ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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新安保法制の課題取り組みの加速を2

2016-05-20 08:45:52 | 時事
●平時と有事の中間的事態の対応(続き)

 平時と有事の中間的事態には、重要影響事態もある。重要影響事態とは、従来朝鮮半島有事や台湾海峡有事などを想定していた周辺事態の概念を改めたものである。放置すれば日本への直接の武力攻撃に至るおそれがある事態を意味する。
 新法制は、重要影響事態における自衛隊の他国軍への後方支援には、地理的制約がないことを明確にした。また、他国軍への弾薬提供や発進準備中の戦闘機への給油などの後方支援が可能である。日本のシーレーン(海上交通路)に位置する南シナ海やインド洋、中東でも重要影響事態が認定される可能性がある。
 これもかかる事態が発生したとき、実際にどう対処するのかの具体化が必要である。特に北朝鮮の核実験の強行、弾道ミサイルの発射実験が続き、米国・韓国と北朝鮮の緊張関係が高まっている現在の状況において、朝鮮半島有事にどのように対処するか、速やかに具体化されなけれなければならない。防衛当局や自衛隊は、そのための研究・準備を進めてきているだろうが、政治のレベルで適切な装備、人員、予算、訓練等がかのうにしなければならない。また、わが国はあくまで後方支援であるので、米軍支援を充実させる日米物品役務相互提供協定(ACSA)の改正も必要である。

●平時の対応

 次に、平時における対応として、まず海外の邦人救出がある。現在の世界では、いつどこでテロリストが日本人を拘束する事態が生じても不思議ではない状況になっている。それに対し、速やかに有効な対処ができるようにすることが課題である。
 平成25年(2013)1月のアルジェリア人質事件を機に、政府は自衛隊による在外邦人の輸送について従来の航空機や艦艇だけでなく、陸上輸送を可能にした。新法制では、これに救出任務を追加した。ただし、救出任務の実行には、当該国の同意のほか、当該国の権限がその地域に及んでいることなど3つの要件を満たさなければならない。また、要件を満たした時に、自衛隊が邦人を救出できるようにするには、自衛隊の対処に法的な根拠を定め、必要な武器使用権限を与えることが不可欠である。
 また、平時における別の対応として、自衛隊の国際平和支援活動がある。自衛隊による国際貢献については、他国軍の後方支援のための自衛隊の海外派遣を随時可能とする新法が施行された。新法施行によって、自衛隊は事前の訓練や検討ができ、任務を安全に遂行できる。ただし、支援実施には国会の例外なき事前承認を必要とする。事前承認を要件とすることは無制限に支援を広げることのないようにするために欠かせないが、逆に急ぎ実行すべきものに対して、国会休会中などに速やかな承認が可能なのか疑問が残る。
 新法制では、国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊が武装勢力に襲われた非政府組織(NGO)を救助する「駆け付け警護」や、平時から米艦を守る「武器等防護」なども実施できる。ただし、政府は夏の参院選への影響をにらみ、当面はこうした任務を見送る方針だと報じられる。
 だが、その間にも、駆け付け警護や武器等防護を求められる事態が発生する可能性がある。政局的な判断で、検討すべき課題を棚上げするのではなく、議論と準備の積み重ねが必要だろう。

 次回に続く。

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