先天性刹那

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NHKクローズアップ現代「基準がない!鉄道車両の強度」を斬る

2008-04-30 12:32:20 | news
ちょっと古い話題になりましたが、4月28日19時よりNHK総合で放映されたクローズアップ現代「基準がない!鉄道車両の強度」について、驚くべき偏向報道があったので、記録させて頂きます。

まず、「JR福知山線脱線事故で、車体の強度が高ければより多くの人命が救われたのではないか」という点。

あの事故で車体側面が折れてしまったのは、想定外の方面から想像以上の衝撃がかかってしまったのが原因であって、通常では有り得ない側突あるいは天井からの衝撃まで考慮して設計するのは過剰に過ぎます。
何故なら鉄道はレールという決められた位置のみを走るのですから、レール上走行時の強度を考えていれば良いのです。なら脱線転覆時を考慮しなくて良いのか?レールから外れないように大元を対策すればよいのです。どこでも走ることが出来るが故にあらゆる想定をしなければならない他の交通機関とは本質的に異なります。
こんなことを言い出したら航空機は一切運行できなくなりますし、自動車だって対策しているのは未だ60km/h程度まで、高速道路走行は無謀の極みになります。

さらに強度が高ければより多くの人命が救われたかどうかも些か疑問です。強度が高ければそれだけ衝撃に対する減速力が強まる訳で、当然乗客への慣性の減速力も増します。着席通勤よりも立席通勤の方のほうがはるかに多い現在の利用状況で、これは単純に正しいことなのでしょうか。
ちなみに、鉄道車輌の先頭部は踏切における大型車両(ダンプやトレーラー)の無謀進入に備えて元々極めて強度が高く設計されており、事故車輌も先頭部は比較的に変形が少なく原形を留めていました。しかし、運転士は死亡しました。

そして「アメリカの鉄道車両は衝突を考慮した設計になっている」点。

そもそも鉄道システム後進国であるアメリカを引き合いに出す時点で大間違いなのですが、整備不良の軌道でも走行させるため、且つ事故発生率が高いため発生時の余裕を持たせて設計させなければならない鉄道と比較するのは卑怯です。せめて鉄道システム先進国であるドイツやフランスを引き合いに出すべきでしょう。

また、アメリカの衝突実験の映像も流れましたが、実験は衝突させる部材をせいぜい4~50km/hで真正面から衝突させたもの。あれくらいなら事故の例から見ても日本の車両でも十分耐えられます。アメリカの車輌でも120km/hでコンクリートマンションに側突させればどうなるでしょうか。

おまけに資料映像として放映された通勤列車では、乗降口が手動式で開けっ放し、しかも乗降口の際に人が立っていました。こんな手動扉なんて日本では約25年前に全廃(元設計でいえば約半世紀前に全廃)になっているというのに、危険極まる設計を未だに続けています。こんな車両が安全ならば、日本も今すぐに通勤電車を手動開放式にすべきでしょう。

最後に「日本の鉄道車両メーカーはアメリカ向けの車両も製作しているのに、日本の車両に生かそうとしない」点。

ここ数年で大分様変わりしましたが、今も鉄道車両とは基本的に鉄道会社のオーダーメイドであって、その範囲内で激しい受注競争をしているのです。それなのに注文にないことを提案しわざわざコストを高める馬鹿がどこの国にあるのでしょうか。またアメリカ基準を日本に持ち込めば、重量過大でたちまち運行できなくなります。さらに繰り返しになりますが、通常の正面衝突強度は十分にあります。

確かにある程度の強度基準は必要であり、国がそのために基準付けはすべきでしょう。遡る日比谷線脱線事故(比較的低速な接触であった割に、破壊が大きかった)の際に、気がついても良い問題でありました。
しかし基準がないが故に危険なのだというのは馬鹿にし過ぎです。

コメンテイターとして登場した東京大学名誉教授井口雅一氏はお気の毒でした。言葉を慎重に選びながら発言していたのが印象に残ります。

事故の根絶は切なる願いです。事故の分析と対策は極めて重要です。しかし、JR福知山線脱線事故は強度不足がそもそもの事故原因ではなく速度超過他の要因が大であるのに、敢えて例として持ってくるというのは不適切です。
今回のあまりに酷い恣意的な偏向報道には、悪意や裏があるような気がしてなりません。また、偏向報道を真に受けている人が(blogを検索してみると)実に多い事には恐ろしさを感じます。

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