☆ “超電導”は究極の省エネ技術
100年前に発見された不思議な現象の“超電導”。今、その実用化が見え始めている。
大阪の「住友電工」敷地内を走る実験用のクルマは、エンジンの代わりに乗せたモーターを超電導が動かす“超電導カー”だ。
タンクに積まれた液体窒素で冷却することでモーターを動かすもので、超電導は抵抗がゼロなので非常に強い力が出せるという。
燃費は従来の電気自動車に比べ10%改善される。
通常、電気を物質に流すと電気抵抗が発生するが、ある特定の物質を極度に冷却すると電気抵抗がゼロになる。これが超電導といわれるもの。
超電導が実用化されると、抵抗によるロスがないため発電で余った電力貯蔵が可能になるほか、モーターの小型化、大電流による強い磁場はMRIなど医療分野への応用も可能になる。
超電導は、発見当初温度をさげるのに費用がかかるため実用化は難しいとされたが、1986年、安い液体窒素でも冷却できる新たな超電導物質が発見され研究が本格化した。
2020年から2050年の間には超電導はエネルギー分野だけでなく医療や科学技術の分野でもその利用が伸びていくと考えられている。
住友電工には、既に実用化間近の商品“超電導ケーブル”もある。従来の電線と同じくらいの太さで5~6倍の電力を送ることができる。
IT機器や人口の増加で都市部の電力需要は増える一方だが、日本の電線は老朽化を迎え超電導ケーブルへの期待は大きい。
また、電線を地中化するのに、従来は2~3mのトンネルが必要だったが、超電導ケーブルは細い穴を掘るだけで済み、建設コストの削減にもつながる。
「東京電力」は、横浜の旭変電所で実際に使われている電線の一部を超電導ケーブルに置き換えて使う実証実験を行う予定。
ケーブルの信頼性を検証し将来の実用化につなげていきたいという。
一方素材面でも画期的な発見があった。
東京工業大学の細野教授は、昨年、それまで不可能といわれていた鉄系の超伝導物質を発見し話題となった。
鉄という普通の素材であれば超電導の可能性はひろがり、また将来的には室温超電導も不可能ではなくなるかもしれない。さらに、まだ新素材の発見はありうるという。