ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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米国はパリ協定離脱宣言を撤回すべし2

2017-06-20 10:01:54 | 地球環境
国連気候変動に関するIPCCの役割

 1988年(昭和63年)以降、地球温暖化の問題について科学的な評価報告をして、国際社会の政策協議に基礎的な資料を提供してきたのは、IPCCすなわち「国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)」である。IPCCは、人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された。世界の科学者が発表する論文や観測・予測データから、政府の推薦などで選ばれた専門家がまとめている。事務局はジュネーブのWMO本部の中に置かれ、現在、参加国は195カ国に上っている。
 IPCCには、各国政府を通じて推薦された科学者が参加し、5~6年ごとにその間の気候変動に関する科学研究から得られた最新の知見を評価し、評価報告書(assessment report)にまとめて公表する。報告書には、科学的な分析のほか、社会経済への影響、気候変動を抑える対策なども盛り込まれる。国際的な対策に科学的根拠を与える重みのある文書となるため、報告書は国際交渉に強い影響力を持っている。
 IPCCには、三つの作業部会があり、第1作業部会(WG1)は科学的根拠、第2作業部会(WG2)は影響・適応・脆弱性、第3作業部会(WG3)は緩和策に関する報告書を作成する。また、それらの報告書を統合した統合報告書(Synthesis Report)が作成される。
 各作業部会の報告書は、「政策決定者向け要約(SPM)(Summary for Policy-Makers)」と、より専門的で詳細な情報が記載された「技術要約(Technical Summary)」からなる。
 IPCC総会で、評価報告書の作業計画に関する決定を行う。報告書作成のための執筆者や査読者等を決定する。
 IPCCは第4次評価報告書を発表した際に、『不都合な真実』で啓発活動を行っているアル・ゴア元米国副大統領とともに、2007年のノーベル平和賞を受賞して話題となった。

●IPCCへの信頼がゆらいだ事件

 ところが、IPCCへの信頼が揺らぐ事件が2つ起きた。それらの事件について、地球物理学者・環境科学者、増田耕一氏の見解の大要を記す。
http://macroscope.world.coocan.jp/ja/memo/ondanka/ipcc_ar4_error_etc.html

 「2010年1月に、2007年に発表されたIPCCの第4次評価報告書(AR4)に間違いがあるという報道があった。批判の論調は、第1部会が示した気候の将来見通しの科学的根拠を疑うものとなりがちだった。だが、具体的な指摘のほとんどはIPCC第2作業部会の報告書の記述についてのものだった。
 深刻なまちがいだったのは、第2作業部会の巻のアジアの章の、ヒマラヤの氷河が『2035年までに消滅する可能性が高い』あるいは『2035年までに面積が5分の1になる可能性が高い』という趣旨の記述だった。これは第1作業部会による雪氷の将来見通しとは独立したものだった。情報源をたどると、前者はある科学者の主観的発言を伝える雑誌の報道記事、後者は『極域を除く世界の氷河の面積が2350年までに5分の1になる』という見積もりが間違って伝わったものだった。
 IPCCでは、根拠とする文献は査読済み論文を原則とし、それ以外の材料を採用する場合は著者たちによって査読に相当する検討をすることになっていた。しかしこの場合は実質的にそれができていなかった。また、AR4原稿への査読者からコメントがあったにもかかわらず適切な対応がとられていなかった。
 また、オランダの海面下の面積比率がまちがっていた。これはオランダ環境評価庁が作成した資料の間違いを引き継いでしまったものだった。明らかな間違いだが、現状の説明の間違いであり、将来見通しへの影響はないものだった。
 ほかにも間違いや問題点がチェックされ、IPCCは翌年の総会で、報告書の査読のしかたなどいくつかの制度改革を行なった。
 次に、2番目の事件は、2009年11月、イギリスのイーストアングリア大学の気候研究ユニット(CRU)の研究者の電子メールが暴露された事件である。警察は、誰かが控えのメールサーバーに不当にアクセスした犯罪である可能性が高いとして捜査したが、容疑者や動機は特定されないまま捜査は、2012年に打ち切られた。この事件は、気候研究ユニット電子メール事件、クライメート事件と呼ばれる。
 追及は、不当アクセスの動機ではなく、暴露されたメールを書いた科学者に向かった。特に強い非難を受けたのは、CRUの所長のフィリップ・ジョーンズとアメリカのペンシルベニア州立大学教授のマイケル・マンだった。
 マンが筆頭著者となった過去千年間の北半球平均気温の推定は、IPCC第3次報告書(2001年)の第1作業部会の巻にとりあげられ、IPCCからの報道発表で、20世紀の温暖化の事実が検出されたことを示す代表例として使われた。一方、ジョーンズは、機器観測による過去百数十年間の気温を総合し、地球全体や北半球の平均値の時系列を示した。IPCC第4次報告書の温暖化の検出と原因特定に関する主要な根拠は気候モデルによる20世紀気候再現実験だが、そこで再現されるべき観測事実を示す役割をしている。暴露されたメール内容を使った言説は、この2種類の研究を疑うものだった。
 イーストアングリア大学、イギリス国会、ペンシルベニア州立大学はそれぞれ複数の外部有識者による委員会を作ってこの問題の評価をした。その結果、捏造などの不正の疑いは晴れたと思われるが、研究過程の情報の公開についてはさらに努力が必要だという指摘がされている。
 全地球平均気温の200世紀の変化傾向に関する限り、NASA GISS(Goddard Institute for Space Studies)のハンセンらや、NOAA NCDC (National Climatic Data Center)のピーターソンらが公開された観測データだけを使った推計で、基本的に同じ結論を得ており、仮にCRUを疑ってもAR4の結論はゆらぐものではなかった。温暖化にときどき懐疑的であったカリフォルニア大学バークレーの物理学者モラーが公開された観測データを推計するプロジェクトを始めたが、その初期的結果(2012年7月報道発表)も、AR4と基本的に同じだった。以後、20世紀の温度上昇の事実を疑う言説の影響力は弱まったと思われる。」

 以上が、増田氏の見解の大要である。氏の見解に対しては異論・反論があるが、結果として、これらの2つの事件は、IPCCへの信頼を損なうものとなっていない。2015年(平成27年)11月に行われたCOP21の協議は、IPCCの評価報告書をもとに行われ、パリ協定が締結されている。IPCCの評価報告書が科学的に間違いだらけで、無意味なものであれば、150カ国もの首脳が参加した会議が合意に達するわけがない。同協定には、196カ国が参加している。それらの国には、多くの科学者がおり、また気象・環境等に関する政府機構や科学研究機関がある。全く根拠のないものを、人類の大多数が信じ、人類の運命に関わるものとして取り組んでいるとは、私には考えられない。理論もデータも完璧ではない。問題点、検討点はある。だが、概ね正しいとして、世界全体で実行すべき課題が地球温暖化対策である、と私は理解している。

 次回に続く。
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