ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

トランプ時代の始まり~暴走か変革か12

2016-12-28 08:21:03 | 国際関係
◆オーストリア
 12月4日にオーストリアで、大統領選のやり直し決選投票が行われた。この選挙は、米国大統領選挙でトランプが勝利した後に、ヨーロッパで初めて行われる重要な選挙だった。結果は、リベラル・ナショナリズムの自由党の候補ノルベルト・ホーファーが、緑の党前党首、アレクサンダー・ファン・デア・ベレンに敗れた。後者はマスメディアによって「リベラル系」と報じられるが、前者がリベラルの右派であるのに対して、リベラルの左派であり、左翼と協調的である。
 4月の第1回投票では、反移民・難民を掲げ、EUにも批判的な首相を掲げた国民議会(下院)第3議長のホーファーが、首位に立った。連立与党の社会民主党、国民党は惨敗した。その背景には、オーストリアは昨年、ドイツなどに向かう難民・移民の主要な経由国となったことで、国民に反移民感情が強まったことがある。
 5月に決選投票が行われ、ホーファーと、難民らへの寛容姿勢やEUとの関係重視を訴えるファン・デア・ベレンの一騎打ちとなった。後者が薄氷の勝利を収めたが、不正開票で憲法裁判所が再実施を命じた。
 そこで行われたのが、今回のやり直し決選投票だった。各種世論調査では、両者の支持率は「誤差の範囲の差」とされるほどの大接戦状態だった。最終的に勝利したファン・デア・ベレンの得票率は53.3%、敗れたホーファーは46.7%と、6.6%の差がついた。ファン・デア・ベレンは米大統領選でのトランプ勝利を「欧州への警鐘」として、「反極右」の結集を呼びかけた。一方、ホーファーは「有権者から離反したエリートは落選する」と強調し、自身も既存政治勢力と一線を画し、追い風にしようと目論んだ。移民・難民流入規制の強化を訴えるとともに、EUは個々の国家を過剰に管理しようとしていると批判して、EUからの離脱を問う国民投票を呼びかけた。
 ホーファーの支持者の多くは、若者である。その中には、多文化主義に反対するアイデンティティ回復運動の参加者がいる。この運動は、西欧諸国で若者に広がりつつある運動である。ホーファーは、選挙の敗北を認めつつも、次の選挙を目指して戦っていく姿勢を打ち出している。ファン・デア・ベレンは72歳だが、ホーファーは45歳である。2018年に総選挙がある。自由党は支持率で首位を走っている。近い将来、ホーファーが大統領になり、オーストリアが政策を大きく転換する可能性は高い。

◆イタリア
 オーストリアの大統領選挙と同日、イタリアで憲法改正の是非を問う国民投票が行われた。反対が約6割で、賛成を大きく上回った。改正案を否決されたマッテオ・レンツィ首相は辞任を表明した。
 賛否が問われた憲法改正案は、イタリア経済の一層のグローバル化を推進するための構造改革を進めやすくするために、議会制度に手をつけようとするものだった。政権側は下院と同等である上院権限の縮小を図ろうとした。レンツィ首相が国民投票の結果に進退をかけると発言したことで、事実上の信任投票となった。既存政治を批判する新興の政治組織「五つ星運動」など主要野党は、憲法改正は「首相の権限強化につながる」として反対運動を展開した。レンツィの与党、中道左派の民主党は、停滞する経済に不満を持つ国民の支持を集められなかった。グローバリズムによる「古い改革派」とレンツィ首相が退くことになった。
 この事態は今後、イタリア経済に強く影響することが予想される。イタリアは、ドイツ、フランスに次ぐユーロ圏第3位の経済規模を持つ。だが、イタリアの銀行の不良債権は約3600億ユーロ(約44兆円)と、ユーロ圏全体の約3分の1を占める。国民投票の結果、巨額の不良債権を抱える銀行の経営再建に影響が出れば、金融不安が広がる事態が懸念される。国内総生産(GDP)比約130%という、ユーロ圏でギリシャに次ぐ規模の債務を抱える財政への警戒感も増すだろう。イタリアが金融危機に陥れば、ギリシャの債務危機に続いて、再びユーロ圏が揺さぶられるだろう。
 「五つ星運動」は、著名コメディアン、ベッペ・グリッロが2009年に立ち上げた市民参加型の政治運動体で、既存政党を批判して台頭してきた。汚職撲滅、インターネットによる直接民主主義等を主張し、EUに批判的で、ユーロとともに離脱の是非を問う国民投票の実施を目指している。2013年の総選挙で躍進した。現在、下院の最大野党で、上院では第2野党となっている。反移民・反ユーロを掲げる地域政党「北部同盟」などとともに、2018年2月実施予定の総選挙を早期に実施することを求めている。今年6月の地方選挙ではローマ、トリノの両市長を制し、勢いを増している。この勢いが続けば、次期総選挙で政権に就く可能性もある。そうなれば、イギリスに次いでイタリアもEU離脱に動くかもしれない。
 このたびのイタリアの国民投票の結果は、来年予定されているフランスの大統領選やドイツの国政選挙に影響を与え、リベラル・ナショナリズムの諸政党への支持が伸びることが予想される。

 次回に続く。
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