●北方領土返還運動と交渉の遅滞
北方領土返還動は、終戦の年、安藤根室町長がマッカーサーに直訴したことに始まります。以後、返還要求の声は全国に広まり、各地で様々な団体による返還運動が展開されています。返還を求める署名は約7千万人にも上っています。
日本はサンフランシスコ講和条約で、多くの国と講和条約を結び戦後処理を行いました。日本は千島列島、樺太の一部の権利、権原、請求権を放棄しました。この時、わが国は千島列島に対する領有権を放棄したのですが、わが国の政府は、同条約による「千島列島」には、日露和親条約で国境を定めた択捉島以南の南千島は含まれないとしています。この択捉島以南の南千島が、日本固有の北方領土です。一方、北方領土を除く千島列島、つまりわが国が放棄した北千島については、講和条約に帰属先が明記されていません。ソ連は講和条約に署名していないので、南樺太および北千島の領有権は「未定」であるというのが、わが国の政府の立場です。
講和条約締結後、アメリカは、北方四島は常に固有の日本領土の一部をなしてきたものであり、かつ、正当に日本の主権下にあるものとして認められなければならない旨の公式見解を明らかにして、日本の立場を一貫して支持しています。
わが国は、北方領土の返還を求めて交渉を続けてきましたが、旧ソ連及びロシアは、日本との間に領土問題は存在しない、といって問題そのものを認めない姿勢を続けました。ようやく平成5年(1993)、エリツイン大統領が訪日した際、北方四島の帰属問題を「法と正義の原則に基づいて解決する」と確認した「東京宣言」が宣言されました。宣言では、北方四島の島名を列挙して、領土問題はその帰属に関する問題と位置づけられました。
しかし、その後もいっこうに進展は見られません。北方領土問題が解決していないため、わが国は、今もロシアとは正式な平和条約を結んでいません。南樺太および北千島の領有権は「未定」のままです。日本の戦後は終わっていないのです。
わが国の政党の中で、日本共産党は、全千島列島の返還を唱えています。同党によると、日露領土問題の根源は、第2次世界大戦終結時のスターリンの覇権主義的な領土拡張政策にあり、ヤルタ会談を根拠とした千島列島の併合は、「領土不拡大」の原則を蹂躙するものです。そして、サンフランシスコ講話条約の「千島放棄条項」を見直し、択捉島以北を含む全千島列島について「返還されるべき正当な根拠を持った日本の領土」としてロシアと交渉すべきとしています。この論理で言うならば、南樺太も対象に含まねばなりません。わが国の政府は、ソ連は講和条約に署名していないので、南樺太および北千島の領有権は「未定」であるという立場です。ソ連及びその法的継承者であるロシアとの交渉は、北方4島に限定して行われてきており、今から対象を広げることは、交渉を難しくします。私は、北方4島は日本の「固有の領土」としてわが国に返還してもらい、帰属が「未定」の南樺太・北千島はロシア領と認めるというのがよいと思います。
今日北方四島では、ただ同然の価格で私有化が進められているといいます。他国の領土を不法占拠して返さないどころか、住み着いた者で分けてしまおう、というのでしょう。そのため、日本政府は領土問題交渉で、ロシア中央政府、サハリン州行政府だけでなく、民間の土地所有者にも配慮しなければならなくなっています。
国家において、領土を失うことは、独立主権国家としての威信や国民の誇り等の無形の価値の喪失が大きいと思います。それを前提としての話ですが、平成3年(1991)、当時自民党幹事長だった小沢一郎氏が独断で訪ソして、ゴルバチョフ書記長と会談した際に作成した資料で、北方4島の資産価値を5,000億円としたことが話題になりました。北方領土はロシアに不法占拠されているので、わが国は当地で生産活動を出来ていませんが、豊かな漁場なので漁業ができ、また温泉等による観光業も行えるでしょう。それ以上に重要なのは、石油・天然ガスが埋蔵されている可能性があり、潜在的な資源価値は大きいでしょう。
●ねばり強い返還交渉を
2月7日を北方領土の日としているのは、北方四島がわが国固有の領土であることを日露両国が初めて確認した日露通好条約の調印された日を記念して、昭和56年に定められたものです。
日露両国間の最大の懸案は北方領土問題です。この問題が解決されなければ、両国間に、真に友好的な関係は生まれないでしょう。わが国は北方四島の主権がわが国にあることを機会あるごとに主張しつつ、ねばり強く領土問題の解決をはかっていく必要があります。それは、単に北方四島という領土を回復するということだけでなく、わが国が独立主権国家として、侵害されている主権を回復するという意味があります。
今日の韓国・中国の日本に対する法外な領土の主張は、北方領土に対する日本の弱腰の姿勢を見て、強引に主張・行動すれば、日本は言いなりになる、という認識をもって迫っているものと思われます。
わが国は北方四島の主権がわが国にあることを機会あるごとに主張しつつ、ねばり強くロシアとの領土問題の解決をはかっていくべきでしょう。そのことが、竹島・尖閣諸島を巡る問題においても、主権国家としてのあり方を明確にしていくことになると思います。
●領土問題の根本は憲法問題
大東亜戦争の終戦時のどさくさにまぎれて侵攻したソ連は、北方四島を不法占拠し、ロシアもまたそのまま居座っています。返還交渉は、半世紀以上たって、いまだに解決を見ません。そういう体たらくのわが国に、韓国や中国が領土侵犯を行ってきているのです。
北方領土返還問題が解決しないのは、わが国に主権を裏付ける実力、すなわち国防力が整備されていないことに原因があります。竹島・尖閣諸島についても、わが国が領土の侵犯、領海の侵犯を強く主張できないのは、ここに根本原因があります。
対外的な主権は、実力つまり武力によってのみ裏付けられます。国民に国防の意思が薄弱であれば、対外的な主権意識は低下します。日本国憲法を審議した帝国議会において、当時の憲法学者・佐々木惣一は、「第9条が独立性を失った卑屈な国民を形成していくのではないか」と危惧を述べていました。その懸念のとおり、戦後憲法制定後、国防をおろそかにし、国民の国防意識が低下してきたことが、主権意識の低下を生じています。それがそのまま領土意識の希薄さに結びついているのです。その希薄さにつけこんで、他国が領土を不法占拠しつづけ、また領土や領海を侵犯しているのです。これに対して、わが国は言葉による抗議だけで、実力による行動を出来ない状態です。
実力の裏づけのない外交は、相手国になんら圧力を感じさせません。現行憲法の第9条をそのままにしながら、領土の返還交渉をいくら続けても、埒があかないのです。多くの日本人は、この点を自覚していないのではないでしょうか。憲法の放置と共に、不法占拠された領土を放置してきてしまったのです。そのことが、日本人の主権意識・領土意識を薄弱なものにしています。
領土問題は主権の問題、国防の問題であり、つきつめると憲法問題であることを、認識したいと思います。侵されているのは、北方四島・竹島・尖閣諸島より以上に、1億2千万の日本人の精神そのものなのです。
北方領土返還動は、終戦の年、安藤根室町長がマッカーサーに直訴したことに始まります。以後、返還要求の声は全国に広まり、各地で様々な団体による返還運動が展開されています。返還を求める署名は約7千万人にも上っています。
日本はサンフランシスコ講和条約で、多くの国と講和条約を結び戦後処理を行いました。日本は千島列島、樺太の一部の権利、権原、請求権を放棄しました。この時、わが国は千島列島に対する領有権を放棄したのですが、わが国の政府は、同条約による「千島列島」には、日露和親条約で国境を定めた択捉島以南の南千島は含まれないとしています。この択捉島以南の南千島が、日本固有の北方領土です。一方、北方領土を除く千島列島、つまりわが国が放棄した北千島については、講和条約に帰属先が明記されていません。ソ連は講和条約に署名していないので、南樺太および北千島の領有権は「未定」であるというのが、わが国の政府の立場です。
講和条約締結後、アメリカは、北方四島は常に固有の日本領土の一部をなしてきたものであり、かつ、正当に日本の主権下にあるものとして認められなければならない旨の公式見解を明らかにして、日本の立場を一貫して支持しています。
わが国は、北方領土の返還を求めて交渉を続けてきましたが、旧ソ連及びロシアは、日本との間に領土問題は存在しない、といって問題そのものを認めない姿勢を続けました。ようやく平成5年(1993)、エリツイン大統領が訪日した際、北方四島の帰属問題を「法と正義の原則に基づいて解決する」と確認した「東京宣言」が宣言されました。宣言では、北方四島の島名を列挙して、領土問題はその帰属に関する問題と位置づけられました。
しかし、その後もいっこうに進展は見られません。北方領土問題が解決していないため、わが国は、今もロシアとは正式な平和条約を結んでいません。南樺太および北千島の領有権は「未定」のままです。日本の戦後は終わっていないのです。
わが国の政党の中で、日本共産党は、全千島列島の返還を唱えています。同党によると、日露領土問題の根源は、第2次世界大戦終結時のスターリンの覇権主義的な領土拡張政策にあり、ヤルタ会談を根拠とした千島列島の併合は、「領土不拡大」の原則を蹂躙するものです。そして、サンフランシスコ講話条約の「千島放棄条項」を見直し、択捉島以北を含む全千島列島について「返還されるべき正当な根拠を持った日本の領土」としてロシアと交渉すべきとしています。この論理で言うならば、南樺太も対象に含まねばなりません。わが国の政府は、ソ連は講和条約に署名していないので、南樺太および北千島の領有権は「未定」であるという立場です。ソ連及びその法的継承者であるロシアとの交渉は、北方4島に限定して行われてきており、今から対象を広げることは、交渉を難しくします。私は、北方4島は日本の「固有の領土」としてわが国に返還してもらい、帰属が「未定」の南樺太・北千島はロシア領と認めるというのがよいと思います。
今日北方四島では、ただ同然の価格で私有化が進められているといいます。他国の領土を不法占拠して返さないどころか、住み着いた者で分けてしまおう、というのでしょう。そのため、日本政府は領土問題交渉で、ロシア中央政府、サハリン州行政府だけでなく、民間の土地所有者にも配慮しなければならなくなっています。
国家において、領土を失うことは、独立主権国家としての威信や国民の誇り等の無形の価値の喪失が大きいと思います。それを前提としての話ですが、平成3年(1991)、当時自民党幹事長だった小沢一郎氏が独断で訪ソして、ゴルバチョフ書記長と会談した際に作成した資料で、北方4島の資産価値を5,000億円としたことが話題になりました。北方領土はロシアに不法占拠されているので、わが国は当地で生産活動を出来ていませんが、豊かな漁場なので漁業ができ、また温泉等による観光業も行えるでしょう。それ以上に重要なのは、石油・天然ガスが埋蔵されている可能性があり、潜在的な資源価値は大きいでしょう。
●ねばり強い返還交渉を
2月7日を北方領土の日としているのは、北方四島がわが国固有の領土であることを日露両国が初めて確認した日露通好条約の調印された日を記念して、昭和56年に定められたものです。
日露両国間の最大の懸案は北方領土問題です。この問題が解決されなければ、両国間に、真に友好的な関係は生まれないでしょう。わが国は北方四島の主権がわが国にあることを機会あるごとに主張しつつ、ねばり強く領土問題の解決をはかっていく必要があります。それは、単に北方四島という領土を回復するということだけでなく、わが国が独立主権国家として、侵害されている主権を回復するという意味があります。
今日の韓国・中国の日本に対する法外な領土の主張は、北方領土に対する日本の弱腰の姿勢を見て、強引に主張・行動すれば、日本は言いなりになる、という認識をもって迫っているものと思われます。
わが国は北方四島の主権がわが国にあることを機会あるごとに主張しつつ、ねばり強くロシアとの領土問題の解決をはかっていくべきでしょう。そのことが、竹島・尖閣諸島を巡る問題においても、主権国家としてのあり方を明確にしていくことになると思います。
●領土問題の根本は憲法問題
大東亜戦争の終戦時のどさくさにまぎれて侵攻したソ連は、北方四島を不法占拠し、ロシアもまたそのまま居座っています。返還交渉は、半世紀以上たって、いまだに解決を見ません。そういう体たらくのわが国に、韓国や中国が領土侵犯を行ってきているのです。
北方領土返還問題が解決しないのは、わが国に主権を裏付ける実力、すなわち国防力が整備されていないことに原因があります。竹島・尖閣諸島についても、わが国が領土の侵犯、領海の侵犯を強く主張できないのは、ここに根本原因があります。
対外的な主権は、実力つまり武力によってのみ裏付けられます。国民に国防の意思が薄弱であれば、対外的な主権意識は低下します。日本国憲法を審議した帝国議会において、当時の憲法学者・佐々木惣一は、「第9条が独立性を失った卑屈な国民を形成していくのではないか」と危惧を述べていました。その懸念のとおり、戦後憲法制定後、国防をおろそかにし、国民の国防意識が低下してきたことが、主権意識の低下を生じています。それがそのまま領土意識の希薄さに結びついているのです。その希薄さにつけこんで、他国が領土を不法占拠しつづけ、また領土や領海を侵犯しているのです。これに対して、わが国は言葉による抗議だけで、実力による行動を出来ない状態です。
実力の裏づけのない外交は、相手国になんら圧力を感じさせません。現行憲法の第9条をそのままにしながら、領土の返還交渉をいくら続けても、埒があかないのです。多くの日本人は、この点を自覚していないのではないでしょうか。憲法の放置と共に、不法占拠された領土を放置してきてしまったのです。そのことが、日本人の主権意識・領土意識を薄弱なものにしています。
領土問題は主権の問題、国防の問題であり、つきつめると憲法問題であることを、認識したいと思います。侵されているのは、北方四島・竹島・尖閣諸島より以上に、1億2千万の日本人の精神そのものなのです。











