91)鹿角霊芝と抗がん剤の相乗効果

図:鹿角霊芝は免疫増強作用により抗がん剤の副作用を軽減する効果が報告されている。さらに、動物実験の研究では、抗がん剤の抗腫瘍効果を増強する効果も報告されている。


91)鹿角霊芝と抗がん剤の相乗効果


【鹿角霊芝とは】
霊芝(レイシ)はサルノコシカケ科のマンネンタケの子実体で、学名をGanaderma lucidumと言います。鹿角霊芝(ロッカクレイシ)は霊芝の傘の部分が開かずに、鹿の角のように成長し、形が鹿の角に似ていることから名付けられました。
キノコに含まれる
ベータ・グルカンという多糖成分には免疫増強作用があり、がんの民間療法や漢方治療で使用されています。特にサルノコシカケ科のキノコにはベータ・グルカンが豊富に含まれています。
サルノコシカケ科の生薬としては、
霊芝(サルノコシカケ科のマンネンタケの一種)、猪苓(サルノコシカケ科のチョレイマイタケの菌核)、茯苓(サルノコシカケ科のマツホドの菌核)があります。日本の民間薬としてがん治療に利用されている梅寄生(バイキセイ)は、ブナなカシなどの広葉樹に寄生するサルノコシカケ科のキノコの一種のコフキサルノコシカケの子実体です。
マイタケもサルノコシカケ科のキノコです。サルノコシカケ科のキノコは「猿が腰掛ける」と言う意味があるほど、非常に硬く食用には適しませんが、唯一の例外がマイタケです。マイタケは軟らかく美味しく、栽培によって安価に購入できることから、食用のキノコとして人気があります。マイタケから抽出した多糖体成分は免疫増強のサプリメントとしても販売されています。
鹿角霊芝(Antlered form of Ganoderma lucidum)は霊芝(Ganaderma lucidum)の仲間ですが、免疫増強作用をもつベータ・グルカンの量が通常の霊芝や他のキノコ類よりも多いと言われています。
霊芝や鹿角霊芝の臨床効果として、
滋補強壮・免疫力増強・抗がん作用・肝臓保護作用・白血球増加作用・鎮咳・去痰などの広範な薬理作用が報告されています。
免疫増強作用に関しては、マクロファージやリンパ球やナチュラルキラー細胞の活性を高め、インターフェロンガンマなどの抗腫瘍性のサイトカインの産生を高めることによって、がん組織を縮小させることが、多くの動物実験などで示されています。

【低用量の抗がん剤と鹿角霊芝の相乗効果】
抗がん剤は副作用の耐えられるギリギリの量を投与するのが一般的な考え方です。少ない量ではがん細胞が十分に死なないので、腫瘍の縮小効果は得られないと言うのがその理由です。
がん組織の縮小効果を重視する立場では、たとえ副作用が強く出て、体力や免疫力を低下させるデメリットがあっても、がんを可能なかぎり徹底的に攻撃することの方が最優先されます。
しかし最近では、副作用が軽度に出るレベルに投与量を抑えるような低用量の抗がん剤治療の有用性も検討されるようになりました。
強力にがんを縮小させても、あまり延命効果が得られないので、むしろ、がんを増殖させない程度に抑え、体力や免疫力を温存する方が良いのではないかという意見です。がんを縮小させなくても「増大させなければ良い」という腫瘍の休眠や共存を目指す考えかたです。
副作用が出ない量の抗がん剤の抗腫瘍効果を高める方法も検討されています。たとえば、
温熱療法と抗がん剤を併用すると、抗がん剤の投与量を数分の1に減らしても、通常の量と同じくらいの抗腫瘍効果が期待できるという報告があります。
この場合、温熱療法はがん細胞の抗がん剤感受性を高めることが指摘されています。
ジクロロ酢酸ナトリウムが、がん細胞のミトコンドリアの活性を高めることによって、抗がん剤で死にやすくなることも報告されています。(ジクロロ酢酸ナトリウムについてはこちらへ
最近の報告で、鹿角霊芝を抗がん剤と併用すると、抗がん剤単独では効果が出ないような低用量でも十分な抗腫瘍効果が得られることが示されています。
(文献:Effects of the Antlered Form of Ganoderma lucidum on Tumor Growth and Metastasis in Cyclophosphamide-treated Mice. Biosci.Biotechnol. Biochem. 72: 1399-1408, 2008)
この研究では、乳がん細胞を移植したマウスに抗がん剤のシクロフォスファミドを投与する実験モデルで検討しています。
この実験モデルでは体重1kg当たり150mgのシクロフォスファミドで移植腫瘍の縮小がみられますが、体重1kg当たり50mgの投与量では全く腫瘍の縮小は見られませんでした。
しかし、体重1kg当たり50mgのシクロフォスファミドに、食餌の2.5%の量に相当する鹿角霊芝を食餌に混ぜて投与すると、150mgのシクロフォスファミド単独投与と同じレベルの腫瘍縮小が見られました。
つまり、
シクロフォスファミド単独では効果が出ない(したがって、副作用も出ない)レベルの低用量の投与でも、鹿角霊芝を併用すると抗腫瘍効果を高めることができることを示しています。
その効果の機序として、免疫細胞の活性化による抗腫瘍効果の関与が示唆されています。

通常の抗がん剤治療では、副作用によって体力や免疫力が低下するのが欠点です。このような状態で漢方治療によって免疫力を高めようとしても限界があります。
低用量の抗がん剤では、がんの縮小効果は少ないのですが、免疫力低下が起こりにくいメリットがあります。
低用量の抗がん剤に免疫力を高める漢方治療を併用すると、高用量の抗がん剤治療単独よりも、QOLの良い状態で延命効果が得られる可能性があります
漢方のがん治療では、体力や免疫力を高める生薬と、抗がん作用をもった生薬(抗がん生薬)を併用するのが原則です。
抗がん生薬は、アルカロイドやフラボノイドやセスキテルペンなどの抗がん作用をもった成分を含み、それらの抗がん成分によってがん細胞の増殖を抑える効果があります。
西洋薬の抗がん剤のような強いがん縮小効果はありませんが、低用量の抗がん剤治療と同じで、副作用が無く、ある程度の抗腫瘍効果が期待できる生薬です。
疫を高める生薬も、抗がん生薬も、それぞれ単独では、あまり効果が高くないのですが、両者を併用することによって、がんの縮小効果が得られることが理解できます

抗がん作用をもった生薬、あるいは低用量の抗がん剤や、副作用が無く抗がん作用を有するサプリメントなどと、鹿角霊芝のような免疫増強作用のある生薬を併用すると、がんとの共存やがんの縮小も不可能ではありません。(文責:福田一典)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 90)水滞(水... 92)がんの再... »