2014/01/30 日本経済新聞より
グローバル人材、卒業生が支援
留学生寮や海外派遣に資金 「世界の広さ 感じて」
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グローバルに活躍できる人材の育成に向け、大学が卒業生の有力企業人と連携を強めるケースが増えてきた。国際展開する企業で働く経営者層が中心で、資金協力だけでなく、学生がビジネスの経験に触れる機会も作る。将来の職業選択にも生かしてもらう狙いだ。
JR中野駅北側に建設中の早稲田大学の国際学生寮「WISH」。3月中旬から日本人と外国人留学生約400人が入居する。この大型寮の運営費として3億円を個人で寄付したのが、同大政治経済学部出身の柳井正ファーストリテイリング会長兼社長だ。柳井氏は「世界中からきた若い人々が寝起きを共にして、一緒に生活することは何にも増して素晴らしい経験だ」と意義を語る。
寮生と社員交流
早大は柳井氏の寄付を含め、2017年までの5年間で30億円の資金を企業人のOBなどから募集。寄付金を原資に、入寮する全学生が払う毎月の寮費を36年間にわたって1万円割り引く計画だ。さらに、寮内の多目的教室に企業の若手社員を年間に2週間程度、集中的に呼び、学生がビジネスの最前線の知識を吸収する場をつくる。内田勝一副総長は「寮を単なる住む場ではなく、様々な知識を学ぶ場としたい」と話す。
LIXILグループの藤森義明社長は昨年、三菱商事の小島順彦会長ら東京大学OBと、東大の学生を海外に1~2カ月間派遣する基金をつくった。藤森氏は「私は27歳で初めて経営学修士(MBA)取得のために留学したが、あまりにも遅すぎた。基金を通じて東大生に様々な経験をしてもらい世界の広さを感じてほしい」と話す。
授業に企業人OBの力や経験を活用しようとしている大学もある。慶応義塾大学商学部は4月、企業の協力を得て「グローバル・パスポート・プログラム」を開講する。英語能力テスト「TOEIC」の点数などから選抜した3~4年生に、英語で演習形式の授業をするのが特徴だ。
慶大にはこれまでも企業人のOBが講義する寄付講座があった。ただ、大教室での一方的な講義では「学生の問題意識の醸成にまでつながるかは不明確」(三橋平教授)だった。新プログラムは工場訪問といったフィールドワークも取り入れ、寄付を受けた企業からの外部評価を翌年以降の授業に反映させる。金子隆商学部長は「グローバル人材の育成は大学全体の使命。商学部がその先陣を切る」と意気込む。
人材確保に利用
東大卒の外資系出身者でつくる「外資系銀杏会」は昨秋、OBの経験を東大生や卒業生の若手社会人に伝えるシンポジウムを主催した。旗振り役となったバークレイズ証券の児玉哲哉副会長は「金融危機後、外資系金融機関の使命が見えにくく、不安を覚える若手も増えていた」と指摘。OBが経験や思いを率直に話すことで、学生を含めた次世代との橋渡しをしたかったという。
大学がOBとの連携に踏み出すのは、多方面で活躍する卒業生の生の声が教育現場にとっても貴重だと考えているからだ。協力する企業やOBにとっても、国際感覚を持つ学生が育てば、優秀な新卒人材の採用につなげることができる。
ただ、連携や交流はまだ緒に就いたばかり。連携強化を目的にOBの連絡先を大学側が本格収集するようになったのは最近のこと。東大の江川雅子理事は「存命の卒業生約20万人のうち、捕捉できているのは半分ぐらい」と話す。強固なOB・OGネットワークを持ち、資金集めの規模も桁違いの米著名大学との格差は大きい。
グローバル人材、卒業生が支援
留学生寮や海外派遣に資金 「世界の広さ 感じて」
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グローバルに活躍できる人材の育成に向け、大学が卒業生の有力企業人と連携を強めるケースが増えてきた。国際展開する企業で働く経営者層が中心で、資金協力だけでなく、学生がビジネスの経験に触れる機会も作る。将来の職業選択にも生かしてもらう狙いだ。
JR中野駅北側に建設中の早稲田大学の国際学生寮「WISH」。3月中旬から日本人と外国人留学生約400人が入居する。この大型寮の運営費として3億円を個人で寄付したのが、同大政治経済学部出身の柳井正ファーストリテイリング会長兼社長だ。柳井氏は「世界中からきた若い人々が寝起きを共にして、一緒に生活することは何にも増して素晴らしい経験だ」と意義を語る。
寮生と社員交流
早大は柳井氏の寄付を含め、2017年までの5年間で30億円の資金を企業人のOBなどから募集。寄付金を原資に、入寮する全学生が払う毎月の寮費を36年間にわたって1万円割り引く計画だ。さらに、寮内の多目的教室に企業の若手社員を年間に2週間程度、集中的に呼び、学生がビジネスの最前線の知識を吸収する場をつくる。内田勝一副総長は「寮を単なる住む場ではなく、様々な知識を学ぶ場としたい」と話す。
LIXILグループの藤森義明社長は昨年、三菱商事の小島順彦会長ら東京大学OBと、東大の学生を海外に1~2カ月間派遣する基金をつくった。藤森氏は「私は27歳で初めて経営学修士(MBA)取得のために留学したが、あまりにも遅すぎた。基金を通じて東大生に様々な経験をしてもらい世界の広さを感じてほしい」と話す。
授業に企業人OBの力や経験を活用しようとしている大学もある。慶応義塾大学商学部は4月、企業の協力を得て「グローバル・パスポート・プログラム」を開講する。英語能力テスト「TOEIC」の点数などから選抜した3~4年生に、英語で演習形式の授業をするのが特徴だ。
慶大にはこれまでも企業人のOBが講義する寄付講座があった。ただ、大教室での一方的な講義では「学生の問題意識の醸成にまでつながるかは不明確」(三橋平教授)だった。新プログラムは工場訪問といったフィールドワークも取り入れ、寄付を受けた企業からの外部評価を翌年以降の授業に反映させる。金子隆商学部長は「グローバル人材の育成は大学全体の使命。商学部がその先陣を切る」と意気込む。
人材確保に利用
東大卒の外資系出身者でつくる「外資系銀杏会」は昨秋、OBの経験を東大生や卒業生の若手社会人に伝えるシンポジウムを主催した。旗振り役となったバークレイズ証券の児玉哲哉副会長は「金融危機後、外資系金融機関の使命が見えにくく、不安を覚える若手も増えていた」と指摘。OBが経験や思いを率直に話すことで、学生を含めた次世代との橋渡しをしたかったという。
大学がOBとの連携に踏み出すのは、多方面で活躍する卒業生の生の声が教育現場にとっても貴重だと考えているからだ。協力する企業やOBにとっても、国際感覚を持つ学生が育てば、優秀な新卒人材の採用につなげることができる。
ただ、連携や交流はまだ緒に就いたばかり。連携強化を目的にOBの連絡先を大学側が本格収集するようになったのは最近のこと。東大の江川雅子理事は「存命の卒業生約20万人のうち、捕捉できているのは半分ぐらい」と話す。強固なOB・OGネットワークを持ち、資金集めの規模も桁違いの米著名大学との格差は大きい。
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