ちいさなさえずり

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野鳥方言名 ノジコ

2017-09-05 06:27:22 | さえずり民俗学

 

(2016.05.18)谷根

 

 “あおすとと”、“あおしとど”がノジコの方言名です。奈良時代の“しとと”が、ホオジロやアオジ、クロジに変化したことを、前回のホオジロの項で述べました。新潟県においては、ホオジロの“あかすとと”に対し、アオジを“あおすとと”と言っている地域が多いです。このことは、小林存「越後方言考アの部第2回」(『高志路NO.18』)(①)に、アオジを略名として方言名として扱い、正式名を“あおじとど”としていることからも分かります。しかしながら、門出集落を含む旧高柳町においては、アオジの近縁種ノジコを“あおすとと”と言っていました。

 アオジ、ノジコとも全体的に茶色をベースとした鳥であり、緑色や黄色がかった色彩を頭部や身体の下面に持つことから“あおすとと”とされたものと思います。旧高柳町周辺においては、アオジは旅鳥で春と秋の一時滞在ですが、ノジコは夏鳥として門出にやって来て子育てを行います。そのためノジコの雄は良く囀り目立ちます。この人々の認知度の違いにより、ノジコが“あおすとと”となったものと考えられます。

 一時滞在のアオジは、集落周辺の低い潅木や草地に群れていることが多く、高く飛ぶ姿や木の梢で囀るというような姿を見ることはほとんどありません。その存在自体を、門出集落を含む旧高柳町の人が意識していない可能性もあります。また、ノジコは、日本特産種でその繁殖分布も本州中部以北の山地に限られています(②)。新潟県においても、生息分布が上越地方、中越地方に限られる鳥です(③)

 ノジコについては、“あおしとと”が山形県に、“あおすとと“が岐阜県に残っています。しかし、前出のとおりノジコは局所的な生息分布です。そのためノジコの方言名はあまりありません。参考までに、アオジの例を述べます。”あおすとと“(岩手県)、”あおひとと“(福岡県)、あおしとと”(山形県)、“あおしと”(神奈川県、群馬県)、“あおしとど”(秋田県、宮城県、富山県)、“しとと”(富山県、鹿児島県)、“しとど”(青森県)などがありました(④)。アオジ、ノジコの違いはありますが、この“あおすとと”、“あおしとど”も古い言葉がそのまま残った例と考えていいと思います。

 

 

 (①) 小林存「越後方言考アの部第2回」『高志路NO.18』P3新潟県民俗学会(S11(1936).06)

(②) 高野伸二編『山渓カラー名鑑日本の野鳥[特装版]』P512㈱山と渓谷社(1990.06.01)

(③) 本間義治監 新潟日報事業出版部編『新潟県鳥獣図鑑』P237新潟日報事業社(S56(1981).05)

(④) 清棲幸保『日本鳥類大図鑑Ⅰ』和名索引P17㈱大日本雄弁会講談社(S27(1952).11)

 


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