477)医療大麻を考える(その7):がん治療のための医療大麻

図:医療大麻ががん治療に有用であることは医学的に証明されている。医療大麻の副作用(毒性)は抗がん剤に比べれば格段の低い。厚労省が抗がん剤の使用を認め、医療大麻の使用を認めないのは、医学的に明らかに間違っている。

477)医療大麻を考える(その7):がん治療のための医療大麻

アメリカがん協会(American Cancer Society)は1913年に設立されたアメリカ合衆国の非営利団体で、全米3400か所に支部を有しています。最新の治療法や患者会の案内など患者支援のきめ細かい情報を提供しています。このアメリカがん協会が発行する学術雑誌に「がんと医療大麻」に関する最新の総説が報告されています。 

日本語訳全文は以下のサイトを参照:

http://www.f-gtc.or.jp/medical-cannabis/medical-marijuana-for-cancer.html 

この論文では、がん治療において医療大麻を使用する医学的根拠があることをはっきりと述べています。
薬には副作用が必然的に発生しますが、いままで報告されている副作用は、大麻の医療使用を否定するほどのものではありません。この論文の要旨と臨床試験のまとめと結論の部分を以下に紹介します。

Medical marijuana for cancer(がん治療のための医療大麻)
Joan L. Kramer MD*
CA Cancer J Clin 65: 109122. 2015

【要旨】
大麻は古くから使用されており、近年、その医療用途に対する関心が増えている。
このような大麻の医療用途に関する研究から、ドロナビノールやナビロンやナビキシモルスのようなカンナビノイド製剤が開発された。
ドロナビノール(Dronabinol)は抗がん剤治療に伴う吐き気や、後天性免疫不全症候群(AIDS)の患者における食欲不振と体重減少に対する治療薬として多くの研究が行われ、米国の食品医薬品局(FDA)からこれらの治療薬として承認されている。
ナビロン(Nabilone)は抗がん剤治療による吐き気の治療薬として主に研究されている。
ドロナビノールとナビロンは他の症状に対する効果についても検討されている。
ナビキシモルス(Nabiximols)はアメリカ合衆国では治験でしか現時点では利用できないが、カナダと英国では多発性硬化症の筋肉硬直(痙縮)や痛みの治療薬として使用されている。
大麻の研究は吐き気や食欲や疼痛に関するものが多い。
この論文では、大麻とカンナビノイド製剤の医療使用に関する論文(特にがん治療に関するものを中心にして)を論評し、さらに大麻使用に伴う有害作用に関する情報についてもまとめている。 

臨床試験のまとめ:



まとめ(Summary):

大麻とカンナビノイド製剤は、がん患者を悩ます多くの症状を含め、様々な問題に役立つことができる。
カンナビノイド製剤に比べて大麻の臨床試験は少ない。この原因の一部は、大麻の医療使用において法的な規制が存在するためである。また、今日までに実施された大麻の臨床試験は対象人数が少ない小規模な試験が多い。
このように入手できるエビデンス(証拠)がまだ少ないことが、患者や医師が大麻使用に関して質の高い判断を行うときの妨げになっている。
多くの疾患の治療における大麻とカンナビノイド製剤に関する質の高い研究をさらに行うことによって、大麻の様々品種や株の臨床効果の違いやそれらの中に含まれる活性成分の作用をより明らかにできる。
そのような研究は、大麻とその活性成分をどのように投与するのが最も有効かを明らかにすることができる。
経口摂取と吸入における薬物動態の違いは、様々な適応疾患に対する臨床効果の違いを意味するかもしれない。
たとえば、吐き気や嘔吐の治療においては経口摂取の効果は弱い。吐き気や嘔吐の治療においては、大麻やカンナビノイドの吸入による摂取の方が経口摂取より効果が高い。
しかしながら、大麻喫煙の場合、煙には毒性物質や発がん物質を含んでいるので、より有害作用の少ない気化による吸入(vaporization)が大麻成分の吸入法として好ましい。
さらに、大麻やその成分のカンナビノイドの長期使用の効果に関する質の高い研究が必要である。
がんの転帰を検討する症例対照研究では交絡因子やリコールバイアス(recall bias; 過去の事柄を思い出す場合に生じるバイアス)などの問題があるので、前向きコホート研究を実施する必要がある。

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米国でも、大麻の医療使用が連邦法で禁止されているので、まだ大規模な前向きコホート研究は行われていませんが、今までの小規模な臨床試験の結果をみても、がん治療に大麻を使用するメリットがあることを、この論文のまとめ(Summary)の冒頭で「Both cannabis and cannabinoid pharmaceuticals can be helpful for a number of problems, including many affecting patients with cancer.(大麻とカンナビノイド製剤は、がん患者を悩ます多くの症状を含め、様々な問題に役立つことができる。)」明言しています。

また、米国国立がん研究所のがん情報のサイトでは、その概要(Overview)で以下のようにまとめています。(474話参照)

大麻は数千年もの間、医療目的で使用されてきた。

・連邦法では、大麻の所持は許可された研究目的以外ではアメリカ合衆国では違法である。しかしながら、合衆国内の多くの州や領地(準州, territories)やコロンビア特別区では、大麻の医療使用を合法化する法律が制定されている。

・アメリカ合衆国食品医薬品局(FDA)はがんやその他多くの疾患の治療に大麻を使用することを承認していない。

カンナビノイドと呼ばれる大麻の化学成分は、体中に存在する複数のカンナビノイドに特異的に作用する受容体を活性化して、特に中枢神経系と免疫系において様々な薬理作用を発揮する。

ドロナビノールやナビロンのような市販されているカンナビノイド製剤は、がん関連の副作用の治療薬として承認されている。

カンナビノイドはがん関連の副作用の治療において有益である可能性がある

と記載しています。

この最後の文章は「Cannabinoids may have benefits in the treatment of cancer-related side effects.」では「may have benefits」と不確実な推量の表現ですが、連邦法による規制によって十分な研究ができていないので、断定はできないが、いままでの研究から有益である可能性は高いというニュアンスです。

いずれにしろ、最近の多くの研究は「がん治療における医療大麻の有用性と可能性」を示唆しています。

つまり、昔はどうであったにしろ、最近の研究で、「大麻をがん治療に使う医学的根拠は十分にある」となったのが真実です。医療大麻の副作用(毒性)は抗がん剤に比べれば格段に低いことは明らかです。アルコールやタバコやカフェインより安全性が高いことも証明されています。(470話参照)

日本で、がん治療において、抗がん剤が認められて、医療大麻が認められないという現状に関しては、医学的根拠は何もはありません。
米国もカナダも「がん治療に大麻を利用する」方向で動いています。
医学的根拠から、大麻の医療目的での使用を禁止している大麻取締法の第四条の改正を要求する時期に来ています。

 以下のサイトにこの論文の日本語訳全文を紹介しています。

 http://www.f-gtc.or.jp/medical-cannabis/medical-marijuana-for-cancer.html

 

 

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