ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

北朝鮮の核がアジアと世界を危機に陥らせる3

2017-12-10 09:50:46 | 国際関係
 11月29日の北朝鮮のICBM発射実験について、わが国の新聞各紙は、社説にどう書いたか。主なものを抜粋する。

◆産経新聞
 「北朝鮮に核・弾道ミサイル戦力を放棄する考えなどない。それが改めて明確になった」
 「日本は、同盟国である米国や国際社会とともに、北朝鮮の核戦力完成を全力で阻止すべきだ。必要な手立てはすべて講じなければならない。連携、結束という言葉にとどまらず、日本自らのさらなる具体的行動が求められる。残された時間は多くはない」
 「新たな暴挙には新たなペナルティーが科されるべきだ。日本は、石油の全面禁輸を含む制裁強化を呼びかけたらどうか。ティラーソン米国務長官は声明で、『北朝鮮に物資を運搬する海上交通を禁止』する追加制裁を呼びかけた。経済制裁の一環としての海上封鎖である。その際、北朝鮮の隣国である日本は大きな役割を期待されよう。ところが、現行の船舶検査活動法に欠陥がある。海上自衛隊や海上保安庁は不審船の船長が拒否すれば、乗船して調査することはできない。安保理が海上封鎖を決めたとしても、日本は国連加盟国としての責任を十分に果たせない。政府と与野党は、今の国会で諸外国並みの海上封鎖に当たれるよう法改正に取り組むべきだ。国民を北朝鮮の核の脅威から守るため、迅速な行動が必要である」

◆読売新聞
 「国際社会の包囲網にもかかわらず、核ミサイルを喧伝けんでんし、独裁体制の生き残りを図る。そんな思惑が、一段と明白になったと言えよう。北朝鮮の危険かつ身勝手な振る舞いを改めさせるには、関係国が緊密に連携し、圧力を強化しなければならない」
 「日本は、不測の事態に備えて、迎撃能力を拡充すべきだ。来年度の予算編成では、陸上配備型イージスシステムの関連経費や、新型ミサイルの取得費などの適切な計上が欠かせない。
気がかりなのは、自衛隊、米軍、韓国軍が揃そろって参加する演習や訓練が行われていないことだ。今月中旬にロナルド・レーガンなど米空母3隻が日本海に入った際も、演習は日米、米韓での実施にとどまった。韓国側に、自衛隊との連携への反発があるためだとされる。中国が日米韓3か国の安保協力の緊密化を警戒し、韓国に慎重な対応を迫っているという事情もある。韓国は、ICBM発射直後に、対処能力を示すため、日本海でミサイル訓練を実施した。北朝鮮に融和的な文在寅大統領も、事態の深刻化を受けて、軍事面での対抗措置に出ざるを得なかったのだろう。日米韓の安保面での連携強化を躊躇ちゅうちょしている場合ではないはずだ」

◆日本経済新聞
 「今回の発射により、北朝鮮が核・ミサイル開発を自制する意思が全くないことが改めて明らかになった。軍事攻撃をちらつかせる米政権の我慢の限界を探りつつ、今後も核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す恐れが大きい。国際社会は北朝鮮への封じ込めを一段と強めていく必要がある。
 安倍晋三首相とトランプ米大統領は電話協議で『北朝鮮の政策を変えさせる』ため、圧力をさらに高める必要性で合意した。日米韓が主導してこれまでの国連安全保障理事会の制裁決議や独自制裁の順守を各国に求めるとともに、石油の全面禁輸を含めた追加制裁策を検討していくべきだ。
 北朝鮮への包囲網を強化するには、経済的なつながりが大きい中国の役割がとくに重要だ。中国は先に北朝鮮に特使を派遣したが、説得工作は不調に終わった。中国も今度こそ圧力重視に軸足を移すべきだ。石油供給の削減を盛り込んだ安保理制裁決議を着実に履行するとともに、さらなる制裁強化にも踏み込んでもらいたい」

 毎日・朝日の当該社説は、内容が薄すぎ、読むに堪えないものだった。

 わが国は、米国と北朝鮮の激突が起こりうることを想定して、防衛体制を整えねばならない。しかし、現在のわが国は、北朝鮮から日本列島の4つの島を核爆弾で海中に沈めるという最大級の威嚇を受けても、これに軍事的に対抗することはできない。専守防衛政策に縛られ、敵基地攻撃能力を持っておらず、非核三原則によって、防衛のための抑止力としての核兵器を持つことも、自ら禁じている。北朝鮮の暴発を防ぐためには、国連で非軍事的・経済的な制裁を強化するよう、国際社会に協力を呼びかけるしかない。
 では、本当に効果のある制裁は可能なのでしょうか。その答えが、一連の核実験であり、弾道ミサイルの発射実験である。今後、制裁のレベルを上げても、中国・ロシアは全面的には賛同しないだろうから、平和的な手段で北朝鮮の核ミサイル開発を止めることは、極めて困難である。
 わが国は、中国に続いて北朝鮮からも国家・民族の存立そのものを揺るがされる脅威を受ける状態になってしまった。国防を完備することなく平和を求める者は、アヘン患者のように滅亡するばかりである。戦勝国から押し付けられた憲法に呪縛され、これ以上、宙に浮いた理想論にとらわれていたら、日本は亡国に至る。日本の生存と安全を確保するため、専守防衛政策、非核三原則を見直すべきである。私の意見は、10年ほど前から下記に掲示している。あらためて、ご参考に供したい。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12a.htm
 第3章 日本併合を防ぐ方策
 (5)自衛の手段としての核抑止力の検討
 (6)総合的な国家安全保障の研究を

 このたび政府は、戦闘機用の長距離巡航ミサイル導入に向けた関連予算を平成30年度予算案に計上する方針を決めた。菅義偉官房長官は平成29年12月6日、本件に関して「安全保障環境は極めて厳しい。国民の命と平和な暮らしを守るために何をなすべきか、常に現実を踏まえてさまざまな検討を行う責任が政府にはある」と説明した。続いて、8日小野寺五典防衛相は、この決定を発表し、「相手の探知範囲や射程の圏外から日本に侵攻する部隊に対処することで、より効果的かつ安全に作戦を行えるようになる」と導入理由を語り、弾道サイル防衛にあたっているイージス艦の防護にも「必要不可欠だ」と強調した。ただし、「敵基地攻撃能力は米国に依存しており、今後も日米の基本的な役割分担の変更は考えていない」と敵基地攻撃能力との関連を否定し、長距離ミサイル導入は「専守防衛」に反しないと強調した。
 導入するミサイルは3種類ある。ノルウェー製のJSMは射程500キロで、F35A最新鋭ステルス戦闘機への搭載を予定している。米国製のJASSM、LRASMは射程900キロ程度で、F15戦闘機を改修して搭載する。いずれも対地攻撃能力があり、JSMとLRASMは対艦攻撃もできるという。現在、空自の戦闘機が運用している93式空対艦誘導弾(ASM)の射程は約170キロだが、JSMなら約3倍に伸びることになる。
 政府が巡航ミサイルの初導入を決めたのは、中国の海洋進出をにらんだ「島嶼防衛」が主目的だが、北朝鮮の弾道ミサイル基地などをたたく「敵基地攻撃能力」の保有を視野に入れた動きと見られる。日本の防衛政策上、画期的なことである。小さな一歩だが、この歩みをしっかりと踏み出してもらいたい。