#590: 私の小さな夢

2014-01-19 | Weblog
Stars shining bright above you
Night breezes seem to whisper "I love you"
Birds singin' in the sycamore trees
Dream a little drream of me…

星はあなたの上で瞬き
夜風は“アイ・ラヴ・ユー”とささやきかけているみたい
鳥はプラタナスの木々の間で歌っている
どうぞ 少しでも私の夢を見てください…

こういった調子の、どちらかと言えば控えめな女心の告白の歌である。
タイトルは“DREAM A LITTLE DREAM OF ME”、「私の夢を見ておくれ」とか「私の小さな夢」という邦題がつけられている。

“SIDE BY SIDE”、“I'M THROUGH WITH LOVE”、“MAKIN' WHOOPEE”など、人間味あふれた温かい歌を数多く書いたドラム・カーン(管)、いや、スイドウ・カーン(管)、もといガス・カーンが作詞した(笑)。
作曲したのは、ウィルバー・シュワントとファビアン・アンドレで、二人はウィスコンシン州出身の同郷でそれぞれギターとベースの名手として知られていたが、クラシック音楽の素養もあり、おもにラテン音楽を得意にしていた。
1931年、昭和6年の作品で、20世紀ポピュラー音楽の夜明けの時代であった。

古き良き時代の雰囲気を濃厚にたたえたラヴ・ソングではあるが、スウィートでよくスウィングする楽曲なので、古めかしさをあまり感じさせない。
リッキー・ネルソンの親父さんでスウイング時代のバンドリーダー兼作曲家であったオジー・ネルソンの楽団やウェイン・キング楽団が紹介し、ケイト・スミスが最初にヒットさせた。

オジー・ネルソン楽団やウェイン・キング楽団版はさすがに見つけられなかったので、まずは太めぽっちゃりのケイト・スミスのピアノ弾き語り(オーケストラ伴奏つき)を彼女のTVショウからどうぞ(こちら)。


(Kate Smith)

この歌、彼女のヒット以後しばらく忘れられていたのだが、47年に決してリスナーを裏切らないナット・キング・コールのキャピトル盤がリヴァイヴァル・ヒット、50年にはルイ・アームストロングとエラ・フィッツジェラルドのデュエット盤がヒットした。
特に、エラの名唱とルイの溌剌としたトランペットをフィーチャーしたデッカ盤は愛すべき出来栄えである(こちら)。

以後、ポピュラーソングのスタンダードとして多くの歌手によってカヴァーされることになるが、歌詞の内容がどちらかといえば女性向きの歌なので女性歌手によって歌われることが多かった。
ところが、不思議なことに多くの男性歌手がこの曲を得意にしているのだ。
ナット・コールをはじめビング・クロスビー、ミルス・ブラザース、ディーン・マーティンなどいずれも甲乙つけがたい出来で、どれも聴いていて楽しい。
ルイ・アームストロングなどは、エラとのデュエットのほかに、単独でも吹き込んでいて十八番にしていたナンバーなのである。

だが、数多くの歌手がカヴァーしたわりに、全米ヒット・チャートに入ったのは、フランキー・“ローハイド”・レインのヴァージョンだけだったというのが不思議といえば不思議である(こちら)。

68年にママス&パパスのママ・キャスことキャス・エリオットが再びリヴァイヴァルさせたが、ある意味で、この歌で最も記憶に残るヴァージョンではないだろうか。


(Mama Cass/Dream A Little Dream Of Me)

彼女は、フォーク・ロック・サウンドで成功した巧みなコーラス・ワークが売りのママス&パパスを経てソロに転じ、最初のヒット(全米12位)がこの曲であった。
さりげなく歌いつつも、温かいパーソナリティまで伝ってくるような表現力が素晴らしい(こちら)。
この歌の理想に近いヴァージョンではないかと思う。

ちなみに、エラも含めて、ここに紹介した女性歌手がいずれもぽっちゃり系であることは果たして偶然であろうか(笑)。
しかもみんなチャーミングだというのがうれしいね。


ママが乗る体重計がかわいそう (蚤助)




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