できる。

 a(α1β12β2 )→a(α1β22β1 )=a(xy)→a(α3β3

要約しておこう。

◎ さまざまな「論理的なもの」

aα1β1 , aα2β2 , aα3β3

◎ 弁証法の共時的な構造

α2 ←β1α1 → β2
  ↑ ↓    
β1 ←α2β2 → α1

◎ 弁証法の通時的な構造

a(α1β12β2
  ↓
a(α1β22β1 )=a(xy)
  ↓
a(α3β3