仮 定 さ れ た 有 機 交 流 電 燈

歴史・文化・環境をめぐる学術的話題から、映画やゲームについての無節操な評論まで、心象スケッチを連ねてゆきます。

新作続々:とはいえ、不精確さも目立ったり

2008-03-29 02:23:32 | 書物の文韜
忙しいなかでなんとか仕上げた原稿が、年度末に来て次々と活字化されている。喜ばしいことだが、こちらが充分に校正できなかったり、あるいは媒体の関係で初校のみしか機会がなかったりで、充分推敲できずに世に出してしまったものもある。時間がないと、どうしても仕事が精確さを欠く。仕方のないことではあるが、やはり水準は保たねばならない。

左は、上智大学史学科編『歴史家の散歩道(プロムナード)』(上智大学出版・ぎょうせい)。『歴史家の工房』の続編で、同僚の先生方、先輩、同期の研究者らが執筆した、史学科の現総力を結集した内容である。ぼくは「〈積善藤家〉の歴史叙述―『周易』をめぐる中臣鎌足/藤原仲麻呂―」と題し、以前に早稲田古代史研究会や上智史学会大会で報告させていただいた(もう2年以上前になる。筆が遅いなあ)『家伝』と『周易』の関係について、東アジアの前近代的歴史叙述を解き明かす視点からまとめた。
右は、中部大学国際人間学研究所編『アリーナ』の第5号(近日中にamazonでも買えるようになるはず)。第二特集として、「天翔ける皇子、聖徳太子」が組まれている。大山誠一さんの呼びかけで、榎本淳一・曽根正人・八重樫直比古・本間満・増尾伸一郎・加藤謙吉・瀬間正之・吉田一彦・野見山由佳・榊原史子・藤井由紀子・小野一之・早島有毅・脊古真哉・小峯和明氏ら、錚々たるメンバーが執筆。ぼくの書いたのは「『日本書紀』と祟咎―「仏神の心に祟れり」に至る言説史―」で、『書紀』崇仏論争記事と『法苑珠林』との関係に触れた前稿を下敷きに、中国文献における「祟」記事の系統と、『書紀』の祟り神記事との繋がり/断絶について論じた。不注意から校正に失敗したので、ここで少々訂正させていただきたい。
207頁上段1行目「兵死者」の前に、「一部には、」を挿入。
209頁上段6~9行目「おおむね自然災害型のバリエーションとみてよいが、最後の事例のみ、」の後に「対象が王でも共同体でもない一個人である点、」を挿入。
4月に入れば、上智の教職員組合の広報紙『紀尾井』に、喰違見附の怪異を綴った短文が載る。5月までには、早島有毅先生還暦論集に書いた『三宝絵』の論文、『儀礼文化』誌に書いた供犠論研論集の書評も刊行されるだろう。いろいろあって原稿が遅れまくり、関係各位には大変なご迷惑をかけたが、なかなか時間の取れないなか、今年度もそれなりに頑張ったといえるのではないか...と、今日だけは自分を慰めておきたい。ま、いちばん出さなければいけなかった原稿がまだ完成していないのだけれど...(ごめんなさい!)
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