ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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9・11~欺かれた世界28

2007-10-22 10:00:30 | 国際関係
●冷戦後の世界と9・11の予想

 冷戦終結後の世界について、ハーバード大学の国際政治学者サミュエル・P・ハンチントン教授は、国際的に有効な俯瞰図(the big picture)を描いた。
 ハンチントンは、平成8年(1996)、『文明の衝突』と題する書物を出版した。原題に忠実に訳せば「文明の衝突と世界秩序の再生」。ハンチントン自身の主題は、世界秩序の再生にある。同書は25の言語に翻訳され、日本でも平成10年(1998)に翻訳刊行され、ベストセラーとなった。
 ハンチントンは、文化を「人々の間に共有された生活様式の総体」とし、そして文明を「文化のもっとも大きなまとまり」と定義する。そして、国家ではなく文明を単位として世界を捉えるところに、その所論の特徴がある。これは彼が、トインビーなどの文明学者に多くを負っていることを示している。

 ハンチントンによると、21世紀初頭の世界は、二つの点でかつての冷戦時代と異なる。冷戦時代とは、第二次世界大戦後の世界を二分した、ソ連を盟主とする教条主義(社会主義)とアメリカを盟主とする自由主義(資本主義)の対立構造である。大戦終結の昭和20年(1945)からソ連崩壊の平成3年(1991)までの時代がこの時代である。
 ハンチントンの見方では、冷戦時代と冷戦後の世界の違いは、第一に、冷戦期には、世界が自由主義、共産主義、第三世界と三分されていたが、今日の世界は、文化的なアイデンティティの違いにより、7または8の文明によって区分されることである。
 彼は、現存する主要文明として、キリスト教的カソリシズムとプロテスタンティズムを基礎とする西洋文明(西欧・北米)、東方正教文明(ロシア・東欧)、イスラム文明、ヒンズー文明、儒教を要素とするシナ文明、日本文明、カトリックと土着文化を基礎とするラテン・アメリカ文明。これに今後の可能性のあるものとして、アフリカ文明(サハラ南部)を加え、7または8と数える。

 違いの第二は、冷戦期には、米ソという超大国が二つあったが、今日の世界は一つの超大国(アメリカ)と複数の地域大国からなる一極・多極体制を呈するようになったことにある。平成3年(1991)12月、ソ連の崩壊によって、アメリカは唯一の超大国となった。歴史上始めて、一国が世界を支配する一極体制が実現したかに見える。しかし、実際には、一極・多極体制というべきものであるとハンチントンは主張する。そして、今後、世界は多極化が進み、真の多極・多文明の体制に移行すると予想する。また特にイスラム文明・シナ文明と、西洋文明との対立が強まる。西洋文明対イスラム=シナ文明連合の対立の時代が来ると警告した。
 なお、ハンチントンによれば、世界の権力構造は、超大国、地域大国、第2の地域大国、その他の国々という四つの階層からなる。東アジアでは、地域大国は中国である。わが国は、潜在的な地域大国にしてナンバー2であって、第2層と第3層の両者に属するとハンチントンは見ている。

●冷戦の終結から9・11までの世界

 冷戦の終結から9・11まで、つまり平成3年(1991)12月から平成13年(2001)9月11日までの世界は、一極・多極体制の世界だった。冷戦の終結によって、アメリカの大統領は、ズビグニュー・ブレジンスキーの表現を借りると、グローバル・リーダー(地球の指導者)となった。グローバル・リーダーの初代はジョージ・ブッシュ(父)、2代目はビル・クリントン、3代目がジョージ・W(ダフヤ)・ブッシュ(子)である。
 ブッシュ(父)は、ソ連崩壊の数ヶ月前、平成3年(1991)1月に湾岸戦争を、アメリカの主導で、国連の決議のもと、主要国すべての賛成を得て、戦った。前年8月、イラクがクェートに侵攻したのに対し、反撃したものである。対イラク戦争は、開戦後、アメリカ側の圧倒的な優勢のうちに終結した。アメリカは、湾岸地域に軍隊を駐留させ、中東の石油への管理を強めた。
 クリントンは、軍事行動には消極的だった。代わって、グローバリゼイションを標榜した。グローバリゼイションとは、近代化を新しい技術で世界規模で進めるものであり、アメリカは、ドルの経済力とITの情報力で他国を圧倒した。アメリカの標準が世界の標準として、普及された。すなわちグローバリゼイションは、アメリカ的な価値観、アメリカ的な制度を他国に押し付けるもの、アメリカナイゼイションでもあった。そして、アメリカの国益を追求する手段として推進された。

 クリントン時代、アメリカは、レーガン政権以来の財政赤字を解消し、さらに黒字に転換するほどの経済的繁栄を謳歌した。その反面、世界では地域間の経済格差が広がり、貧困にあえぐ国々、人々は一層の貧困に追いやられた。そのため、世界各地で反米的な運動が起こった。とりわけイスラム諸国では、その運動は宗教的な思想を根底とした過激なものとなった。
 平成5年(1993)、世界貿易センター(WTC)のビル爆破事件が起こった。犯人は、イスラム過激派だった。イスラムのテロ組織アルカイダは、中東・アフリカ等で、テロ活動を展開した。
 ハンチントンが『文明の衝突』を刊行したのは、こういう時代、平成6年(1998)のことだった。ハンチントンは、本書で、イスラム文明と非イスラム文明の断層線で紛争が起こることを予想した。これによって、彼は9・11を予想したと言われている。具体的に同時多発テロ事件を予想したわけではないが、西洋文明とイスラム文明の間で紛争が起こったとき、彼の予想が的中したと理解されたのである。

 次回に続く。

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