こんな気持ちでいられたら

還暦病理医の日々と生き方考え方

お気に入りの教科書

2015年11月25日 | 読書、映画、音楽、美術

私のお気に入りの教科書に『図説 組織学 第五版』というのがある。

どうすれば学生が組織学に興味を持ってもらえるかというコンセプトで書かれており、そのことが読者に飽きさせない内容にさせている。
というのも、初版の序の書き出しが、『組織学は過去多くの諸君にとって退屈な学問であった。』ということからもわかる。

 

基礎医学の中では組織学が好きだったので、よく勉強したがなかなかいい教科書が無かった。組織学の延長かどうかわからないが、結局、病理医になった。駆け出しの頃、この本が座右にあって勉強できていたら今より数段パワーアップできていたのではないかと思う。遅きに失した感はあるものの、15年前にこの本に出会えてよかった。

この教科書の中で私が好きな文章がある。

9.皮膚の説明のところで、皮膚の機能として、保護、感覚、体温調節、代謝機能が書かれているのだが、この版から”性的な魅力”というのが加わった。この説明の、

「この機能は全く過小評価されているが、皮膚、毛、爪のテクスチャーと見かけを改善すると主張される産物と欠陥を隠したり小さくする巨大な産業を生み出した。」というものだ。 なんだか、とても人間くさくていい感じの文章だ。1冊の基礎医学の教科書が、美容医学とか化粧品業界につながっていることがよく伝わってくる。 ほかにも、少しだけこういう感じが伝わってくるところがあり、全体的に読みやすい。

 日本人が書いたいい教科書もあるが

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機能を中心とした図説組織学
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