FUNAGENノート

私の考えたことや、読書から学んだことを伝えます。
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郷愁と現実の狭間で

2017-05-20 12:18:02 | コラム
 郷愁と現実の狭間で
 現在81歳の私は、戦争体験(小学校3年生ごろ)、樺太からの引き上げ、戦後の混乱期、復興期、高度経済成長期、バブル崩壊、現在の低成長期と過ごしてきました。
 今、郷愁として残ることは、たくさんあるのですが、ここでは、今日的問題として、私がもっとも憂慮していることを話題にするために、学生時代のことに触れたい思います。
 私の学生時代といいますと、昭和32年から35年ということになります。石橋内閣総辞職と岸内閣成立、東海村原子力発電所に原子の点火、ソ連、世界初の人工衛星「スプートニク号」の打ち上げ成功、カラーTV実験放送開始、コカコーラの日本発売開始などがあったのが、昭和32年です。この年にわたしは大学へ入学しました。
 昭和34年から35年にかけては、いわゆる60年安保闘争があり、闘争は、戦後最大規模に発展しました。わたしは、安保闘争の最中の昭和35年に卒業しました。学生時代は、連日デモが行われていました。
 そんな中、よく喫茶店で政治、経済、哲学、文化、科学などが話題にのぼり友人と議論したものです。夜中に下宿の隣人から、「いつまでやっているんだ。」とおしかりを受けたこともありました。もちろん、当時は東西冷戦という中での論争で、今考えれば、問題をいろいろと抱えていたことは確かですが、いずれにしても、こういう議論が学生の間で行われていたことは事実です。
 そこでは、私たち学生の学んでいる学問について、論じることも当たり前になっていました。その当時、私は心理学や数学を学んでいましたが、我々の学ぶべき心理学は何かなども論議したことがありました。当時、アメリカの行動主義心理学しか講義しない教授に対して、教授室におもむき、「もっと欧州の心理学も教えてほしい、ネズミの心の心理もよいのですが、人間の心の心理をもっととりあげてほしい、欧州の心理学は、人間をあつかっています。私たちは人間でネズミではありません。」と抗議したことを覚えています。
 私たちの時代は、行動主義心理学(刺激ー反応の心理学とも言われる)は、ネズミに刺激を与え、その行動を観察するということで、心理行動をとらえようと考えるのが支流でした。
 そのころ、ヨーロッパでは、言語心理学、精神分析学、ピアジェの発達理論、ゲシュタルト心理学などが盛んでした。どうも、アメリカと欧州大陸の科学に対する考え方の違いはいまも続いているように感じます。
 いずれにしても、私たちの時代の学生気質は、今の学生気質とはまったく違うと感じます。少なくとも、私たちの時代は、政治や経済や哲学を語ったものです。ところが、今はさんざんたる状態です。
 そんな中で、論文を発表したり、著者となってがんばっている若い人をみると、彼らが「自分たちは絶滅危惧種みたいなものなのです。」とうのもよくわかります。ですから、空気になじめず、大きな空気にのまれてしまい、絶滅の憂き目にあっているのです。そういう本を読む私も、ごたぶんにもれず絶滅危惧種なのでしょう。
 どうして、こうなってしまったのでしょうか。一番の要因は、東西冷戦の終焉でしょう。それまであった、東西対立の中に位置づけられたイデオロギーの対立軸がなくなったことでしょう。
 資本家対労働者の対立軸が、不明確になったのは、政党の政策や労働運動にも影響し、いまや、労働組合は、あってないような状況です。政党にいたっては、おなじようなことを、うまい言葉で、まるでデパートのバーゲンセールのように、コマーシャルを連発しています。政党間の間に対立軸がみえません。
 しかも、彼らは世の中の空気を読むことにだけ、励んでいます。だから、当選しそうなグループを目指して、離合集散にあけくれます。しかも、彼らの多くは、富裕層で貧乏人の気持ちなどわかっていないのです。政治家だけでなく、空気を読むのは、私たち日本人の特技のようで、高齢者も中年、若者、学生、児童生徒もみなそうです。政治家もその仲間です。そして、その特技(空気を読む技)の欠けた人たちは、いじめにあっている社会です。
 もっとも、今振り返ってみると、当時激しかった労働運動も、自分たちの待遇改善だけ、貧困層をどうやって救っていくか、日本の国の行く末など真剣には考えていなかったように思います。おまけに、組合員には、確固としたイデオロギーがあるわけでなく、そこの空気を読んで行動に参加していただけのように思います。(私も、当時組合員でしたから、よく実感しています。組合の指示に従わなければ、それこそいじめや仲間はずれにあう。)
 それが、今も尾を引いていて、話題は食べ物のことや健康の話ばかりで、それは全体の空気がそうだからでしょう。もし、その場で、今の世の中の現状など話題ににしたものなら、「そういう難しい話はせっかく楽しんでるのにしらけるからやめて。」ということになります。若者も、TVの放映でも、食べ物の話題となると、生き生きしています。そして、政治、経済、芸術の話となると、「むずかしいことは、わからない。」となってしまっています。そんなに難しいのでしょうかね。そのせいでしょうか、NHKでは、学校ごっこみたいなまねをやって、クイズまがいの番組を放映していますね。解説者もわからない人に説明するような、上から目線を感じて、あまり関心できません。言葉使いもあまり感じがよくありません。私たちは、生徒でも学生でもないのです。
 私は、現在の対立軸は、分断社会にどう立ち向かうか、格差社会にどう対処するかを巡っての対処方法のちがいだと思います。
 あくまでも、「新自由主義をつらぬき、自己責任を主張し、実力のあるものは、裕福になる。能力のないものは、いたしかたないが、そのうち貧乏人にも恩恵がくると考える」か、そうではなくて、「新自由主義は、競争を激化させ、格差拡大をまねく。だから、進学や仕事の機会を平等に与え、互いに助け合い、最低限の文化生活を保証する社会、共生社会を目指のすか」という二つの対立軸だと思うのです。その対立軸が見えなくなってしまっているのです。
 それにしても、日本では、あまり分断化に関心がないようです。世界を見渡すと、アメリカやヨーロッパでは、この分断化がとても深刻です。現地に詳しい日本人や研究者が、いろといろと報告してくれています。TVや新聞、あるいは書物で、そのなまなましい状況が伝わってきます。そこでは、学生を含む国民たちが、抗議の声をあげているのをよく見ます。
お隣の韓国でも、アメリカでも、そして欧州の国々でもです。
 ところが、日本はなんて平和なんでしょう。表向きはすくなくともそう見えます。しかし、本当にそうでしょうか。それは、たぶん自分たちの近くでは、なにごともなく、ともかく平和なんでしょう。なぜなら、そういう同質の共同体のなかだけで暮らしているからです。
 非正規雇用者と正規雇用者の格差、過重労働の問題、貧困者の増大、自殺者の増加、毎日のように報道される悲劇的事故、事件の数々、少子高齢化など多くの問題を抱えているのです。それから、移民ではないけれど、外国人が、抜け道を使って、低賃金で働いているのが現実です。慢性的な人手不足が、それに拍車をかけているのです。
 分断は、日常のこんなところで見られます。たとえば高齢者と若者の分断です。SNS活用を使いこなす世代と、ITにはまったく疎い高齢者の住む世界がちがうのです。
 また、高齢者の間でも、過去の仕事の関係で、年金支給額もちがいます。だから、そこでも住む世界がちがっています。有る程度の年金をもらっている方は、みな高齢者は自分と同じような年金をもらっていると思い込み、なんら問題にしていない。(なぜなら、そういう仲間しか集まらない共同体にいるからです。)
 非正規雇用者と正規雇用者のあいだでも、当然分断がおこっています。所得格差は、生活自体に格差を生みます。大学時代同級生であっても、どちらの雇用になるかによって、高級な物(食べ物、持ち物、服装など)に格差ができ、まともにつきあいきれない非正規雇用者がふえていて、そこでも、しんこくな分断が起きているのです。
 ところが、その分断を意識して感じようとしないのか、周囲が見えずに感じていないのか、どちらなのでしょうか。それは、たぶん徹底した個人主義になってしまい、あたりが見えない人間になってしまっているのでしょう。とにかく、自ら現前する存在を見ようとせず、流されてくる情報に右往左往しているのが今の日本人の姿です。しかも、個人主義は、副産物として、人権思想の欠落を生みます。
 その個人主義が、現政権の正体を見破ることができず、少しでもお金が増えているので、(はたして、増えているのでしょうか、増えている人は恵まれた環境の人でしょう。)今も、なんとなく支持しているのでしょう。もちろん、野党もだらしないと思います。もっと、アメリカのサンダース氏や英国のコービン氏のような人物が、表に出てくるような状況は、日本では考えられないのでしょうか。対立軸をきちんと掲げた政治集団がどうして生まれないのでしょうか。日本人は、どうして笛ふけど踊らずなのでしょうか。昔のことを思い出しながら、現代社会の問題を考えてみました。


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