ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

世界経済危機と文明の転換1

2009-04-26 19:17:02 | 文明
●世界経済危機をどうとらえるか

 私は、昨年9月3日に「現代の眺望と人類の課題」という連載を始めた。開始後間もなく、9月15日にリーマン・ショックが起こった。それによって、前年夏から顕在化していたサブプライム危機が世界的な金融危機に拡大した。
 グリーンスパン元FRB議長は「100年に一度の大津波」と表現した。確かに1929年の世界恐慌以来の経済危機といえるだろう。現在の世界経済危機をどの程度のスケールのものととらえるかは、学者・論者によって諸説あるが、私たちが世界的な意味で歴史的な事件の只中にあることは、間違いない。
 私自身は、100年に一度ではなく、500年に一度の節目にあると考えている。500年に一度とは、西洋文明から非西洋文明、東洋・アジアを中心とした文明への転換を意味する。この転換は、単に文明の中心地域が移動するというだけでなく、文明の拠って立つ原理が変わることを意味する。
 文明の原理の転換とは、価値観の転換であり、物質偏重から物心調和へ、自然の略奪から自然との調和へ、対立・抗争から共存共栄へという転換である。私は、こうした構図を取りながら、現代世界の過去・現在・将来の眺望を試みているところである。連載にお付き合いいただいている方は、ご存知のように、ユダヤ的価値観から日本的価値観への転換がポイントだと私は考えている。

 このたびの世界経済危機については、多くの識者が、その発生の原因、今後の予測、長期的展望を書いている。様々な書物を手にするなかで、中谷巌氏の『資本主義はなぜ自壊したのか』(2008年12月刊、集英社インターナショナル)には、感慨深いものがあった。15万部以上売れているという話題の書である。
 中谷氏と言えば、1990年代から、わが国に新自由主義・市場原理主義を持ち込んで、政府の政策決定に大きな影響を与えた人物である。小泉=竹中政権の構造改革は、中谷氏なしにはありえなかっただろう。ところが、その中谷が自説の誤りを認め、「懺悔の書」として本書を書いたのである。新自由主義は「危険思想」であり、グローバル資本主義は「悪魔のシステム」だと言う。そのうえ、日本的な価値観に基づく日本再生の政策を提言し、今こそ日本発の価値観を世界に伝えるべき、と唱えているのだから、多くの人が驚くのは当然である。

 中谷氏の所論を含め、そのうち世界経済危機に関して、私なりの見方を整理して、書いてみたいと思っている。本稿は、とりあえずの覚書である。

●世界経済危機を予測していたエコノミスト

 今回の世界経済危機の勃発については、早くからかなり正確に予測していたエコノミストが、私の知る限り二人いる。副島隆彦氏とラビ・バトラである。私は、副島氏の本は、5年ほど前から読むようになった。バトラの本は15年ほど前から断続的に読んでいる。

 副島氏は、佐藤優氏との対談本『暴走する国家 恐慌化する世界』(2008年12月刊、日本文芸社)で、次のように語っている。
 「私は『ドル覇権の崩壊』(註 2007年7月刊)の中で、『2008年か末からドルが80円に大暴落し、アメリカ帝国は衰退する』と書きました。さらに『連鎖する大暴落』(註 2008年3月刊)では、『ドルは80円どころか60円に暴落し、ニューヨーク・ダウは1万ドルを割って、6000ドルに大暴落する』と書きました。そして『恐慌前夜』(註 2008年9月刊)を出版して2週間後に、9月15日のリーマン・ブラザーズの経営破綻が起きた。これを契機に、本格的な信用崩壊(金融恐慌)が始まったのです」と。
 確かに、『ドル覇権の崩壊』『連鎖する大暴落』『恐慌前夜』に、副島氏はそのように書いている。

 一方、バトラは、1978年に刊行した著書『資本主義と共産主義の崩壊』で、「2000年までに共産主義は崩壊し、2010年前後に資本主義が終焉する」と予測した。近著の『2009年断末魔の資本主義』(2009年1月刊、あ・うん)で、バトラは、「共産主義は、1991年の旧ソ連の解体によって現実のものとなり、そして、2010年前後と予測してきた資本主義の終焉については、もっと早いタイミングで始まっている」と書いている。
 バトラは、昨年出した『2010年 資本主義大爆裂』(2008年1月刊、あ・うん)で、2008年に起こることの予測を、10項目掲げた。その予測は「しかるべき時期が到来したものはすべて的中した」と、バトラは本年出した本に書いている。
 予測1「原油価格は100ドルを超えて高騰し続ける」、予測2「『サブプライム住宅ローン危機』は再三爆発する」、予測3「2008年、米大統領選挙は民主党の勝利」、予測4「アメリカの大企業の破綻が続発する」、予測5「日本の好況は2008年半ばか、末まで」。この5つの予測は「すでに時期が来て的中した」とバトラは言っている。確かに相違ない。

 副島氏もバトラも、過去に発表した将来予測が、すべて的中しているわけではない。ともに外れの場合も目に付く。また、両氏の拠って立つ経済理論や社会理論、歴史観について、私は多くの異論を持ってもいる。しかし、今回の世界経済危機に関して、両氏が早くからかなり正確な予測をしていたことは、明らかに認められる。
 彼らの予測は、おそらく理論や学説による推論だけではなく、トランスパーソナルな直感の働きによるものだろう。普通、社会科学者には、直感力は要求されないものである。しかし、社会科学者が研究対象としている現実の社会では、政治にせよ軍事にせよ経営にせよ、直感力を欠く指導者は、しばしば組織を破局に導く。政治家や司令官や経営者に、情報と方策を提供する参謀には、単なる分析と総合の能力を超えたもの、直感力が求められる。先を読む力、時代を見通す力は、国家、企業、そしてあらゆる共同体において、生存と発展の鍵となる。
 だから、私は、直感力の有無は、組織の指導者についてだけでなく、学者や評論家に関しても、評価するうえで重要な基準の一つだと思っている。

 次回に続く。
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