ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

オバマからトランプへ~衰退を続けるアメリカ

2016-11-12 06:37:20 | 国際関係
 私は、平成21年(2009)5月に掲示した拙稿「現代世界の支配構造とアメリカの衰退」に、次のように書いた。

 「オバマ大統領は、『Change(変革)』をスローガンに掲げ、共和党に替わって、民主党による新たな政権を樹立した。しかし、(略)アメリカの二大政党の後には、巨大国際金融資本が存在する。私は、オバマもまたアメリカの歴代大統領と同様、アメリカ及び西欧の所有者集団の意思に妥協・融和せざるをえないだろうと予想する。
 オバマにせよ、今後のアメリカの大統領にせよ、アメリカを『Change(変革)』しようとするならば、その挑戦はアメリカの政治構造の変革へと進まざるを得ない。そして、もし本気で挑戦しようとすれば、ケネディ大統領暗殺事件から9・11に至る多くの事件の真相を究明することなくして、変革を成し遂げることはできないだろう。とりわけ9・11の真相究明が重要である」と。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09k.htm

 現在、平成28年(2016)11月、二期に渡ったオバマ政権が、残り2か月ほどで終わろうとしている。オバマ政権は、私の予想通り、本気でアメリカの政治構造の深層まで変革する取り組みをしなかった。そのため、現実的な政策面でも、十分な変革を成し遂げることが出来なかった。オバマ政権の政治に不満を募らせた米国民は多数にのぼり、選挙の結果、共和党の大統領候補トランプが次期大統領に選出された。

 米国は非常に多様性の高い社会である。様々な人種・民族・宗教等が混在している。その状態はサラダ・ボウルにたとえられる。根底には、建国以来の白人/黒人の二元構造がある。1950年代までは人種差別が横行していた。1964年には公民権法が成立し、権利においては平等が実現した。しかし、黒人の多数は貧困層を脱することができない。大都市では、居住地と学校において、黒人の隔離が続いている。そうした状態の改善を求めて、アファーマティブ・アクション(積極的是正措置)やポリティカル・コレクトネス(人種・性差等の中立表現)が唱えられ、実施されてきた。だが、20世紀末から、ヒスパニックやアジア系等の移民が多数流入し、人口構成が大きく変化してきた。白人が多数を占める社会から、有色人種が多数を占める社会へと変貌しつつある。

 史上初の黒人大統領によるオバマ政権は、こうした多様で対立・摩擦の多い社会を、一つのUSAとすべく統合を試みた。そのスローガンが「Change(変革)」だった。だが、先に書いたようにその取り組みは、アメリカの政治構造の深層まで変革するものではなかった。そのため、現実的な政策面でも十分な変革は成し遂げられなかった。特に経済に関しては、リーマンショック後のアメリカ経済は、容易に危機を抜け出せない状態が続いている。財政赤字が増え、何度もデフォルト寸前になる事態を繰り返している。グローバリゼイションとIT産業化によって、米国の製造業は海外の安い労働力と安い製品に押されている。格差の是正は進まず、逆にますます拡大している。特に低学歴の白人労働者は、不法移民を含む有色人種の移民に仕事を奪われたり、彼らの存在によって給与が下がったりしている。そのことに対する不満が、この8年間、たまり続けたようである。

 こうした中で、トランプは、低学歴の白人労働者に目をつけ、彼らの不満を代弁し、また煽り立てた。君たちの生活が苦しいのは、君たちが悪いのではない、悪いのはあいつらだ、と敵を作って大衆に示す。それによって大衆の怒り、憎悪等の感情を描き立て、その感情の波に乗って権力を採るという手法を取った。一種のポピュリズム(大衆迎合主義)である。そうすることによって、トランプは白人とヒスパニック、イスラーム教徒、黒人の間を分断し、自分の支持者を獲得していった。この分断は、米国社会の分断である。また、人種差別や性差別等をなくし、社会の統合を図ってきた米国の取り組みを、逆方向に戻すような分断である。だが、トランプの支持者は、トランプをただの破壊者ではなく、変革者だと仰ぐ。トランプは言う。「Make America great again(アメリカを再び偉大にしよう)」と。支持者たちは、トランプは、ヒラリーが象徴する既成の支配者集団(エスタブリッシュメント)に挑み、これまでの体制を変革してくれる指導者だと信じているようである。
 しかし、トランプは、米国社会を分断し、主に白人労働者の不満をエネルギーとすることで、権力を握った。このようにして誕生した大統領が、米国を一つの国家に統合することは、極めて困難だろう。
 そして、トランプの背後にも、共和党と民主党の後で、これら両政党を実質的にコントロールしている巨大国際金融資本が存在する。トランプもまた彼らアメリカ及び西欧の所有者集団の意思に妥協・融和せざるをえなくなる可能性が高い。そして、トランプにせよ、また今後の大統領にせよ、アメリカの政治構造の深層からの変革に挑むことなくして。アメリカを再び偉大な国として復活させることはできないだろう。それは、すなわち、アメリカは長期的な衰退の道を歩み続けることを意味する。
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