こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

人生はあっという間だな、あと少しの間どうやって生きよう

ダウン症の人のこと、もっと知ってください。

2012年09月22日 | 家族のこと

先日、学会で広島を訪れた時、路面電車で修学旅行の小学生と乗り合わせることがあった。その時、ちょっと驚いたのだが、30人くらいの生徒の中に少し小柄な子が一人いた。

「あれ?あの子、ダウン(症)だ」誰にでもすぐわかる特異な顔貌。

どうやら、ダウン症の子が一緒のグループに入っているようで、静かに電車に乗っていた。

これは、とてもいいことだと思った。

 

 

私の弟に限らず、ダウン症の子はとてもおとなしく、明るく、礼儀正しく、きれい好きだ。奇声を発したり、暴れたりすることはないので、普通学級で一緒にいても、先生が学級運営に困ることはまったくない。

そんな、ダウン症の子と一緒に旅行をしているというのは、染色体数が46,XYである大多数の人にとって、染色体数が47,XYのダウン症の人を知るいい機会だ。

その子もほかの子たちと一緒になって談笑することはできないが、一生懸命(ダウン症の人は、なんでも真面目にするのでこちらが泣けてくる)電車に乗っていた。

 

ほかの子たちも、行儀が悪いとは言えないが、普通の小学校6年生の無邪気さで電車に乗っていた。その子たちはダウン症の人の礼儀正しさに、今は気がついていないだろうし、永遠に気がついてくれないかもしれないが、それでもダウン症の人が危険な人ではないということは知ってくれるだろう。

 

ダウン症の出生前診断が、血液検査だけからできるようになり、これまで以上にダウン症の出生前診断率が上がることになり、ダウン症と診断された胎児の中絶率が上がることになるかもしれないという。

 

高齢出産の女性には自分の遺伝子を持った子を持つチャンスというのはそれほど残ってはいない。もし、その数少ないチャンスの一人だった子がダウン症だったらどうするか。ということだ。NHKスペシャルでも先日、そんな特集を組んでいた。

 

今日のこのブログのこの記事で、私は命の軽重を論じたいのではない。無軌道な検査医学技術の発展も科学の進歩の一つの姿であり、致し方無いと思っている。

私が一番残念なのは、「ダウン症児=よくない子」という扱いをもっていられるということだ。

何度も言うが、ダウン症の子が一緒にいても、学級崩壊にはつながらない。それに、ダウン症の子が義務教育の過程を終わらせることができるほどではないにしても、生まれつき、自分たちと違う子がいるということを学ぶことは大切だと思う。

唯一心配なのは、学級崩壊させるような子がダウン症の子をいじめることだ。

決して、ダウン症の子は、人をいじめることはないのに。ひどい話である。

いじめをしたり、非行をして、学級崩壊をきたす子は普通学級に通い、そういった心配の全くないダウン症の子は、普通学級に進ませてもらいない。というか、そうすることで、普通学級に通う子はダウン症の子が特殊な子供に見えてしまう。

 

医療経済を含めた議論も大切とは思うが、まずは、ダウン症の人のことをよく知ってほしい。

そして、高齢出産とか染色体の不分離とかそういう単なる現象面のことではなく、なぜ、ダウン症の子が生まれてくるのか、私たちの遺伝子が何を語っているのかに思いをはせてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

ダウン症の出生前診断:来月から妊婦血液検査を試行

毎日新聞201208291157分(最終更新08291249分)

 

妊婦の血液だけで、胎児にダウン症などの染色体異常があるかを99%の精度で調べる米国の会社が開発した新型の出生前診断を、国内の2病院が来月から試験的に開始することが分かった。流産の危険があった従来の検査に比べ、安全に調べることができる一方、異常が見つかれば安易な人工妊娠中絶にもつながることから、カウンセリング体制の整備などが課題になりそうだ。

 

検査を始めるのは国立成育医療研究センター(東京)と昭和大学病院(同)で、いずれも臨床研究として行う。対象は胎児の染色体異常のリスクが高まる35歳以上の妊婦などで、費用は21万円程度を予定している。日本人での検査の精度を調べるとともに、専門医によるカウンセリングのあり方を検証し、この検査が国内に普及した場合の課題やモデルケースを探る。31日に2病院や今後導入を検討している病院の医師らが研究会を発足させる。



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9 コメント

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引き返す勇気 (きらきら星)
2012-09-23 09:13:05
山で遭難しそうになったら、山はいつまでもそこにあるから、またこれるので、引き返す。原子物理学者。研究していたら原爆ができてしまったことについての反省。あのときいくらでも引き返す機会があったのに、先へ進んでしまった。原爆水爆ができてしまった、との反省。遺伝子学者も、先へ進んでいいのかどうか、いつも自問自答しながらやってほしいと思います。引き返す勇気のない人は、超最先端の研究にたずさわるべきではありません。人間の感性の発達は遅々として進みません。自分の生きている60年~70年でもちっとも変化していません。人間がもっともっと賢くなりいろいろなことに対処できるようになればなければ、遺伝子情報を自分たちが自由に操れるなんて、考えるべきではありません。
そのうち、どっちを向いても時の政府の言いなりの人々しかいない世の中になってしまいます。
長文になり申し訳ありません。 (まる子)
2012-09-23 22:32:16
個人的に、ダウン症を始め何らかの個性を持っている人々を知る事や、相手との距離を作らない為に必要だと思うのは、幼い頃から接点を持たせる事ではないかと感じます。

昔、保育園でお手伝い(バイト)した時に、ダウン症の子がいたけれど、こんな風に物心がつく頃から一緒の環境で暮らす事が、何よりもお互いの為になるのではと思いました。

幼い頃から接点を持たずに過ごしていると、どう接して良いかも分からないから、からかったり変に接してしまう気がします。


研究で色々な事が出来るようになってきているけれど、何よりも研究を実用化する人間、利用する人間の倫理観が重要なのかも知れないですね。
きらきら星先生のコメントも拝見致しましたが、遺伝子だけでなく、自然に置き換えても人間が自由に操作しようと、思い上がってしまうようでは駄目なのではないかと感じました。

引き返す決断は勇気がいるでしょうね。
人類の行き着くところ (colocolokenta)
2012-09-24 19:30:28
きらきら星さん、まる子さん
コメントありがとうございます。
人類の行き着くところというのは、どこなんでしょうね。最近、そんなことばかり考えるようになっています。今日の記事もそんなんになってしまいましたが、生きていれば、きっと良いこともある。そう考えたいです。
ダウン症児は隔離されている (差別や偏見は無知から生まれる)
2013-03-12 08:54:38
ダウン症のことを知りたくても、今の日本社会では(とくに東京では)、難しいですね。幼い頃から、ダウン症は養護学校か特別支援学級に行かされてしまい、普通学級にはなかなか入れてもらえません。一般の社会から隔離されてしまうわけですから。ダウン症の人と接してみたいと思っても、周りにはいません
誰なら良くて、誰はダメ。 (コロ健)
2013-03-12 17:41:28
私の弟がダウン症だということは、このブログの中で何度か紹介させてもらっています。ダウン症の人は”悪いことができない”遺伝子を持っているとしか思えないほど善良です。孤独にも大変強いです。ですから、私たちの社会生活レベルにあっていないというだけです。教育の場に一緒にいてくれれば、存在そのものが教育と言えるほどです。といったところで、私は一緒に暮らしていたし、弟の友人にも多く接したから人よりはよく知っているというだけです。
おそらく、IQだけでわけるとなるとダウン症は普通学級には永遠に入れないでしょう。線引きをどういった方法で行うかというのは、大変難しい問題です。誰なら良くて、誰はダメとなっていくに違いないからです。
すべての人が一生懸命考えていかなくてはならない問題です。
Unknown (Unknown)
2013-08-29 01:04:36
ダウン症のことを良い子ばかりだと決めつけるのはのはいかがなものかと思います。弟さんは恵まれています。ダウン症の中でも暴れ自傷行為し奇声を出す子もいます。私の子です。もっと深くあなたがダウン症というものを知ってほしい。切ないです、可愛いんだけど辛いです
さまざまな個性 (コロ健 to Unknownさん)
2013-08-29 08:50:32
Unknownさん
弟と一緒に、ほかのダウン症の人とキャンプに行ったりして、自分はよく知っている方だと思い込んでいました。反省します。
人間みな十人十色、さまざまな個性があることを考えないで記事を書いて、つらいお気持ちにさせてしまったようで、お詫びします。
ちなみに、私と弟は喧嘩をすることがあります。弟と妹も喧嘩をすることがあるらしいし、父や母にはわがままを言って困らせることもあるようです。感情のコントロールが上手にできないときがあるようです。ただ、そういうのは弟に限ったことではなく、私は私で、仕事や人間関係がうまくいかなくて大声を出したくなる時があります。
Unknown (Unknown)
2013-08-30 14:45:38
8/29のものです、こちらこそすみません。変な事をしてしまったと思いお返事があると思わず覗いて見ましたら、、、ありがとうございました。深く知ってほしいのは決めつけてしまうとその誤解でその子にあった教育、療育に害が出てくると思うからなんです。個人個人タイプがあることを特にダウン症に関わる先生、ドクターに知っていただきたいのです。これはダウン症だから~ダウン症だからこうなることはないとおっしゃる方もいて時代遅れに感じる事がまだまだあると思います。
ダウン症は穏和で人懐っこい育てやすいとの見解が先にたつなか自閉傾向のある子達も多く、気付けばダウン症としての療育で過ぎてしまい小学生になり はっきり違いが出てきて親も子もパニックになるのです。
ダウン症だから~と何年も言われその子にあった療育も受けられずなんか違うなんか違うで苦しみ
今はやっとこさ(-_-;)ダウン症だから~ではなく、この子のタイプで色々と考えて下さる先生やドクターに出会えました。
もちろんダウン症なのですが、ただ良いこばかりと言われると、私もそう思っていたから、、。羨ましいんです、それで変なコメント入れてしまい、すみませんごめんなさい。
お返事ありがとうございました。
私も俗にいう健常者でも障害があると思います。大声出したくなります。俗にいう障害者が生活しやすい社会を願い、我が子のにも生活しやすい方法を見つけ出して元気にやっていきたいと思います。長くすみません。お元気で
前を見て (コロ健 to Unknownさん)
2013-08-31 00:04:59
お返事ありがとうございました。
私も含め、いろんな人がいますよね。あの子はああだし、この子はこう。そして、自分はこんな奴と考えることにしました、
ダウン症ならみんなで(私たちの社会に適応させるために)助けてあげたいと、考えています。
これからも何かあったらコメント下さい。
よろしくお願いします。

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