「アニマル・スピリッツ」

2017-06-22 | 読書
【本の紹介】
●人口と日本経済/吉川洋著/中公新書/2016年8月25日発行/760円
 著者は、人口の変化による経済への影響に関する定説や思い込みを検証し、正していこうとしている。
 日本の将来について、人口の減少が経済の縮小をもたらすとの懸念があるが、そうではないとデータをもって示している。明治以降の日本経済を見ると、経済成長と人口はほとんど関係ないと。
 そして、経済成長をもたらすのは、イノベーションであると説く。労働生産性の上昇をもたらすのは、「資本蓄積」や広い意味の「技術進歩」、産業構造の変化であると。その中では、高齢社会における社会保障、出生率の低下や長寿の影響等についても語られる。
 成長の源泉たるイノベーションについては、高い需要の成長を享受する新しいモノやサービスを生み出すことであると言う。 需要の飽和による停滞を起こさせないためには、それが肝要であると。
 本書を読みながら、気になっていたのは、著者は、イノベーションを起こす元となるものについて、どうとらえているのかと言うことだった。結局、やるかやらないかは、人にかかっているのである。つまり、新しいモノやサービスを生み出そうとする人の動機や意欲は何によるのかと。
 最終章の終わりあたりに、「問題は、日本の企業が潜在的な需要に応えるようなプロダクト・イノベーションを成しうるか、である」とあった。まさに、そこにかかるのである。
 本書末尾にいたって、シュンペーターやケインズの言ったことが記されている。「何よりも未来に向けた自らのビジョンの実現こそが本質的」、「最終的には『アニマル・スピリッツ』と。「健全なオプティミズムが失われ合理的な計算のみに頼るなら企業は衰退する」と。経済学者も、とどのつまりは、人間性に着目するのかと思った。
 要するに生命体として元気で、未来への希望・意欲を燃やし続けることが大事ということか。ある意味で、世俗的な競争心をもち、他より優位でありたい、社会的な評価も得たいという、一歩間違えば、あまりに世知辛い道でもあると心得ておくべきかと思った。
●余談
 そういうことで、本書に老子や儒教の教えのことも出てくるのも、そうかと思わせる。著者は老子の考えは、社会活力を生み出さないと言うようなことで評価していない。確かに、そうなのだ。ただ、経済の場面で、老子を持ち出すのはどうかとも思う。わたしは、老子は、人の心の平静を得る道を求めた。「足ることを知る」ことも大切で、それがなければ、単なる餓鬼とも言える。
 一方、儒教の方は、その道徳は、世間一般的なものでしかない、もっともらしく生きるというレベルでしかないとも言えないか。しかし、実際の社会は、それが主流でなんとか成り立っていると言うのが現実でないか。みんなが納得し易いラインで行こうというものでないか。
 経済成長と人の幸福の話は、本質的には別次元と思う。
 ザッと読んで、ポイントだけ備忘にと思ったが、書きすぎた。
 イノベーションには、純粋な知の探究という側面もある。持っていたい人のひとつの性向だ。
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