Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

鳴る神

2013-05-14 17:51:16 | アニメーション
言の葉の庭


万葉集第11巻問答より

なるかみの すこしとよみて さしくもり あめもふらぬか きみをとどめむ

鳴る神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ

雷が少し轟き、曇ってきて、雨でも降らないかしら。あなたを引きとめられるのに。

  これに対して――

なるかみの すこしとよみて ふらずとも わはとどまらむ いもしとどめば

鳴る神の 少し響みて 降らずとも 我は留まらむ 妹し留めば

雷が少し轟き、雨が降らなくても、私は留まりますよ。あなたが引きとめて下されば。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

50分にも満たないアニメーションだというのに、冒頭約5分に見られるこの「間」の使い方はどうだ。それにしても背景が・・・これはウルトラリアリズムか。アニメーションや絵画において「実写みたい」という評価は必ずしも褒め言葉ではありません。新海監督の背景は、実写以上です。現実を凌駕する美。あたかもアダムが初めて世界を目にしたときのような、言語を絶する美観。

新海監督は光の表現に特徴がありますけれども、今作では「雨」を描くということで、太陽光を表現する機会は少なくなりそうですが、しかし雨や曇りの中にさえ光はあるのだ、ということは冒頭5分を見ただけで納得させられます。


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2 コメント

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Unknown (まりも)
2013-05-15 21:57:57
はじめまして。時々拝見しています。

濡れたコンクリートの地面の、微かに反射する様子などが今までのアニメーションとは比べ物にならないほどリアルですよね。新海さんの風景描画には定評ありますけど、どこまで行くんでしょうか・・・
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リアル (ペーチャ)
2013-05-16 02:12:37
まりもさん、こんにちは。コメントありがとうございます!

リアルな風景を基に、リアル以上の美を創出するという新海監督の技法は、その技術的な側面からはもちろん、哲学的な側面からも分析すべきであるような気がしています。彼の作品はいわゆる現実模倣としての芸術ではないし、無から生成する芸術でもありません。世界に対する認識を刷新する「異化」ならぬ「美化」としてぼくは理解していますが、この実践がどこまで行くのか、大変興味深いところですよね。
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