ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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現代世界史20~地域経済圏の創設

2014-08-16 09:39:35 | 現代世界史
●北米とアジア及び環太平洋における地域経済圏の創設

 世界は冷戦終結直後のアメリカ一極支配の体制から、多極化の方向へ変化しつつある。多極化は、超大国に対し、複数の有力な地域大国が競合する状態である。またグローバリゼイション(地球単一化)が進む一方で、地域の経済圏を形成するリージョナリゼイション(地域統合化)が同時に進んでいる。その上、これらに対抗するナショナリズム(国家主義・国民主義・民族主義)が興隆し、またエスニック・グループの活動も活発になっている。
 リージョナリゼイション(地域統合化)については、ヨーロッパでは、EU及びユーロによる政治的・経済的な統合が進められていることを先に書いた。この動きに対し、1980年代後半から、他の地域でも地域経済圏の形成が活発化している。
 北アメリカでは、1980年代以降、広域経済圏を創設する動きが強まった。1985年(昭和60年)のアメリカ、カナダの米加自由貿易協定の合意に基づいて、94年に北米自由貿易地域(NAFTA)が発足した。その結果、アメリカ、カナダ、メキシコの3国で、人口3億6000万人、国民総生産6兆500万ドルの広域経済圏が成立した。NAFTAは、共同市場よりもゆるやかな結合を目指し、域内の関税、非関税障壁、サービス貿易その他の規制は撤廃された。域外諸国に対しては、各国の関税が維持されている。中南米を含む米州自由貿易圏に拡大させる構想がある。
 アジアでは、1989年(平成元年)に、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、ASEAN諸国、合わせて12か国が加盟するアジア太平洋経済協力会議(APEC)が発足した。91年には中国、台湾、香港も加盟した。APECは開かれた地域協力を掲げて、人材の養成、投資促進での協力を進めており、将来の域内自由貿易の実現を目指す取り組みも行っている。
 東アジアでは、1997年(平成9年)のアジア通貨危機を通じて、地域協力の必要性を痛感し、ASEANと日・中・韓による首脳会議が開催されるようになった。「世界の工場」と呼ばれる中国が、富裕層の拡大とともに巨大市場としても期待されるようになり、中国への投資が拡大した。中国はASEANとの自由貿易協定(FTA)締結を模索するなど、東南アジアへの影響力を強めている。
 2005年(平成17年)12月に開催された東アジアサミットでは、ASEANと日中韓に加え、インドも参加した。インドは、10億人の人口と自由化政策を背景に、IT分野を中心に経済成長を遂げている。21世紀前半に経済力で中国を抜くという予想もある。インドを含むアジア太平洋地域は、21世紀の世界で最も重要な地域になっている。世界人口の半分近くが集中しており、生産力、消費力、発展可能性等から見て、世界で最も大きな成長力を秘めた地域である。アジア太平洋地域の動向は、世界の将来を左右する。
 アジア太平洋地域では、米国が自由貿易体制を大幅に広げようとしている。その手段となっているのが、環太平洋経済連携協定(TPP)である。TPPは2006年(平成19年)に誕生したブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールなど、経済規模が比較的小さい国の地域協定だった。ところが、2008年のリーマン・ショック後、米国は突如、この地域協定への参加に熱心になった。翌年、米国通商代表部から議会に提出された文書は、自国の「輸出増加、雇用増大」が目的だと述べている。そして、2009年に参加を表明するや、交渉の主導権を握った。
 わが国では、TPPに関する情報が少なく、当初米国の意図をよく理解していなかった。だが、TPPの対象は、農業だけでなく、金融・投資・保険・労働・医療・健保・通信・法務等、24の分野に及ぶ。それらの分野で、米国が日本に関税自主権の放棄と自主規制の撤廃を迫るものとなっている。日本と米国以外の参加国は経済規模が小さく、日米でGDPの総額の9割以上にもなる。TPPで米国が日本を主たる対象国としていることは明らかである。わが国のTPP賛成論者は、TPP参加でアジアの成長力を取り込めるというが、中国もインドも参加しない。それでどうやって、アジアの成長力を取り込めるのか等、問題点は多い。わが国は、TPP交渉に12か国目の参加者として加わり、米国との交渉を続けている。マスメディアは、農業など一部分野における利益団体の反対を取り上げることが多く、TPPの全体像を伝えていない。TPPの外交交渉は内容が公開されていないため、米国の連邦議会では反対意見が少なくない。私の見るところ、巨大国際金融資本が米国政府を利用して、各国の国民に詳細を知らせずに、自分たちに都合の良い仕組みをつくろうとしているのが、TPPだろう。アジア太平洋地域におけるグローバリズムの展開と思われる。
 TPPの基本には、自由貿易体制が世界経済を成長させるという考え方がある。だが、グローバリズムによる自由貿易の推進は、実際には先進国の経済成長率を低下させている。実質賃金が低下し、平価購買力が減少して、需要不足・供給過剰の傾向となっているからである。さらにグローバリズムは各国の国民経済や公共文化を棄損し、国民の連帯感や同胞意識を希薄にしており、デモクラシーを形骸化させる恐れがある。経済中心・個人本位の国際的な制度改革は、巨大国際金融資本とそれによる多国籍企業には繁栄をもたらすかもしれないが、家族や社会の絆を弱め、多くの国家に荒廃をもたらすだろう。

 次回に続く。
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