#319: 川柳あれこれ・その3

2010-12-26 | Weblog
 川柳は前句附から始まった。小生の好きな古川柳「雷を真似て腹掛けやっとさせ」という句は、「こわいことかなこわいことかな」という前句への附句として詠まれたものである。すなわち、前句がお題ということになる。題があって、その題に即した句を作るというのが川柳の基本であった。

 現代の川柳でもその形式は引き継がれているが、お題の方は、名詞、動詞、形容詞等はもちろん、外来語もあるし、中には、記号、文章、音楽、匂い、味などで出題される「印象吟」というものもあるようだ(笑)。

 当然ながら、題を外して意味の通じないものは良い句とはいえない。題自体が句に入っているかいないかに関わらず、句として観賞に耐えうるものでなければならないだろう。はっきりしているのは、ダジャレは川柳ではないということだ。

 句会などでは絶対に通用しないといわれているのが「中八」句である。かつて流行したギャグ「赤信号みんなで渡れば怖くない」というフレーズは“六八五”だが、読んだ時のリズムは悪いものではない。歌謡曲の歌詞にもよくみられるように“八音”は、忌み嫌われるほどのものではない。しかし、250年に及ぶ川柳の歴史に残る膨大な数の句のうち「中八」の句は極めて少ない。要するに、川柳は「中七」がキモなのである。なので「中八」の句だというだけで、「実際の句会では通用しない」とか「川柳作家が選者として名を連ねる雑誌などでは選考の対象外」ということになるのだ。

 俳句のように「や」「かな」「けり」という切れ字を使わず、口語体の川柳は、一読して読者が句を解する(=感情移入する)「間」「呼吸」を持っていない。その「間」や「呼吸」を生み出す役目を果たすのが「中七」であり、七五調という形式ではないだろうか。万葉の時代から、日本語を使った「うた」は様々と作られてきたが、作者の思いを伝えるという点では、五七五はやはり制約がある形式である。しかし、その制約は、作者が言い尽くさない部分、作者の意図を汲み取るという作業を観賞者にも要求するのである。そこが深い表現の可能性の源泉ともなっているのではないだろうか。

 川柳の難しさは尽きない。

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 今や宅配便は、社会生活になくてはならぬ存在になっています。町を歩くと宅配便のトラックや配達人の姿をよく見かけるようになりました。師走なのでした。しかし、様々な理由で田舎に帰ることができない人も大勢います。宅配便は故郷と都会を結ぶ役割も担っているように思います。

 「地方紙に包まれ届く故郷の味」



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2 コメント

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中八 (伊閣蝶)
2010-12-27 12:07:45
寒くなりました。
川柳の中八のこと。
そこまで厳しいとは思いもよりませんでした。
逆にいえば、それほどまでに七五調という形式が日本の詩歌にとってキモであるということになるのでしょう。
しかし、ご指摘の通り、今の歌謡曲の歌詞ですと、八と五で出来ているものが大半で、それゆえに「ああ人生に涙あり(水戸黄門のテーマ)」のメロディで歌える歌(どんぐりころころとか犬のおまわりさんとか)などといった遊びが可能であったりします。
八と五と書きましたけれども、実は五も長音と休符で整えていることを鑑みれば、八が中心となっているのではないかと思います。
これは恐らく、西洋音楽の四分の四拍子が口語体の唱歌などを通じて庶民の間に広がったことと無縁ではないのではないでしょうか。
都々逸や長唄や謡曲や詩吟などを、西洋音楽的な味付けをなしに歌うのは相当の熟練と才能が必要で、特に西洋音楽をベースに音楽教育を受けた人たちにとっては大変な難事ではないかと愚考します。
作曲家の三木稔さんは、その作品である「レクイエム」の中で、正しく五と七をそのまま拍子に使った曲を作っておられますが、これを初めて歌った時にはその拍子がなかなかとれず大変苦労しましたから。
三々七拍子も、休符を入れれば四々八拍子になってしまうわけで、私たちがついつい中八の誘惑に負けそうになるのも、日本古来の五七調のリズムが既に形骸化しつつあることの表れなのかもしれません。
危ういことです。
せめて川柳の句作だけでもこのリズムをきちんと守らねばならないなと、改めて感じました。
中八 (管理人)
2010-12-27 21:38:41
こんばんは。
いつもながらのご高説、ありがとうございます。
思わず「然り」と合いの手を入れたくなりました。蓋し炯眼だと思います。
小生の句も時折、中八句があって、気づいた時には反省してしまいます。
リズムが悪くはないので、無意識のうちに中八句になっているのです。
あえて意識していないと、中八は癖になってしまうようです。
もっとも、あえて中八や破調にして効果を強調するという高等なテクニックもあるので、事はそう簡単なものではないのですが…
そう、川柳は難しい、のでアリマス。

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