131)黄連(オウレン)の抗がん作用

図:黄連(オウレン)の根茎にはベルベリンなどのアルカロイドが含まれ、抗菌・抗炎症作用、健胃・整腸作用、鎮静作用など多彩な薬効を示す。がん細胞を死滅させる効果なども報告され、がんの漢方治療においても有用である


131)黄連(オウレン)の抗がん作用


黄連(オウレン)は、日本の本州以南に自生、または栽培されるキンポウゲ科の常緑多年草のオウレン(Coptis japonica)のひげ根を除いた根茎です。
葉の切れ込みや形から、セリバオウレン、キクバオウレン、コセリバオウレンなどがあり、根茎は肥厚し、珠を連ねたように短く節くれ、折ると断面が濃黄色のため「黄連」の名前がつけられています。
5~6年生の根茎を秋以降に掘り採り、水洗後、ひげ根を取り除いて天日乾燥します。
黄連の活性成分としては、
ベルベリン、パルマチン、コプチジンなどのアルカロイドが主体です。
ベルベリンなどのアルカロイド成分は、大腸菌や黄色ブドウ球菌や赤痢菌など多くの病原菌に対して、
殺菌作用抗菌作用を示します。
さらに、
健胃作用・止瀉作用・抗炎症作用・肝障害改善作用・中枢抑制作用(鎮静作用)・鎮痙作用・血圧降下作用・動脈硬化予防作用などの薬理作用が報告されています。
黄連の熱水抽出エキスには、消化酵素の活性化、マクロファージ(異物を取り込んで消化する食細胞)の活性化の効果も報告されています。
漢方治療では、気分のいらいら・興奮・のぼせ・不安・不眠などの精神症状や、下痢・嘔吐などの胃腸炎、出血(鼻血、吐血、下血)、各種炎症性疾患(湿疹・結膜炎・気管支炎・口内炎など)に対して使われます。
このような薬効は、がん治療においても役立ちます。
黄連はがんを移植したマウスの実験で
悪液質改善作用が報告されています。その機序として、炎症性サイトカインの産生抑制やがん細胞増殖の抑制作用などが示唆されています。(Cancer Lett. 158:35-41, 2000)
がん性悪液質というのは、がん細胞やがん組織の炎症細胞などから炎症性サイトカイン(炎症反応を調節する蛋白質)が過剰に産生される結果、食欲不振や体重減少や倦怠感などの症状が起こり、体が消耗していく病態です。末期がんにおいても、悪液質を改善することは延命効果が期待できます。
培養細胞を使った実験では、
黄連の抽出エキスやベルベリンが、がん細胞にアポトーシス(細胞死)や増殖抑制の効果を示す結果が多く報告されています。
最近の報告では、
乳がん細胞のホルモン療法の効果を高めることが報告されています。(Biochem Biophys Res Commun. 378:174-8, 2009)
この報告では、
エストロゲン受容体拮抗薬(タモキシフェン)と、オウレンの抽出エキスあるいはベルベリンを併用すると、抗腫瘍効果が相乗的に増強されました。
さらに、
アロマターゼ阻害薬(Fulvestrant)と併用した場合も、抗腫瘍効果が増強されました。
その機序として、ベルベリンには、乳がん細胞の増殖を促進するEGFR, HER-2, BCL-2, COX-2のがん細胞内の発現を低下させ、増殖を抑える作用があるインターフェロン-βやp21蛋白の発現を増やす効果が示唆されています。
このような増殖に関連する遺伝子の発現に影響を及ぼすことによって、
黄連はエストロゲン依存性の乳がんに対するホルモン療法の効果を高めることが期待できます。
マウスの移植腫瘍を用いた実験で、
黄連呉茱萸(ゴシュユ)を組み合わせることによって相乗的に抗腫瘍効果が高まることが報告されています。(Planta Med. 2009 Apr. 6)
この論文では。黄連と呉茱萸を6:1で含む
左金丸(ZUOJINWAN)という漢方薬の抗腫瘍効果をマウスの移植腫瘍で検討しています。その結果、この漢方薬はがん細胞のアポトーシスを著明に増加させました。
呉茱萸に含まれるアルカロイドのエボジアミンの抗がん作用については68話で紹介しています。
がんの縮小を目的とする漢方治療においてオウレンとゴシュユの組み合わせは試してみる価値はあるかもしれません。
(文責:福田一典)

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