仮 定 さ れ た 有 機 交 流 電 燈

歴史・文化・環境をめぐる学術的話題から、映画やゲームについての無節操な評論まで、心象スケッチを連ねてゆきます。

夏の終わり:風情も感じずもろもろのことをやる

2007-08-27 02:23:31 | 生きる犬韜
ようやく、ひとつの論文が書き上がった。早速に編集担当のKさんに連絡、ものすごく〆切を過ぎてしまい、1ヶ月前にいちど寄稿を辞退したのだが、もしかすると受領してもらえるかも知れない(もしだめならば、他のところとの交渉である)。一息ついたが、気を抜く暇はない。すでに、別の二つの本の件で出版社より催促が来ており、うちひとつは電話で、寄稿可能日を明言させられた。8月いっぱいで終わるかどうか分からないが、とにかく書き続けるしかあるまい。
また、執筆作業の合間に(自然に空くわけではなく無理矢理空ける)、三つの雑誌・小冊子の編集作業を進めている。うち二つは上智大学関係(『上智史学』と「千代田学」関連の小冊子)、もうひとつは方法論懇話会の『GYRATIVA』最終号である。『上智史学』は印刷屋さんとの協同作業だが、「千代田学」と『GYRATIVA』は版下作成までぼくが担当、9月中には刊行しなければならないので忙しい。あちこちへメールを送って態勢を整え、あとはAdobeを駆使して黙々とDTPのデータ作成。目が疲れてしょうがない。

息抜きに、NHKの『世界里山紀行』第2回を観る。ポーランド北東部のビエブジャ・ナレフ湿地帯を舞台に展開される、水鳥・牛・人間の共生関係。「自然が恵んでくれる以上のものは望まない」とのフレーズが印象的だったが、人間が刈って牛の飼料としなければ湿地ゆえに植物遺体が重なり草が生えにくくなる、だから「人間がこの地の自然を守っている」のだというナレーションには違和感を持った。植生は極相へ向かって遷移するもので、人間は自らの利益になるように、その流れに手を加え留めているに過ぎない。それが豊かな生態系を作り出すのは、個々の動植物が当該情況に適応した結果であって、別に人間のおかげではないのだ。手を加えなければ別の状態が出現し、また異なる適応によってそれなりの生態系が営まれるだけだろう。…と文句をいいつつも、植物や動物に向けられた人々の眼差しには素直に感動した。人間が牧草を刈り集めるそばから飛来し、草の下から顔を出す蛙をねらうコウノトリは、田起こしの際に土中から飛び出す虫を目的に降りてくる、日本の〈穂落とし神〉=ツル、サギを連想させる。彼らが稲魂を運んでくると考えられたのと同じく、コウノトリには子供を運んでくるという伝承がある。両者の信仰が成立する背景には、やはりよく似た人間と環境との関わりがあったのだ。

そういえば、最近、家の周囲でサギをみかけることもずいぶん少なくなってきた。里山の諸々の風景は、テレビ画面を通してしかみられなくなっているのだ。一昨日、今年初めてツクツクホーシの鳴き声を聞いたが、まだ虫の声で季節の移り変わりを知ることができるとは、本当にありがたいことだろう(子供の頃には名古屋くらいまでしか生息していなかったクマゼミが、いつの間にか毎年境内で鳴いているが…)。忙しいが、自分の感受性まで荒廃させないよう気をつけねば。
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